アベイラビリティ(あべいらびりてぃ)情報システム用語事典

availability / 可用性 / 可動率 / 稼働率

» 2009年09月21日 00時00分 公開

 システムやサービスが使いたいときに、すぐに使えるという性質のこと。実際に使ったかどうかではなく、使える状態にあるかどうかに焦点を当てた概念である。

 ITの世界で「アベイラビリティの高いシステム」という場合、通例は冗長化によって一部に故障や不具合があっても全体としてはシステムダウンしない、あるいはシステムに障害が発生した場合に待機系に切り替えて機能を維持するといった対策を施したものを指す。情報セキュリティの分野では、「権限のある利用者が必要なときに許された条件の下で情報にアクセスできること」をいう。これらの分野では、特に「可用性」という訳語が充てられている。

 英語のavailabilityは、「(すぐに)利用できること」「入手可能」「応対可能」の意味で、商品であれば「在庫があること」「販売中であること(生産中止になっていない)」、ホテルや旅客機などであれば「部屋や座席に空きがあること」を指す。

 信頼性の分野では広義の信頼度を測る尺度で、“故障が発生しにくい”“故障があっても復旧しやすい”などの性質を総合的に評価する指標となる。JIS Z 8115:2000では「要求された外部資源が用意されたと仮定したとき、アイテムが所定の条件の下で、所定の時点、または期間中、要求機能を実行できる状態にある能力」と定義されている。

 このアベイラビリティは修理系(保全によって故障を修復できる系)を対象として、それを利用できる時間(稼働中)とできない時間(故障中、修理中、点検中など)の相対比として導き出す。単純化するならば「ある時点で要求機能を維持している確率」、ないし「与えられた時間内で要求機能を維持している割合」といえる。

 代表的な公式としては、平均動作可能時間(MUT)と平均動作不能時間(MDT)を用いた以下のものが知られる。これは運用アベイラビリティと呼ばれる。

動作可能時間=対象アイテムが正常に動作し、要求機能を果たすことができる状態にある時間
動作不能時間=対象アイテムが故障、保全(修理、点検など)、交換品の待ち、管理などのために要求機能を果たすことのできない時間


 MTBFMTTRが分かっている場合には、次式で導き出すこともできる(対象が複雑なシステムである場合はマルコフモデルによる計算が必要になる)。これはシステム固有の値と考えられることから、固有アベイラビリティという。

 信頼性尺度としてのアベイラビリティは、本質的には“ある時間(期間、瞬間)における利用可能な確率”なので、その時間尺度の内容・組み合わせによって「瞬間アベイラビリティ」「平均アベイラビリティ」「漸近アベイラビリティ」「定常アベイラビリティ」「漸近平均アベラビリティ」など、数多くのものがある。

 アベイラビリティは信頼性工学/信頼性評価の分野では「対象の壊れにくさ」と「対象が壊れたときの回復のしやすさ」を総合した“ディペンダビリティ”の尺度であるが、IT分野においてはフォールトトレランス思想に基づく「(部分的に)壊れても止まらないシステム」という意味合いが強くなる。この点で若干のニュアンスの違いがあるといえよう。

参考文献

▼『おはなし信頼性〈改訂版〉』 斉藤善三郎=著/日本規格協会/2004年1月

▼『品質保証のための信頼性入門』 真壁肇、鈴木和幸、益田昭彦=著/日科技連出版社/2002年3月

▼『情報システム工学』 佐々木正文=著/共立出版/1990年2月

▼『信頼性・保全性の基礎数理』 三根久、河合一=著/日科技連出版社/1984年2月


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ