ペルソナ/シナリオ法(ぺるそな/しなりおほう)情報システム用語事典

persona-based scenario methodology / ペルソナ法

» 2008年09月02日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 インタラクションデザインで使われるデザインの要件定義手法の1つ。ペルソナを登場人物とする物語を作ることで理想的なインタラクションやシステムの振る舞い、機能を明確化し、そこからデザインの要件を確定する。

 インタラクションとは、人間と人間、人間とシステムの対話的やりとりである。そのため、インタラクティブシステムには状況に応じて自身の状態や振る舞いを変化させることが求められる。一方のユーザーもシステムのメッセージを見て反応を変えたり、中長期的には習熟や学習によって能力などが変動したりする。こうした将来にわたる時間的変化を描写するのに有効な手段として“物語”がある。1990年代からHCI分野で使われていたシナリオ手法にペルソナ概念を組み合わせたものがペルソナ/シナリオ法だ。

 ペルソナの概念を導入することで、シナリオを単なるユーザーの手順や反応の羅列ではなく、ユーザーが本当に求めているゴールとモチベーションを中心に据え、それを可能とするシステムの適切な振る舞いとして記述できるようになる。ペルソナの視点で記述されたシナリオはデザイナーや開発者が感情移入しやすく、実際のユーザーが何を目的に、状況(コンテキスト)においてどう考え、何を感じながら行動するかを踏まえたデザインを行う基礎となる。

 ペルソナとシナリオを使った要件確定は、ペルソナ概念の生みの親であるアラン・クーパー(Alan Cooper)が設立したコンサルティング会社 Cooperのインタラクションデザイン方法論「ゴールダイレクテッドデザイン」の一部である。同社のロバート・レイマン(Robert M. Reimann)、キム・グッドイン(Kim Goodwin)、デビッド・クローニン(David Cronin)、ウェイン・グリーンウッド(Wayne Greenwood)、レイン・ハリー(Lane Halley)が開発したペルソナベースシナリオ法は以下のとおり。

  1. 問題とビジョンの記述を作る
  2. ブレーンストーミングを行う
  3. ペルソナの期待を突き止める
  4. コンテキストシナリオを作成する
  5. 要件を突き止める

 この中の「コンテキストシナリオ」は理想的な利用パターンをストーリー化したもので、一般に“ペルソナ/シナリオ法のシナリオ”といえばこれである。1日(それ以外でもよい)の間に主役ペルソナや脇役ペルソナが製品やサービス、ほかのペルソナとどのような状況で接触し、どのような操作を行い(あるいは中断され)、それを使用する最終ゴールは何かなどを、時間を追って描写する。コンテキストシナリオは要求定義のためのツールなので、実現手段については書いてはならない。テキストのみで構成する。

 ゴールダイレクテッドデザインではデザイン段階でもシナリオを使用する。第2の「キーパスシナリオ」はユーザーインタラクションを反復的に記述し、デザインを順次詳細化・具体化していくツール。第3の「チェックシナリオ」はデザインソリューションをテストするための作られる質問リストである。

 クーパーらはこの手法をコンピュータ・ソフトウェアやデジタル機器のユーザーインターフェイスをデザインするために開発したが、近年では商品コンセプト作りやマーケティングなどにも取り入れられてきている。

参考文献

▼『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』 アラン・クーパー=著/山形浩生=訳/翔泳社/2000年2月(『The Inmates are Running the Asylum』の邦訳)

▼『ユーザーインターフェースデザイン――Windows95時代のソフトウェアデザインを考える』 アラン・クーパー=著/テクニカルコア=訳/翔泳社/1996年5月(『About Face: The Essentials of User Interface Design』の邦訳)

▼『About face 3――インタラクションデザインの極意』 アラン・クーパー、ロバート・レイマン、デビッド・クローニン=著/長尾高弘=訳/アスキー・メディアワークス/2008年7月(『About Face 3: The Essentials of Interaction Design』の邦訳)


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