インフォミディアリ(いんふぉみでぃあり)情報マネジメント用語辞典

infomediary / 情報仲介者 / 情報仲介業

» 2010年01月01日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 消費者や企業(商品やサービスなど)の情報を収集・整理・提供することにより、情報の発信者と受信者を仲介し、適切なマッチングを支援する事業者のこと。このビジネスモデルを指す場合もある。

 もともとは消費者の個人情報を取得して、それに基づいて消費者個々人に有益な商品情報などを選別的に提供するエージェントを意味する言葉として提唱されたが、やがて販売側の商品情報などを大量に収集・再構成して提供するタイプのサービスも含むようになった。

 典型的なものとしてはインターネットショッピングモールやe-マーケットプレイス、価格比較サイト、商品くちコミサイト、自動車・旅行・不動産・証券・求人/求職・飲食店などの仲介サイト、共同購入サイト、オークション/リバースオークションサイトが挙げられる。直接的に購買プロセスに結び付かないものの、商品情報に出会う機会を提供するという意味では検索エンジンやポータルサイト(業界別ポータルを含む)から、ネット広告配信、果てはSNSなどのコミュニティサイトまでをインフォミディアリに含める場合もある。また、顧客情報を売り手に提供するという意味では、アンケートサイトなどもインフォミディアリといえる。

 インフォミディアリという言葉は、インフォメーション(情報)とインターミディアリ(仲介者)から作られた合成語で、戦略コンサルティング・ファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーのジョン・ヘーゲル三世(John Hagel 3rd)らによって提示された。文献的には1997年のハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表された論文「The Coming Battle for Customer Information」が初出とされる。

 この論文では、インフォミリディアリは膨大な既存顧客リストを持つクレジットカード会社やソフトウェア会社、インターネットサービス事業者などがメンバー向けに情報フィルタリングや購買エージェントのサービスを提供する存在と説明されている。商品の買い手である消費者は、インフォミディアリに個人情報を預けることによって、自分の好みや要求に合った商品の推奨を受けることができ、同時に販売企業との直接の接触がなくなるのでプライバシーが保護される。売り手となる企業にとっては、インフォミディアリから的確な見込み客の情報が提供され、マーケティングコストが低減する。インフォミディアリ事業者はこの顧客情報提供の対価として、売り手企業から支払いを受け、収益を上げる。

 ヘーゲルらは買い手と売り手の双方に潜在的なニーズがある中で、消費者行動の収集がスマートカードやcookieなどの登場によって技術的に可能となることから、インフォミディアリの出現を予測した。しかし、2000年にインターネット広告サービス会社である米国ダブルクリック(現グーグル)がcookie情報を現実社会の実名や住所と結合する計画を発表すると、プライバシー侵害の面から激しい反発を招き、世界的に個人情報保護の必要性を認識させるきっかけの1つとなった。

 これらの批判やネットバブルの崩壊もあり、インフォミディアリに関する議論は以後あまり行われなくなるが、その後にインターネット検索エンジンやオンラインショッピングモールのビジネスモデルの離陸が始まり、やがて情報提供者と閲覧者、売り手と買い手を結び付ける存在としてインターネットの世界で大きな力を持つようになった。

 これら商品情報収集型インフォミディアリは、商品やサービス、店舗などの仕様・内容・価格などの情報を大量に収集し、買い手に提供する(Googleなどの検索エンジンの場合は、“情報に関する情報”を収集しているといえる)。このタイプのインフォミディアリは情報量が十分に大きくなると利用者に「ここで検索して出てこなければ、世界中どこにもない」「このサイトでの最低価格が国内最安値」と認識されるようになり、市場支配的な立場を手に入れることになる。このポジションに最も近いのは米国グーグルだが、強すぎるネット支配力が批判的に語られることもある。

 商品情報収集型のインフォミディアリは、売り手からの情報だけではなく、商品に対する顧客の感想や評価を書き込む機能を有するサイトも多い。買い手ユーザーに対しては、商品選択時の情報収集の手間を大幅に削減するサービスを提供し、売り手企業にとっては各種のマーケティング情報をフィードバックする存在として、発展している。

 顧客情報収集型については、NTTドコモが2008年にライフスタイルや住所、現所在地に合わせて役立ち情報を配信する「iコンシェル」をスタート。また、オンライン広告の世界では、リードジェネレーションと呼ばれる情報仲介サービスが登場し、注目を集めている。

参考文献

▼「The Coming Battle for Customer Information」 John Hagel III、Jeffrey F. Rayport/Harvard Business Review Jan-Feb, 1997

▼「The New Infomediaries」 John Hagel III、Jeffrey F. Rayport/The McKinsey Quarterly Num 4, 1997

▼『ネットの真価――インフォミディアリが市場を制する』 ジョン・ヘーゲル3世、マーク・シンガー=著/小西龍治=監訳/東洋経済新報社/2001年1月(『Net Worth』の邦訳)

▼『超成長企業を生むインフォミディアリ戦略――デジタル・サプライチェーンのつくり方』 加登吉邦、江見淳=著/東洋経済新報社/1998年12月


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