ERモデル(いーあーるもでる)情報マネジメント用語辞典

entity-relationship model / 実体関連モデル

» 2005年07月28日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 データモデリング手法の1つで、モデル化対象(実世界)を“実体”とその“関連”からなるものとして定義、構造化して、静的な概念データモデルを記述する。一般にデータベース設計に用いられる。

 ERモデルでは、一般に次の3つの構成要素によって世界(管理対象)を表現する。

■実体(エンティティ:entity)

管理の対象として“存在する”と定義したもの(例:「顧客」「商品」などの物理的な存在、「会社」「支店」などの法的、論理的存在、「契約」「納品」などの事象など)。

■属性(アトリビュート:attribute)

実体の特性として定義したもの。実体が持つデータ項目。(例:従業員エンティティの「従業員氏名」「従業員住所」「従業員電話番号」など。

■関連(リレーションシップ:relationship)

実体と実体の関係を示したもの。実体に対する操作。(例:部門エンティティに従業員エンティティが「配属」されているなど)。

 モデルと同時に表記法としてERダイアグラム(ERD)が提案されたが、これがデータベース設計やデータ中心アプローチ(DOA)におけるシステム開発において実用的であったため、現在では、主にデーターベース設計の標準技法として広く普及している。

 ERモデルは1975年に開催された第1回VLDB(Very Large Data Base)カンファレンスにおいて、マサチューセッツ工科大学(MIT)のピーター・チェン(Peter P. Chen)が発表したものである。チェンは1976年の論文「The entity-relationship model: towards a unifiedview of data」で、「世の中に存在するあらゆるものは、具象的なものであれ抽象的なものであれ、実体と関連という2つの概念で表現可能である」と述べている。

 この考え方はシステム開発方法論としてはデータ中心アプローチ(DOA)に、開発手段としてはCASEツールに、データベース構造の考え方としてはANSI/X3/SPARCが提案した3層スキーマ構造に影響を与えている。また、1960年代にプログラミング技法として登場したオブジェクト指向と合流して、オブジェクト指向モデリングへ発展している。さらに、セマンティック・データベースの基本モデルとしても用いられている。

 ただしモデリング(分析)手法としてのERモデルは、何を実体とし何を属性とするかといった点で明確な判断基準を持たず、分析者(設計者)の経験とセンスに依存する(ERアプローチでも工学的なモデリングは可能だとする意見もある)。そのためか、業務分析に使われるよりもデータベース構造の表記法(ERD)が主に普及している。

参考文献

▼『データベース:理論と手法――ユーザーに役立つデータベースをどう構築するか』 ジェームズ・マーチン=著/成田光彰=訳/日経マグロウヒル社/1986年3月(『An End-User's Guide to Data Base』の邦訳)

▼『情報資源管理の技法――ERモデルによるデータベース設計』 酒井博敬=著/オーム社/1987年7月

▼『第一線技術者のための実践システム分析――インタビューの仕方からエンティティ・リレーション法まで』 マーチン・E・モデル=著/荒川淳三、岡野寿夫、井上義祐=訳/マグロウヒル出版/1990年4月(『A Professional's Guide to Systems Analysis』の邦訳)

▼『ERモデルによるデータベース設計技法――モデルベース開発のための必修技術』 林衛=著/ソフト・リサーチ・センター/2005年3月


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