TOWSマトリクス(てぃーおーだぶりゅーえすまとりくす)情報システム用語事典

TOWS matrix

» 2007年05月30日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業や事業の戦略立案を行う際で使われる分析フレームワークで、組織の外的環境に潜む機会(O=opportunities)、脅威(T=threats)と定義された諸項目と、その組織・事業が内部に持つ強み(S=strengths)、弱み(W=weaknesses)と見なせる諸項目の組み合せから、将来においてあり得る状況とそれに対する対策を導き出すという形式的戦略的策定手法を提供する。

 経営戦略策定の基本ツールであるSWOT分析では、その企業・組織が持っている経営資源やコアコンピタンスなどの内部要因を「強み」と「弱み」の視点で、市場・競合他社・各種規制などの外部環境を「機会」と「脅威」の視点で列挙・確認する。しかし、これらの各要因の組み合わせによっては、単独で分析した場合と異なる戦略が必要になる場合があるとして、考案されたのがTOWSマトリクスを使ったTOWS分析である。

 TOWS分析の手順は、まずSWOT分析と同様に外部環境の諸要因(経済、社会、政治、人口統計、製品と技術、市場と競争状況)のリストを作り、確認・評価する。続いて内部要因(マネジメントと組織、オペレーション、財務、マーケティング、そのほか)のリストを整理・検証する。

 このリストをTOWSマトリクスのT・O・W・Sの欄に記入すると、T・OとW・Sが交差するボックスに4つの状況が得られる。この状況に対応する解決策を検討していく。

内部要因

強みのリスト(S)

(1)
(2)

弱みのリスト(W)

(1)
(2)
外部環境

機会のリスト(O)

(1)
(2)

SO戦略:maxi-maxi

(1)
(2)

WO戦略:mini-maxi

(1)
(2)

脅威のリスト(T)

(1)
(2)

ST戦略:maxi-mini

(1)
(2)

WT戦略:mini-mini

(1)
(2)
TOWSマトリクス(「The TOWS matrix: a tool for situational analysis」を参考)

 WTにおける戦略は、自社の弱みと外部の脅威を最小化することに主眼が置かれる。事業を断念するしか選択肢がない場合もあるかもしれないが、弱みの克服や脅威の減少につながる施策を検討する。

 WOにおける戦略は、弱みを補完して機会を活かすことが狙いとなる。例えば、市場のニーズをつかんでいながら自社にそれを供給する能力がない場合、事業提携や技術協力などのアクションを検討することになるだろう。

 STにおける戦略は、自社の強みに基づいて脅威を対処する施策である。例えば、販売力のある会社が新興企業から新技術で挑戦を受けたときの対策などが検討される。

 SOにおける戦略は、自社の強みを好環境の中で最大化する施策を考える。自社の強みを使って、機会を拡大・持続する策も検討されるだろう。

 ほかにTOWS分析では諸要因は時間の経過によって動的に変化するので、継続的な分析が必要であること、WT・WO・ST・SO各ボックスの各解決策を数値的に評価する方法が提案されている。

 この手法はサンフランシスコ大学 ビジネス&マネジメント・スクール教授のハインツ・ワイリック(Heinz Weihrich)が「The TOWS matrix: a tool for situational analysis」(1982年)で提唱したもので、企業の経営戦略や国の競争優位の研究、および戦略策定の定式化のために考案された。

 TOWS分析はSWOT分析の拡張だが、特に両者を区別せずに「SWOT分析」として同一手法に扱う場合が多い。「SWOT/TOWS分析」「SWOT/TOWSマトリクス」と表記されることもある。日本では「機会・脅威」と「強み・弱み」の組み合わせによる戦略立案のステップを「クロスSWOT分析」と称することがある。

参考文献

▼「The TOWS matrix: a tool for situational analysis」Heinz Weihrich=著/Journal of Long Range Planning, Vol. 15 Issue 2/1982年

▼『戦略的マネジメント——21世紀のマネジメントモデルを構築する』 フレッド・R・デイビッド=著/大柳正子=訳/ピアソン・エデュケーション/2000年12月(『Concepts of Strategic Management』の邦訳)


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