品質管理(ひんしつかんり)情報システム用語事典

QC / quality control / クオリティコントロール

» 2010年03月11日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 利用者(顧客)の品質要求事項に満たす製品・サービスを経済合理的に製造あるいは購入するために用いられる諸手段の体系、あるいはそれらの手段を用いて行われる品質統制活動のこと。

 製品やサービスの品質(顧客の要求を満たすこと)が基準に達しているかを確認する作業を品質保証というが、品質管理とは設定された品質基準を経済的・効率的に満たし、品質保証を実現するための手段と位置付けることができる。

 製品やサービスが顧客の要求を満たしているかどうかを製品品質(適合品質)、それらの提供が経済的に行われているかどうかを工程品質といい、品質管理ではその両者がバランスすることを目指す。

 一般に品質管理として知られ得る技法は統計的品質管理として誕生し、発展した一連の手段をいう。20世紀の初頭、工業製品の良不良のコントロールは工員の勘と経験に依存していた。これに科学的(統計的)な角度からアプローチしたのが米国・ベル研究所のウォルター・A・シューハート(Walter A. Shewhart)、ハロルド・F・ロッジ(Harold F. Dodge)、ヘンリー・G・ローミング(Harry G. Roming)である。シューハートは管理図を使ったばらつきのコントロールを、ロッジとローミングは抜き取り検査表を用いた抜き取り検査を提案した。抜き取り検査は早くから普及したが、管理図を利用した方法は第2次世界大戦に際して米軍が需産業界に対して要求するまで実施されず、戦後も米国では一般の産業界では普及しなかった。

 “ばらつきのコントロール”を中心とした品質管理が最初に芽吹いたのは敗戦国・日本だった。日本を占領した米軍(GHQ)は日本国内の通信状況(電話回線、機器)の品質が低く、傍聴されやすい無線に頼らざるを得ない状況を懸念し、日本の通信業界の底上げを図るべく、本国から技術者を呼び寄せた。これが日本の品質管理の事始めとされる。

 ごく初期に品質管理を導入した日本企業の1つに日本電気(NEC)がある。同社では1946年10月から12月までの1か月半、玉川向製造所でウイリアム・マギール(William Magil)の指導を受け、翌年2月検査部に「品質管理課」を新設している。このとき、当初は“quality control”を品質統制と訳していたが戦時統制を連想することから「品質管理」の語を作り出したという。

 日本における品質管理の中心になったのが日本科学技術連盟(日科技連)である。1946年に発足した日科技連はエドワード・デミング(W. Edwards Deming)やジョゼフ・M・ジュラン(Joseph M. Juran)ら、統計的品質管理の権威を招へいして講演会を行ったり、出版や教育などを行ったりして品質管理の普及と深化に努めた。日科技連の活動で特筆すべきはデミング賞(デミング賞本賞、デミング賞実施賞)である。これはデミングから講義録印税の寄付を受けた日科技連が基金を作って1951年に創設した表彰制度で、この賞への応募・発表を通じてさまざまな品質経営手法が開発された。

 こうした種がまかれた品質管理は日本で独自の発展を示した。もともと品質管理は製品品質(購買する際の品質)が主テーマだったが、日本では製造業で展開されたことから製造工程を対象としてPDCAサイクルを繰り返して回す継続的改善による“工程で作り込む”スタイルの品質管理(プロセスアプローチ)が生み出された。1960年代に入ると具体的な問題解決の実践として日本独自の小集団活動(QCサークル)が開始され、1970年代以降は全社的品質管理(TQC)として発展しながら、製造業を中心に広く実施されるようになった。

 一方、1970年代から1980年代にかけて経済不振にあえいでいた米国の産業界はこの時期になってデミングや日本式品質管理を発見(再発見)し、これらの経営手法を米国流にアレンジしながら取り入れるようになった。TQMシックスシグマがその例である。

 逆に日本ではバブル崩壊後の1994年ごろから、品質管理活動の制度疲労や弊害が指摘されるようになり、さらなる展開として日科技連ではTQCという用語をTQMへ変更し、TQM活動を推進するようになった。ただし、これは「新たなTQMの枠組みは、基本的には従来のTQCの概念・方法論を継承するもの」としており、TQCすべてを否定するものではない。TQCで行われてきたQCサークルなどのQC活動は、TQMを実現する構成要素と位置付けられている。

参考文献

▼『QC的ものの見方・考え方』 細谷克也=著/日科技連出版社/1984年11月

▼『品質管理心得帖』 西堀榮三郎=著/日本規格協会/1981年10月

▼『反省の科学――TQC』 小林龍一=著/小林龍一/1997年1月

▼『忘れ去られた経営の原点――GHQが教えた「経営の質」 CCS経営者講座』 後藤俊夫=著/生産性出版/1999年3月

▼『日本的経営の興亡――TQCはわれわれに何をもたらしたのか』 徳丸壮也=著/ダイヤモンド社/1999年8月

▼『工業製品の経済的品質管理』 W・A・シューハート=著/白崎文雄=訳/日本規格協会/1951年10月(『Economic Control of Quality Manufactured Product』の邦訳)


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