バーチャルリアリティ(ばーちゃるりありてぃ)情報システム用語辞典

virtual reality / VR / ヴァーチャルリアリティ / 仮想現実 / 仮想現実感

» 2003年08月29日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 視覚、聴覚、触覚などの人間の感覚器官に対して、コンピュータなどによって合成した情報を示し、その情報を直感的に理解したり、実感できる形で体験できるようにする技術。人間の認知能力を拡張するのための道具と見なすこともできる。

 基本となるのは3次元画像をリアルタイムに作り出す3D CGの技術である。例えば、これとヘッド・マウンテッド・ディスプレイ(HMD=ゴーグルのように頭部にかぶる表示装置)を組み合わせれば、頭の向きや動きに対応した視界が表示できるので、体験者はその空間内に入り込んだかのような感覚が得られる。また、データグローブ(手の動きなどを検知する装置)、データスーツ(身体の動きなどを検知する装置)などを身に付けることによって、バーチャル空間の中でモノをつかんだり、歩いて移動したりといったことが可能になる。さらに、音響効果を組み合わせれば、臨場感溢れる体験が得られる。

 バーチャルリアリティは、ゲームや映像アミューズメントのほか、軍事、航空宇宙、医療、教育、建築、コミュニケーションなど数多くの分野での応用が考えられている。航空機のパイロット養成に使われる飛行シミュレーションは、バーチャルリアリティ利用の典型例といえる。インターネット上のWebサイトで3D画像を作り出すVRML(virtual reality modeling language)などもバーチャルリアリティの1分野とされる。

 バーチャルリアリティという言葉は、1980年代後半に米国VPLリサーチ社がHMDとデータグローブを含むRB2システムを発売する際に製品カテゴリを説明するために使った言葉で、同社の創始者でコンピュータ科学者、ビジュアル・アーティストでもあるジャロン・ラニアー(Jaron Lanier)が命名した。

 バーチャルリアリティに関連する研究は、1960年代の米国ですでにいくつか存在していた。1つは軍事や宇宙開発などでの利用を目的にしたテレオペレーション(遠隔操作)技術であり、このほかコンピュータ科学におけるCGやHCI、芸術におけるインタラクティブ・アートなどが挙げられる。これらを統合する概念がVRであるともいえる。

 日本語では「仮想現実」「仮想現実感」などと訳され、コンピュータによって現実をシミュレートして、仮想空間を作る技術と説明されることが多いが、virtualという語は「実際存在としてや形質の面では実物とは異なるが、本質や効果としては同等の」を意味し、本来的には“仮想”というニュアンスはない。

参考文献

▼『バーチャルリアリティ――理論・実践・展望』 サンドラ・K・ヘルセル、ジュディス・P・ロス=編/広瀬通孝=監訳/海文堂出版/1992年6月(『Virtual reality:theory,practice,and promise』の邦訳)

▼『人工現実感生成技術とその応用』 岩田洋夫=編著/サイエンス社/1992年12月

▼『聖なるヴァーチャル・リアリティ――情報システム社会論』 西垣通=著/岩波書店/1995年12月

▼『ヴァーチャルという思想――力と惑わし』 フィリップ・ケオー=著/嶋崎正樹=訳/西垣通=監修/NTT出版/1997年9月(『Le virtuel』の邦訳)

▼『だまされる脳――バーチャルリアリティと知覚心理学入門』 日本バーチャルリアリティ学会VR心理学研究委員会=編/講談社(ブルーバックス)/2006年9月


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