LBO(えるびーおー)情報マネジメント用語辞典

leveraged buy-out / レバレッジド・バイアウト

» 2005年03月16日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業買収手段の1つで、買収対象企業の資産あるいは将来キャッシュフローを担保にした負債(借入金・債券)を買収資金にして行う方法のこと。

 買収資金の一部または大部分を、自己資金ではなく負債を充当することで、少ない手持ち資金により大規模な買収を行うことができ、かつレバレッジ効果によってキャピタルゲインの大幅な増加を狙うことができる。

 一般的なスキームは、次のようになる。まず買収側(ファンドなど)が出資して受け皿会社を設立する。この受け皿会社が金融機関から融資を受けるか、社債(ジャンク債)を発行して買収資金を調達する。受け皿会社はこの資金で対象企業を買収し、その企業と合併して新会社を発足する(営業譲渡の場合もある)。新会社が受け皿会社から継承した負債は、買収対象企業から継承した事業の利益(キャッシュフロー)、もしくは資産売却の代金によって返済される。

 LBOは一般にいくつかのパートナー(機関投資家など)によって組成されたエクイティ・ファンドを主体とし、ジェネラルパートナー(専門投資ファーム)が主導して行われる。また、買収対象企業の経営陣が買収側に参加する場合をMBOと呼ぶ。

 LBOが発祥したのは1970年代の米国である。以前から「ブートストラップ」と呼ばれる買収手法(売掛金、棚卸資産、固定資産など会計上の資産を担保にした融資資金で買収を行う)が知られていた。LBOはこれを発展したものだといわれる。

 LBOの生みの親といわれるジェローム・コールバーグ(Jerome Kohlberg Jr.)氏は、1960年代後半からベア・スターンズでこうした手法――彼自身は「マーチャントバンク業務」と呼んでいた――をはじめ、次第に洗練させていった。そして1976年、今日LBOファーム最大手として知られるKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)を創設する。なお、こうした手法がLBOと呼ばれるようになるのは、1970年代末である。

 初期のLBOは買収資金に銀行融資を充て、コングロマリット企業のノンコア事業のカーブアウト(切り離し)や再編・解体、あるいは中小企業の事業継承を投資対象とするビジネスだった。

 それが1980年代になるとLBO自体が目的化され、米国に空前のM&Aブームが到来する。その背景にはジャンク債市場が登場・発展し、弁済順位が低い劣後債券での資金調達(メザニン・ファイナンス)が容易になったことが挙げられる。そのほか、企業の借入金依存にインセンティブを与える税制の存在、借入金の金利リスクを軽減する金融技術の発展などがあった。

 こうした資金を使い投資銀行やLBOファンドが案件を強引に仕立て、小が大を飲み込む敵対的買収や乗っ取り、短期の企業解体・切り売りによる投資回収、インサイダー取引が横行、大規模なマネーゲームが展開された。このブームは結局1990年にジャンク債取り扱い最大手投資銀行のドレクセル・バーナム・ランベールが破たんして幕を閉じたが、結果としてLBO=敵対的買収/乗っ取りという評判を残すことになる。

 しかし、LBOにも経営効率化の効果があると主張する向きもある。ハーバード大学のマイケル・C・ジェンセン(Michael C. Jensen)教授は、企業を「借金漬け」にすることにより、経営者に緊張と規律付けを与えることができるとした。すなわち、弁済順位・利益処分において負債は株式に優先し、一定(金利以上)のキャッシュフローがなければ企業は倒産してしまう。このため、株主議決権以上に経営改革を動機付ける有効な手段になるという。とりわけ投資の償却が終わり、豊かなキャッシュフローを生み出す成熟産業(PPMでいう“金のなる木”事業)において適した方法だと指摘している。

 逆にいうとLBOのターゲットとなりやすい企業は“成熟企業”であるといえる。具体的には「安定したキャッシュフローを生み出す能力がある」「ブランド力や技術力がある」「市場シェアあるいはニッチマーケットでプレゼンスがある」「法規制など、参入障壁に守られている」「現金や換金可能な資産などの事業価値向上のための投資に回すべき資産を有効に活用できず資産効率の低い(収益改善期待のある)」などの特徴がある。

参考文献

▼『LBOの実務』 J・テレンス・グリーブ=著/三井物産業務部=訳/日本経済新聞社/1988年7月(『How to Do a Leveraged Buyout - 3rd Edition』の邦訳)

▼『レバレッジド・バイアウト――KKRと企業価値創造』 G・P・ベーカー、G・D・スミス=著/岩村充=監訳/日本債券信用銀行金融技法研究会=訳/東洋経済新報社/2000年3月(『The New Financial Capitalists: Kohlberg Kravis Roberts and the Creation of Corporate Value』』の邦訳)


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