連載
» 2001年01月23日 00時00分 公開

詳説 TCP/IPプロトコル:第5回 TCP/IPとイーサネット (1/2)

UNIXに実装されたことにより、TCP/IPは急速に普及し始めた。今回はUNIXとTCP/IP、そしてイーサネットの通信モデルについてみていく。

[岡部泰一,著]
Windows Server Insider

 

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 TCP/IPは、無線や通信衛星を使ったパケット交換ネットワークと、ARPANETを相互接続する米国DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency:国防高等研究計画局、1972年にARPAから改称。1993年には元のARPAと改称されるが、1996年に再びDARPAと改称された)のプロジェクトによって開発されたプロトコルである。TCP/IPは複数のプロトコルからなり、相互接続ネットワークでパケットを伝送するためのプロトコルである「IP(Internet Protocol)」と、IPを利用して信頼性のある通信を実現するためのプロトコルである「TCP(Transmission Control Protocol)」が中心となっている。TCP/IPはインターネットの標準プロトコルであるが、現在インターネットが広く普及した要因として、このTCP/IPの普及がある。そしてTCP/IP普及の背景には、AT&T Bell(ベル)研究所で誕生したオペレーティング・システムUNIXと、Xerox PARC(Palo Alto Research Center)で開発されたイーサネットの存在があることは無視できない。

UNIXオペレーティング・システム

 UNIXは1969年にAT&T Bell研究所で誕生したオペレーティング・システム(OS)であり、そのほとんどの部分がC言語によって記述されていた。それまで、OSのようなCPUやハードウェアのアーキテクチャに大きく依存するプログラムは、アセンブリ言語というCPUのアーキテクチャを反映したプログラミング言語で記述されているのが一般的であった。アセンブリ言語はCPUのアーキテクチャごとに異なり、あるCPUのアセンブリ言語で記述したプログラムは、別のアーキテクチャのCPUではそのまま利用することができない。アセンブリ言語で記述されたプログラムを、ほかのコンピュータに移植する(そのコンピュータ用にプログラムを書き換える)ことは、すべてを記述しなおすことに等しい。つまり、OSはそれぞれのコンピュータのアーキテクチャごとに開発されていたのである。

 それに対し、C言語などの高級言語は、CPUアーキテクチャに依存しないプログラミング言語で、これらの言語で記述されたプログラムはCPUのアーキテクチャによらずそのまま利用することができる。一般的に高級言語はシステムのアーキテクチャを隠してしまうため、OSの記述には向いていないのだが、C言語はUNIX開発のために設計された言語であり、比較的低レベルな、システム寄りの記述をすることも可能であった。そのためシステム・プログラミング言語などとも呼ばれた。また、C言語はコンパクトな言語であったため、多くのCPUアーキテクチャへの対応が比較的容易であった。

 あるコンピュータ用のUNIXの移植は、そのコンピュータ用のC言語処理系を用意し、UNIXのソースコードのうちハードウェアに依存する部分と、C言語では記述できない一部のアセンブリ言語の部分を書き換えるだけで済んだ。これは、OSをすべてアセンブリ言語で開発することに比べると、はるかに容易であった。

BSD(Berkeley Software Distribution) UNIX

 1975年には、Bell研究所はUNIXを教育機関に対して無料に近い値段でソースコードごと提供しはじめた。多くの大学がUNIXを購入し、OSの授業や研究のためにそのソースコードを利用した。そのため、多くの研究者の間でUNIXが広まり、OSの研究以外でもUNIXが研究のプラットフォームとして広く利用されるようになっていった。UNIXは多くの研究者によって使われて改良が加えられたため、優れたOSとなっていったのである。中でもカリフォルニア大学バークレー分校(USB)の大学院生であったWilliam(Bill) Joyらが、1979年に、UNIXにさまざまな改良を加えて開発したBSD(Berkeley Software Distribution) UNIXは画期的なOSであった。DARPAはBSDに注目し、その開発の資金援助を行い、1981年には誕生したばかりのTCP/IPがBSDに実装された。BSDは革新的な機能を搭載したOSであったにもかかわらず、教育機関にとっては安価で、そのソースコードが公開されているなど、研究者にとってはうってつけのOSであったため、研究開発のプラットフォームとして不動の地位を固めていった。

 このころCPUの低価格が始まり、比較的安価でありながら高性能なワークステーションが生まれたこともUNIXの普及につながった。BSDの開発者の1人であるBill Joyは1982年にスタンフォード大学の卒業生らとともにSun Microsystemsを設立し、ワークステーションの製造・販売を始めた。SunのワークステーションはBSDを基本にしたOSを標準装備し、TCP/IPを利用したさまざまなネットワーク技術を搭載していたため人気を博した。ほかにもUNIXをベースにしたOSを搭載したワークステーションが数多く開発・販売され、UNIXの普及に拍車をかけた。

 TCP/IPはもともと仕様や開発過程がRFCとして公開されているうえに、BSD UNIXに搭載されたことにより、実際に利用できるシステムと、その実装ソースコードまでもが容易に入手可能となった。TCP/IPはあらゆる面でオープンであり、コンピュータ・ネットワークに関心を持つ研究者にとってはもちろんのこと、UNIXを使う多くのユーザーに支持されていった。


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