ライフサイクルコスト(らいふさいくるこすと)情報マネジメント用語辞典

LCC / life cycle cost / 生涯費用

» 2010年03月29日 00時00分 公開

 製品やサービス、施設、建造物などを製造あるいは利用するに当たって、そのライフサイクル(構想・企画・研究開発、設計、生産・構築、調達、運用・保全、廃却)のすべてにわたって発生する総コストのこと。

 生産者にとっては、対象アイテムを開発・生産して利用者に提供して廃棄されるまでに発生するコストの総額である。研究開発や企画、設計にかかわるコスト、部材調達費や製造コスト、流通・販売コスト、アフターサービスや交換部品の維持に関するコスト、生産終了や廃棄物として還流してきた製品の処分に伴うコストなどが含まれる。

 利用者にとっては、対象アイテムの取得から使用、廃却までに負担することになるコストの総額である。調達コスト(イニシャルコスト)は購入価格のほかに製品・事業者の選定に要したコスト、導入・設置・試運転に掛かったコストなどが含まれる。使用コスト(ランニングコスト)にはオペレーターの人件費や教育費、エネルギー費、消耗品費などからなる運用コスト、点検・保全要員の人件費や修理に要するコストなどを含む保全コストに加え、予備設備費や運用マニュアルなどの文書管理費、保守契約料などがある。また、故障や運転停止などによって被る被害コストを含める場合もある。廃却コストは対象アイテムの撤去や処分に要するコストで、改修・再利用する場合のコストなども含まれる。処分が売却(中古転売)の場合はマイナスコストとして加算することになる。

 米国ではライフサイクルコストの考え方に基づいて意思決定を行うライフサイクルコスティングが1960年代に軍需調達分野で始まり、1970年代になると水資源開発、道路計画、交通事故防止、都市計画、土地活用、空港計画、保健問題、教育問題などの公共分野で急速に普及した。同じころ、英国では機械設備などの保全や定期修理に関する経済性をアセスメントするテロテクノロジが登場、日本ではこれに影響を受けてTPMが発展した。

 近年では環境影響評価手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)の一部として、環境コストを考慮に入れたライフサイクルコスト分析への取り組みも盛んとなっている。

 ライフサイクルコスティングの方法に関しては、国際規格として『IEC 60300-3-3 Dependability management - Part 3-3: Application guide - Life cycle costing』が、国内規格としては『JIS C 5750-3-3:2008- ライフサイクル コスティング』が発行されている。

参考文献

▼『ライフサイクルコスティング──JIS C 5750-3-3導入と適用事例』 夏目武=編著/日本信頼性学会LCC研究会=著/日科技連出版社/2009年7月

▼『ライフサイクル・コスティング』 江頭幸代=著/税務経理協会/2008年3月

▼『ライフサイクル・コスティング──その特質と展開』 岡野憲治=著/同文舘出版/2003年8月


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