ISO 9000(あいえすおー 9000)情報マネジメント用語辞典

アイエスオー 9000 / アイソ 9000 / イソ 9000

» 2004年08月01日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 ISO(国際標準化機構)が定めた、組織における品質マネジメントシステムに関する一連の国際規格群。企業などが顧客の求める製品やサービスを安定的に供給する“仕組み(マネジメントシステム)”を確立し、その有効性を継続的に維持・改善するために要求される事項などを規定したもの。

 製品やサービスを外部から調達(特に大量購入・長期契約など)する購入者(顧客)は、供給者に契約で品質保証を求めることが多い。さらに製品/サービスそのものの品質のみならず、それを開発・生産・流通するための各工程や経営者の責任などを含めて、契約の形で品質保証を要求される場合も少なくない。

 こうした品質保証に関する要求事項の標準として規格化されたものが、ISO 9000シリーズである。この規格に基づいて、供給側企業が社内で品質管理システムを自己評価(あるいは自己適合宣言)したり、顧客が供給者を直接審査したり、信用できる第三者(審査登録機関)に依頼して客観的な評価を受け認証取得(審査登録)を行ったりする。

 これにより顧客は、供給者が求める品質マネジメントシステムを保持しているかどうかを見極め、信用・信頼できる供給先かどうかを効率的、効果的に判断できるようになる。

 ISO 9000が求めるマネジメントシステムを簡単にまとめれば、「明確な方針・責任・権限の下、業務プロセスをマニュアル化(手順化)して、それを仕組みとして継続的に実行、検証を行うこと」である。

 歴史的には、1959年に米国国防総省が制定した軍需調達規格MIL-Q-9858に由来するとされる。1968年にはNATO軍がこれを下敷きにしたAQAP-1規格を採用、1979年にこれらを参考にした英国国内規格BS5750が発行された。

 1960〜1970年代、欧米において軍需調達を中心に購入サイドからの品質保証のニーズが高まり、米国ANSI/ASQCZ1-15、フランスNFX-5-110、ドイツDIN 55-35、カナダCSA Z229など、品質管理に関する国内規格の制定が相次いだ。しかし、各国で品質システム規格が異なるのは国際通商活動を阻害することから、1979年にISO内に品質管理・品質保証の分野に関する技術委員会「TC 176(Technical Committee 176)」が設置され、国際規格化が進められた(第1回総会は1980年)。

 結果、1984年にISO 8402(用語規格)が、1987年にはBS5750をベースとしたISO 9000〜9004の5つの品質保証規格(ISO 9000シリーズ)が発行された(1994年に改正)。

 1987/1994年版のISO 9000は製品規格と組み合わせて、顧客と供給者の2者間取引で利用されることが想定されていた。しかし、この規格を利用した第三者審査が拡大し、その中で拡大解釈や不適切な使用といった混乱が生じるようになっていた。また、製造業(組み立て製造業)が前提になっている、経営者の関与が不明確などの問題点が指摘されてきた。

 こうした流れを受けて2000年に大改正が行われ、基本的な考え方が“品質保証”から“品質マネジメントシステム”へと変更された。構成の面でも、ISO 9001、9002、9003はISO 9001:2000に統合、環境マネジメントシステム監査との整合性の観点からISO 19011が発行され、ISO 9000ファミリーは4つのコア規格に整理された(9000番台の番号を持たない関連規格・文書を含めた、品質マネジメントシステムに関する一連の規格類のことを「ISO 9000ファミリー」と呼ぶ)。なお、2008年11月には要求事項の明確化とISO 14001との整合性の向上を目的とした改訂版ISO 9001:2008が発行されている。

ISO 9000ファミリー コア規格
ISO 9000:2000 品質マネジメントシステム−基本及び用語
ISO 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
ISO 9004:2000 品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善の指針
ISO 19011:2002 品質マネジメントシステムと環境マネジメントシステムの監査指針
ISO 9000ファミリー そのほかの主な規格
ISO 10005:1995 品質管理−品質計画書についての指針
ISO 10006:2003 品質マネジメントシステム−プロジェクトにおける品質マネジメントの指針
ISO 10007:2003 品質管理−構成管理の指針
ISO 10012:2003 測定マネジメントシステム−測定手順及び測定装置の要求事項
ISO/TR 10013:2001 品質マネジメントシステム文書の指針
ISO/TR 10014:1998 品質の経済を管理するための指針
ISO 10015:1999 品質マネジメント−教育訓練の指針
ISO/TR 10017:2003 ISO 9001:2000のための統計的手法に関する指針
※2004年4月現在

 ISO 9001は要求事項の規定で、顧客満足と品質マネジメントシステムの継続的な改善を目的に、最低限きちんと行うべきことを定めている。これは内部監査、第三者審査の際の審査基準としても使われる。一方、ISO 9004は品質マネジメントを行っていく際の指針で、すべての利害関係者の相互作用の中で品質マネジメントの“システム”をどのように効果的に機能させるかという位置付けのもので、組織内部の改善モデルとなる。ISO 9001とISO 9004は独立した規格だが、一対のもの(コンシステントペア)として利用されることが意図されている。

 なお、日本においては、JIS Q 9000ファミリーとして国内規格化が進められている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ