連載
» 2000年05月22日 00時00分 公開

詳説 TCP/IPプロトコル:第1回 ネットワーク プロトコルとインターネット (4/5)

[岡部泰一,著]

 ネットワークの通信モデルには、大きく分けると「回線交換(circuit-switched)」と「パケット交換(packet-switched)」という2つの種類がある。コンピュータのネットワークでは、どちらかというと(下位層のプロトコルでは)「パケット交換」の方が多く使われているが、これらは相互に補完的なモデルであり、どちらの方が優れているというものでもない。実際には、プロトコルや技術、用途などに応じて使い分けられている。どちらのモデルも、基本的ではあるが、非常に重要な概念なので、まずはこれらの違いについてみておこう。

回線交換型ネットワーク

 「回線交換(circuit-switched)」とは、通信する2つのノード間に、(論理的に)直接接続するための回線を用意して、それを使って通信するという通信モデルである。私たちが普段利用している電話システムが利用しているモデルが、この回線交換の代表といえるだろう(ただし現在の電話システムでは、見かけ上は回線交換に見えるかもしれないが、実際にはパケット交換技術も利用して実現されている。これからも分かるように、2つの通信モデルはお互いに排他的な関係にあるわけではなく、必要に応じて組み合わせて利用されている)。電話をかけると、自分の電話器がつながっている交換局を通り、いくつかの中継局を経て、相手の電話機が接続されている交換局から相手の電話機につながる。交換局や中継局では、その間のケーブルをリレーなどで(昔の交換機では)物理的に接続する。この二人の間の接続を回線と呼び、電話がつながったことを「回線が確立した」という。こうして確立された回線では、他の利用者に影響されることなく、常にその回線を利用している2人だけが会話をすることができる。2人が何もしゃべっていない間も、回線はずっと接続されたままになっており、他の人がその回線(のための交換施設などの資源)を利用することはできない。

 ネットワーク内の交換局や中継局間は、概念的には複数のケーブルが通っている。回線はその間にある交換局や中継局間のケーブルを1つづつ占有してしまう。そのため、常に一定の帯域幅(電話の場合は音声の伝送に必要な帯域幅)が保証されているが、利用者は距離と接続された(回線を占有している)時間に応じた料金を支払うことになる。

図3 回線交換ネットワーク
回線交換ネットワークでは、通話中には電話機間は物理的に接続され、2人だけが利用できる「回線」が確立される。回線はその間のケーブルを占有するため、常に一定の帯域幅が保証されるが、距離と時間に応じたコストが発生する。

パケット交換ネットワーク

 その名前が示す通りパケット交換とは、小包(packet)を配送する仕組みに似ている通信モデルである。ネットワークに送るデータを、パケットと呼ぶ小さなデータに分割し、それぞれのパケットに宛先を付けてネットワーク上に送り出す。パケットは、宛先との間にあるコンピュータからコンピュータへと順に送られ、最終的な目的地まで届けられる。このときパケットがたどる道のりを「ルート(route:経路)」と呼び、間にあるコンピュータを「ルータ(router)」と呼ぶ。ルータは、パケットのルートを決めてパケットを送り出すための専用のコンピュータであり、銅線ケーブルや光ファイバなどの物理的な媒体によって相互に接続されている。ルートを決めてパケットを送ることを「ルーティング(routing)」と呼び、物理的な接続を「リンク(link)」と呼ぶ。ネットワークにつながっているコンピュータのうち、自分のリソースへのアクセスを待っているコンピュータを「ホスト(host)」と呼ぶ。

 ルータは、受け取ったパケットの宛先を見てルーティングするため、パケットは一時的にルータに貯えられる。もし、ルータにパケットを貯えるための記憶領域がない(いっぱいになってしまった)場合や、ルータが処理できないほど大量のパケットが送られてくると、あふれたパケットは破棄せざるをえない。この場合、パケットが途中で消失することになり、目的のコンピュータに届かないということになる。これは望ましくない事態なので、次のルータがパケットを処理できない状態であることがあらかじめ分かっていれば、次のルータがパケットを処理できるようになるまでパケットを送り出すのを待ったり、同じ宛先へのパケットが連続していても、次にパケットを送るルータの状態に応じてルートを変更したりする。そのためパケットが到着するまでの時間が一定ではなくなったり、パケットが到着する順序が入れ替わったりすることもある。

 パケット交換型ネットワークでは、このようなパケットの消失や到着順序の入れ替わりなどの事態が発生する可能性があるが、その反面、実はネットワーク資源を有効に活用できるという利点がある。というのは、パケットを送信するときだけにしかリンクを占有しないし、回線交換のようにあらかじめ回線を確立しておく必要もないからだ。複数のホストが存在する場合でも、それぞれがパケットを送るために要する時間は非常に短いため、1つのリンクを複数の通信で交互に利用することができる。このためパケット交換は、回線交換に比べてネットワークを有効に利用でき、コスト的に有利になる可能性がある。このような利点から、パケット交換はコンピュータのネットワークで広く利用されている。

図4 パケット交換ネットワーク
パケット交換ネットワークでは、データはパケットに分割され、ルータからルータに転送されながら、最終的な目的地にたどり着く。ルータ間のリンクはすべての通信で共有されるため、コスト的に有利であるが、パケットの届く順序やタイミングなどは保証されない。

 

【更新履歴】

【2000/06/22】本文の最後の文において、「このような利点から、回線交換 はコンピュータのネットワークで広く利用されている。」としていたのは、「このような利点から、パケット交換はコンピュータのネットワークで広く利用されている。」の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。


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