コンピテンシー(こんぴてんしー)情報システム用語事典

competency / 高業績者の行動特性

» 2007年10月31日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 ある職務や状況において、期待される業績を安定的・継続的に達成している人材に、一貫して見られる行動・態度・思考・判断・選択などにおける傾向や特性のこと。測定や定義が困難な気質や性格ではなく、インタビューや観察などで確認できる能力であり、その職務において優秀な成績を挙げる要因となる特性を列挙したものである。通常は、その職務で必要となる知識や技能は除外して考える。

 もともとは、ハーバード大学の心理学者であるデイビッド・C・マクレランド(David C. McClelland)教授を中心にしたグループが、1970年代初めに米国務省から「外交官(外務情報職員)の採用時のテスト成績と、配属後の実業績に相関が見られない」ことに対する調査依頼を受け、行った研究に由来する。

 マクレランドは、明白に高業績を挙げている人(ハイパフォーマー)を抜き出し、後にBEI(Behavioral Event Interview)と呼ばれる質問手法を用いて、高業績者の考えや行動を明らかにしたうえで、その事実から高業績につながる要因を抽出、数値化できる尺度を作り上げた。マクレランドはハイパフォーマーの特性をコンピテンシーと呼び、外交官においては「異文化に対する感受性がすぐれ、環境対応力が高い」「どんな相手に対しても人間性を尊重する」「自ら人的ネットワークを構築するのがうまい」だと発表した。

 その後、マクレランドの後継者の1人であるリチャード・ボヤティズ(Richard E. Boyatzis)が、約2000名の管理者(12組織/41管理職職務)の仕事の成果と能力の関係を調査し、1982年の著書『The Competent Manager : A Model for Effective Performance』で発表した。ここではコンピテンシーは「ある職務において、効果的で優秀な成果を発揮することに密接な関係する特徴」とされ、同時に6クラスター、21のコンピテンシー項目からなるモデルが紹介された。

 1990年代になると米国で職務記述書に換わる人事ツールとしてコンピテンシーが大流行した。企業や組織ごとにコンピテンシーモデルを作り、それに沿って採用・育成・配置・選抜・育成・評価・報酬を行う制度が広く展開された。しかし、コンピテンシーは、それぞれの要素に分解して個別に指標化・点数化するような使い方は無意味で、選抜や評価に使うべきではないと指摘する向きもある。

 コンピテンシーモデルは組織の人事制度に適用するものとは別に、職能団体などが必要な人材像を明確にするために作られることがある。

参考文献

▼『アメリカを救った人事革命コンピテンシー』 太田隆次=著/経営書院/1999年7月

▼『コンピテンシー戦略の導入と実践――会社を強くする人材マネジメント』 遠藤仁=著/かんき出版/2000年9月

▼『キー・コンピテンシー――国際標準の学力をめざして』 ドミニク・S・ライチェン、ローラ・H・サルガニク=編著/立田慶裕=監訳/今西幸蔵、岩崎久美子、猿田祐嗣、名取一好、野村和、平沢安政=訳/明石書店/2006年5月(『Key Competencies for a Successful Life and a Well-Functioning Society』の邦訳)


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