Y理論(わいりろん)情報システム用語事典

theory Y / ワイ理論

» 2010年05月06日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 「人間は基本的に仕事を楽しむ性質を持ち、報酬や罰則といった外的動機付けがなくても承認や自己実現などの内的欲求によって自発的に働き、しかるべき責任を取ろうとする存在である」という人間観のこと。

 Y理論はマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のダグラス・マグレガー(Douglas Murray McGregor)がX理論に代わる人間観として示したものである。その著書『The Human Side of Enterprise』(1960年)では、以下のように説明している。なお、同著でマグレガーはY理論に基礎に置いた経営手法として「統合と自己統制による経営」が提唱しているが、これは今日の目標管理の源流の1つである。

  1. 仕事で心身を使うのはごく当たり前なことであり、遊びや休憩の場合と変わりはない
  2. 外から統制したり脅かしたりすることだけが企業目標達成に努力させる手段ではない。人間は自分が進んで身を委ねた目標のためには自ら自分にムチ打って働くものである
  3. 献身的に目標達成に尽くすかどうかは、それを達成して得る報酬次第である(報酬の最も重要なものは自我の欲求や自己実現の欲求の満足である)
  4. 普通の人間は、条件次第では責任を引き受けるばかりか、自ら進んで責任を取ろうとする
  5. 企業内の問題を解決しようと、比較的高度の想像力やを駆使し、手練を尽くし、創意工夫を凝らす能力は大抵の人間に備わっている
  6. 現代の企業においては、日常、従業員の知的能力はほんの一部しか生かされていない

ダグラス・マクレガー=著 『企業の人間的側面』より


 マグレガーは、常にY理論が有効だと述べたわけではない。Y理論は、米国の心理学者 アブラハム・H・マズロー(Abraham Harold Maslow)の欲求階層説に依拠しており、低位の欲求が満たされている労働者を動機付ける場合には、高位の欲求(達成感や個人的成長)を原動力とする方法を採ることが望ましいという条件付きの主張となっている。

参考文献

▼『企業の人間的側面』 ダグラス・マクレガー=著/高橋達男、黒田哲也、浜崎隼彦、横田光三、小松崎清介=訳/産業能率大学短期大学/1966年6月(『The Human Side of Enterprise』の邦訳)

▼『完全なる経営』 アブラハム・マズロー=著/金井寿宏=監訳/大川修二=訳/日本経済新聞社/2001年11月(『Maslow on Management』の邦訳)

▼『〈新版〉動機づける力——モチベーションの理論と実践』 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部=編・訳/ダイヤモンド社/2009年10月8日(『Harvard Business Review Anthology Motivational Leadership』の邦訳)


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