クラウドコンピューティング(くらうどこんぴゅーてぃんぐ)情報システム用語事典

cloud computing

» 2006年10月15日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 インターネット上にグローバルに拡散したコンピューティングリソースを使って、ユーザーに情報サービスやアプリケーションサービスを提供するという、コンピュータ構成・利用に関するコンセプトのこと。

 インターネットやTCP/IPネットワークは、しばしばクラウド(cloud=雲)と表現される。ここから、インターネット上の“どこか”にあるハードウェアリソース、ソフトウェアリソース、データリソースをユーザーがその所在や内部構造を意識することなく利用できる環境、ないしその利用スタイルを「クラウドコンピューティング」という。

 従来のコンピュータ・ネットワークにおいて、ネットワークは単にデータやメッセージが通過する経路であり、エンドノードである個々のコンピュータこそが計算や情報処理を行う主体であった。これに対してクラウドコンピューティングでは複数のコンピュータがグリッド仮想化の技術で抽象化され、ネットワークで接続されたコンピュータ群が巨大な1つのコンピュータになるという、パラダイムシフトの意味が込められている。

 適切な方法で“雲”=インターネットに接続さえすれば、ユーザーは即座に各種のサービスが利用できるという点では、SaaSASPに近い。ただし、ASPの時代は特定のサーバファーム(データセンター)で処理を行ったが、クラウドではデータ処理が分散化される場合が想定され、このあたりが“クラウド”というメタファーが使われる理由と考えられる。

 この言葉を最初に使ったのは、米国グーグルのCEO エリック・シュミット(Eric Schmidt)といわれている。シュミットは、英エコノミスト誌の特別号「The World In 2007」(2006年11月発行)に「Don’t bet against the Internet.」という一文を寄せ、「われわれはクラウドコンピューティングの時代の中にいる。(中略)このネットワークは真にコンピュータとなるだろう」と述べている。

 クラウドコンピューティングは言葉が知られるとすぐにIT業界全体を巻き込む一大潮流となり、ITベンダ各社からさまざまな提案がなされている。クライド技術を社内システムに応用する考え方も登場しており、これはプライベートクラウドと呼ばれる。これに対して、当初のクラウドコンピューティングをパブリッククラウドということがある。

参考文献

▼『クラウド化する世界――ビジネスモデル構築の大転換』 ニコラス・G・カー=著/村上彩=訳/翔泳社/2008年10月(『The Big Switch: Rewiring the World, From Edison to Google』の邦訳)

▼『クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった』 野村総合研究所 城田真琴=著/東洋経済新報社/2009年2月

▼『クラウドコンピューティング――技術動向と企業戦略』 森洋一=著/オ−ム社/2009年5月



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