OLAP(おーえるえいぴー)情報システム用語事典

online analytical processing / オーラップ / オンライン分析処理 / 多次元分析処理

» 2009年04月11日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 膨大なデータを分析して何らかの問題点や因果関係を発見しようというとき、エンドユーザーでも対話的に試行錯誤をしながらデータベースを直接的に操作できるよう、多次元データベース構成とした分析型情報システムのこと。

 SQLなどのデータベース問い合わせ言語の知識を持たないユーザーが、コンピュータに蓄積されているデータを使って、自身のニーズに合わせた自由な分析を行うには、ユーザーにも分かりやすく、快適に操作できる環境が必要である。そのためにデータを多次元構造の形で用意し、大容量のデータでもスムーズにハンドリングできるよう、各種の仕掛けを凝らしたシステムがOLAPである。専用の多次元データベースを持つMOLAP(Multi-dimensional OLAP)と、リレーショナル・データベースで擬似的に多次元データベースを表現するROLAP(Relational OLAP)に大別される。

 OLAPによる多次元分析は、例えばある会社の販売実績であるならば、「地域別」「製品別」「月別」などの軸を設定し、“地域ごとの製品販売実績”“製品ごとの地域別販売実績”というように軸を入れ替えて比較する(ダイス)、「地域別」「製品別」を固定して「月別」の推移を比較する(スライス)、ある地域におけるある商品の販売を月別ではなく、さらに細かな日別のデータを表示する(ドリルダウン)などの操作を繰り返すことで行われる。

 多次元分析は、統計パッケージやExcelのピボットテーブルなどで可能だが、商用のOLAP製品を利用することで販売管理や在庫管理などのソースとなるデータベースを逐次参照しながら設定した分析手法を再利用できるので、ある程度の分析・リポーティングの自動化が行える。また、分析作業量が多い場合はソース・データベースへの負荷を低減するためにOLAP用のデータウェアハウス/データマートを立ち上げることが推奨される。

 OLAPの概念は、1993年にIBMサンノゼ研究所のエドガー・F・コッド(Edgar Frank Codd)博士が「Providing OLAP - On-Line Analytical Processing - to User Analysts: An IT Mandate」(共著)という論文で示した「12のルール」に基づいている(その後の追加により、最新版は18のルールになっている)。

■「コッド博士のOLAPに関する12のルール」
1. 多次元的概念ビュー
2. 透過性
3. アクセシビリティ
4. 一貫したレポーティングの性能
5. クライアント/サーバ・アーキテクチャ
6. 次元の一般性
7. 動的スパース行列処理
8. マルチユーザーのサポート
9. 制約のない次元間の演算処理
10. 直感的データ操作
11. 柔軟性のあるレポーティング
12. 制限のない次元や集約レベル
(E.F.Codd, 1993)

 OLAP以前に存在したデータ分析システムのコンセプトである「意思決定支援システム(DSS)」は月に1回程度、決まった形でレポートが作られるといったような静的な情報システムだったが、OLAPは分析を必要とするユーザー自身が試行錯誤しながら直接にデータを操作する、という点が異なる。

参考文献

▼「データ・ウェアハウス」 石井義興=編・著/日本経営科学研究所/1995年(「Providing OLAP - Online Analytical Processing - to User-Analysts : An IT Mandate」の邦訳である「ユーザ分析者に対するOLAPの提供IT指令」〈北川博之=訳〉を収録)


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