IRM(あいあーるえむ)情報マネジメント用語辞典

information resources management / 情報資源管理

» 2011年09月09日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業で使われている情報を経営資源という面から評価・整理して、それらが有効活用されるように企業組織と情報処理システム、およびデータを構成・統制すること。

 一般に「ヒト」「モノ」「カネ」を企業の経営資源という。これらを適切に管理するためには情報が不可欠である。従って、付随的に情報も経営資源ということになる。情報は必要なときに、必要とする人のところになければ、価値がない。そこで人々の情報要求を明確に定義し、的確に情報を届ける仕組み=情報システムを設計することが求められる。

 また、情報はデータを素材にして作られる。データは人的組織やコンピュータによって収集され、紙やファイル、データベースなどに保管される。データを収集・加工して情報を作り出す作業(情報処理)は、人的思考、組織的コミュニケーション、業務手順、コンピュータ・プログラムなどを通じて実行される。情報を適切に生成・保存・伝達・利用するには、「人的組織」「情報システム」「情報」「データ」といった広義の情報資源を全体計画に基づいて適切に配置し、管理することが必要である。このような管理活動を情報資源管理という。

 この概念が登場したのは1970年代の米国で、行政が民間に課する文書作成負担の軽減を検討する連邦文書事務委員会において、フォレスト・W・ホートン(Forest W. Horton Jr.)が政府の情報収集ポリシーを定める方法として述べたものだった。情報の氾濫は、コンピュータおよびOA機器が無管理のままに利用される一般企業でも懸念され、リチャード・L・ノーラン(Richard L. Nolan)、ジョン・T・ディーボルド(John T. Diebold)、ジェームズ・マーチン(James Martin)、ウィリアム・シノット(William. R. Synnott)らよによって、情報を経営資源として管理するべきという主張がなされた。

 情報資源管理論が戦わされた時期は、リレーショナルデータベースシステムの普及期でもあった。こうした中、データモデル開発を先行し、その構造に合せてソフトウェアを作成するデータ中心アプローチ型の開発方法論が登場した。これは、企業が扱うデータ(データ項目)は業種を変更でもしない限り、業務手順やアプリケーションプログラムほどには変化しないという、データ項目の変わりにくさに着目し、基本となる経営資源として共有データベースを構築し、変わりやすいソフトウェア開発をこれに従属させることで、データ項目の重複や肥大化を防止しようというものである。

 ただし、特定の業務に依存しないようなデータ構造を構築するのは容易ではない。すべての業務でどのようなデータ項目が使われているのかを洗い出し、整合的な形にデータモデリングすることが求められる。また情報資源は共有・再利用するものでなので、継続的に保守・管理する必要もある。メタデータを管理するシステムとしては、DD/DリポジトリなどのIRDS(情報資源辞書システム)がある。

 社内で使われているデータがきちんと整理・整頓されていれば、商品コードの体系が変わったというような場合でも、それを参照しているアプリケーションやファイルがどれかをすぐに把握することができ、迅速なシステム改修が可能となる。

参考文献

▼『管理職のための情報戦略――データ処理から情報資源管理へ』 ジェームズ・マーチン=著/成田光彰=訳/日経マグロウヒル社/1986年12月(『An Information Systems Manifesto』の邦訳)

▼『データ資源管理――企業内データの有効活用を目ざして』 ウイリアム・R・デュレル=著/IRM研究会=訳/味村重臣=監修/日経マグロウヒル社/1987年1月/(『Data Administration: A Practical Guide to Successful Data Management』)

▼『企業の情報武装戦略――情報に強い会社が生き残る』 ジョン・ディーボルド=著/千尾将=訳/産業能率大学出版部/1987年7月(『Managing Information: The Challenge and the Opportunity』の邦訳)

▼『情報資源管理概論』 山田進=著/オーム社/1987年8月

▼『情報資源管理――統合システム構築を目指して』 海老沢栄一、堀内正博、上田泰、一瀬益夫、佐藤修=著/日刊工業新聞社/1989年6月

▼『インフォトレンド――情報とビジネス戦略』 ドナルド・A・マーチャンド、フォレスト・W・ホートン=著/栗原史郎、近藤正幸=訳/オーム社/1989年8月(『Infotrends: Profiting from Your Information Resources』の邦訳)

▼『IRM――情報資源管理のエンジニアリング』 ミルト・ブライス、ティム・ブライス=著/松平和也=監訳/日経BP社/1990年8月(『IRM Revolution: Blueprint for the 21st Century』の邦訳)

▼『情報資源管理ハンドブック』 IRM研究会=編/小学館/1991年12月

▼『ビッグ6の戦略情報システム構築方法論――広範な経験と事例の一般化による体系的方法論』 戦略情報システム研究会=著/ダイヤモンド社/1992年5月


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