エンドユーザー・コンピューティング(えんどゆーざー・こんぴゅーてぃんぐ)情報マネジメント用語辞典

end user computing / EUC

» 2004年04月03日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 情報システム部などのシステム管理者ではなく、企業経営者や業務部門などのシステムサービス利用者が直接的・主体的にコンピュータを操作したり、システムの構築に関与し、経営や業務に役立てること。

 コンピュータを“目的を達成するための手段”として利用するに当たり、その目的を有するユーザー自身が、直接にコンピュータを操作するという利用形態は、古くから“理想像”として想定されてきた。

 初期のコンピュータは非常に高価で、ユーザー(プログラマ)は遠く離れたコンピュータ・センターまでパンチカードに記録したプログラムを持ち込んで処理を依頼し、何日も待って結果を受け取っていた。こうした状況に対して、J・C・R・リックライダー(Joseph Carl Robnett Licklider)は、「Man-Computer Symbiosis」という論文で対話型コンピューティングという概念を示し、ユーザーとコンピュータの相互作用の重要性を説いた。

 リックライダーの尽力もあり、1960年代に入ってタイムシェアリング・システムが実用化されると、コンピュータの同時利用が可能となリ、ユーザーがインタラクティブにコンピュータにアクセスできるようになる。1964年には初心者向け対話型言語として「BASIC」が登場している。

 この時代のコンピュータユーザーはプログラマやコンピュータ研究者だったが、コンピュータのビジネス利用が活発化し始めた1970年代後半から1980年代にかけては、ミニコンやオフコンの登場、DSS(意思決定支援システム)の提唱などもあり、経営者などの高度意思決定者がビジネス分析のためにコンピュータを直接的かつインタラクティブ、アドホックに利用することが主張された。さらに1980年代に登場したパソコン(PC)においては、初めからユーザーの利用が前提とされていた。ただし、PC DOS/MS-DOSを搭載したIBM PC互換機の系統では、CUIが前提であり、誰もが利用できるというところまでは行かなかった。

 1990年代に入るとPCのビジネス利用が広がったが、企業でのPC導入は情報システム部とは独立して、業務部門が自らの予算と判断で行う傾向があった。こうした業務部門(エンドユーザー部門)主導のコンピュータ導入・利用についてもエンドユーザー・コンピューティングという言葉が使われた。

 国家資格「情報処理技術者」の1つとして1994年に開始された「システムアドミニストレータ」は、エンドユーザー・コンピューティングを推進する人材として位置付けられているが、その役割はエンドユーザー部門にあってシステム運用責任者であると同時に、情報システム部門やシステムインテグレータなどの専門技術者との橋渡し役とされている。ここでは、システムへの要求や仕様に関して、エンドユーザー側が積極的に関与することがが前提となっている。

 業務そのものを一番よく知っている業務部門が主導するエンドユーザー・コンピューティングは、迅速な意思決定に基づいて業務にマッチしたIT化を推進する上で優れたやり方だが、業務部門自体に十分な情報リテラシーが備わっていることが不可欠である。また、「特定部門が突出する」「基幹システムと整合性のないシステムが作られる」「全社レベルでの最適化が図られない」などの弊害が出る可能性があるため、ITガバナンスを失わないよう留意する必要がある。

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