第4回 TCP/IPプロトコルの概要詳説 TCP/IPプロトコル(5/5 ページ)

» 2000年08月10日 00時00分 公開
[岡部泰一]
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 TCP/IPのプロトコル構造は、ネットワーク インターフェイス層、インターネット層、トランスポート層、アプリケーション層という、4つの層から構成される。OSI参照モデルとの類似点が多く、ある程度の対応はとれるが、完全に一致しているわけではない(OSI参照モデルについては、連載第3回「OSI参照モデル」を参照のこと)。

OSI参照モデルとTCP/IPの階層構造

OSI参照モデルは7つの層、TCP/IPは4つの層から構成される。


ネットワーク インターフェイス層
 IPが、伝送システムとして利用する各種ネットワークのプロトコルが位置する層である。社内ネットワークなどでよく使われるEthernetや、電話回線を利用したダイヤルアップ接続などで使われるPPP(Point-to-Point Protocol)など、各種のプロトコルが存在する。IPアドレスと各ネットワーク固有のアドレスとの対応をとるためのARP(Address Resolution Protocol)/RARP(Reverse Address Resolution Protocol)などのプロトコルもここに位置する。OSI参照モデルの第1層「物理層」と第2層「データリンク層」に相当する層である。

■インターネット層
 IPが位置する層である。下位層のネットワーク インターフェイス層のプロトコルを利用して、仮想的なパケット交換ネットワークを構築し、ホスト(ネットワークに接続しているコンピュータを「ホスト」と呼ぶ)とホストの間の通信を実現する。また、ネットワークの動作状態を診断するためのICMP(Internet Control Message Protocol)などのプロトコルもここに位置する。OSI参照モデルの第3層「ネットワーク層」に相当する層である。

■トランスポート層
 IPを利用するTCPやUDPが位置する層である。プロセスとプロセスの間の通信を実現する。OSI参照モデルの第4層「トランスポート層」に相当する。

■アプリケーション層
 TCPやUDPを利用するアプリケーションが位置する層である。WebサーバとWebブラウザが利用するHTTP(HyperText Transfer Protocol)や、電子メールの送受信を行うためのSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)POP3(Post Office Protocol)、ファイルの転送のためのFTP(File Transfer Protocol)など、各種のプロトコルが位置する層である。OSI参照モデルの第5層「セッション層」と第6層「プレゼンテーション層」、第7層「アプリケーション層」に相当する層である(セッション層やプレゼンテーション層の機能が必要ならば、アプリケーション自身で対応することになる)。

今回のまとめ

  • TCP/IPは、概念的には4階層からなるネットワーク プロトコルである。
  • 最下位のネットワーク インターフェイス層は、Ethernetなどの物理的なネットワークに相当する。TCP/IPプロトコルでは、さまざまな物理的ネットワークを使用することができる。
  • 2つ以上の物理的なネットワークに接続され、それらの間でパケットを交換するコンピュータをルータという。
  • IPプロトコルでは、IPアドレスを基にして、複数の物理的なネットワークにまたがるコンピュータ間で、パケットの送受信を行う。
  • TCPプロトコルでは、2つのアプリケーション間に仮想的な通信路(コネクション)を確立し、信頼性のある通信を実現している。「信頼性がある」とは、データが確実に相手に届くとか、送ったとおりの順番でデータが相手にまで届く、などということが保証されているという意味である。
  • UDPプロトコルでは、信頼性はないが、オーバーヘッドの少ない通信を実現することができる。さらに、TCPと違って、ブロードキャストやマルチキャスト通信にも対応できる。


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