プロセス中心アプローチ(ぷろせすちゅうしんあぷろーち)情報システム用語事典

POA / process oriented approach

» 2011年09月09日 00時00分 公開

 業務手順やデータの流れに注目して、機能要件を定めていくシステム設計の考え方をいう。一般に「データ中心アプローチ」(注1)の対語として用いられる。

 企業の業務は、個別の作業を順次処理していく流れとして理解できる。この流れをコンピュータの“入力−処理−出力”に読み替えてシステムを考えていく方法がプロセス中心アプローチである。例えば「部門Aが伝票Bを起票し、部長Cが決済する」という業務プロセスがあれば、「機能AがデータBが生成し、機能Cが更新する」というモデルに変換するといった具合である(実際には必ずしも物理モデルをそのまま論理モデルに置き換えるわけではない)。モデリングにはフローチャート(注2)やDFD(data flow diagram)(注3)、構造化チャートなどが使われる。

 業務内容を把握するのに業務フローをトレースするというのはごく自然な考え方である。また、手続き型プログラミングとの相性もよい。分かりやすく、手っ取り早くプログラミング作業に入れるので、特定業務をシステム化する方法としては安価で優れているいえよう。しかし、POAではシステム同士の相互連携を考慮しないため、追加して複数のシステムを作り続けるとサイロ化現象が発生する。

 また、複数の業務システムを別々に構築していくと「営業管理システムの顧客データと会計システムの取引先データはほぼ同じ内容」「生産システムと販売システムで商品コードが異なる」というようにデータの重複や不整合が発生しやすい。当然その分、管理の手間は増大する。

 さらにプロセス中心アプローチは業務に基礎を置くが、企業の業務プロセスは経営方針や市場状況の変化などによって比較的頻繁に変更される。業務の変更があると対応するプログラムを変更することになるが、それだけではなくデータファイルの変更も必要となる。作り方によっては、ほかのデータにも影響を及ぼす場合もあり、小さな業務変更でも大規模なシステム改修が必要となることがある。

 プロセス中心アプローチは構築対象が比較的単純な定型業務の機械化だった1960〜1970年代には主流の手法だったが、1980年代以降になってシステムの大規模化・複雑化が進むと問題点を露呈した。これらを乗り越える方法として、データ中心アプローチやオブジェクト指向、あるいはERPなどのパッケージ利用が提唱されるようになった。

参考文献

▼『利用部門のための情報システム設計論』 木暮仁=編/日科技連出版社/1997年3月


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