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» 2001年08月16日 00時00分 公開

詳説 TCP/IPプロトコル:第8回 イーサネット(その3) - イーサネットとリピータ/ブリッジ/スイッチ (4/4)

[岡部泰一,著]
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ツイストペア・ケーブル・イーサネットとリピータ・ハブ

 3台以上のステーションを接続するためには「リピータ・ハブ」を使い、スター型のトポロジーで配線する。リピータ・ハブは単に「ハブ」とも呼ばれるが、正確には複数のポートを持つマルチポート・リピータである。複数のセグメントを接続することができ、接続しているセグメント全体で1つのコリジョン・ドメインとなる。

 ステーションとはストレート・ケーブルで接続できるようにリピータ・ハブの各ポートは内部で結線を交差させている。標準の規定では結線が交差しているポートには「X」というマークを付けることになっているが、このマークが付いていないものが多いようである。リピータ・ハブ同士を接続する場合、すべてのポートの結線が交差しているとクロス・ケーブルを使うことになるが、一般的にはリピータ・ハブにカスケード・ポート(Cascade port)と呼ばれる、結線が交差していないポート、もしくは結線を切り替えてカスケード・ポートにできるポートが用意されている。カスケード・ポートがある場合は、カスケード・ポートと結線が交差していポートをストレート・ケーブルでつなぐことができるため、クロス・ケーブルを用意する必要がない。

リピータ・ハブ
リピータ・ハブを使ったネットワークは、ハブを中心に放射状にセグメントが伸びるスター型のトポロジーとなる。ハブの側には、結線が交差していることを表す「X」マークを付けることになっている。この写真のハブでは、「7X」や「8X」というふうに、ポート番号の後に「X」が付いているが、このマークがないハブも多い。右下の16番目のポートは、スイッチで交差させるかどうかを選択することができるようになっている。ハブ同士を接続する場合は、どちらか一方のハブの側だけを交差させればストレート・ケーブルで接続することができる。リピータ・ハブに接続しているセグメント全体で、1つのコリジョン・ドメインとなる。
 (1)「8X」の「X」は、結線が内部で交差していることを表しているので、ステーションとはストレート・ケーブルで接続すればよい。安価なハブでは、「X」マークが付いていないものも多い。
 (2)このポートは、「カスケード・ポート」とか「アップリンク・ポート」などと呼ばれ、他のハブとの相互接続にも利用できる。
 (3)このモードにすると、他のポートと同様に内部で結線が交差し、ストレート・ケーブルで通常のステーションに接続することができる。MDIは、Medium Dependent Interfaceの略。
 (4)このモードにすると、内部の交差接続がなくなり、ストレート・ケーブルを使って他のハブの通常ポートに接続することができる。

ツイストペア・ケーブル・イーサネットとスイッチング・ハブ

 リピータ・ハブで連結できるセグメント数には限度があるため、セグメントを無制限に接続するには「スイッチング・ハブ」を使う。スイッチング・ハブはラーニング・ブリッジを発展させたもので「レイヤ2スイッチ」とも呼ばれ、3つ以上のポートを持つ。イーサネット・フレームを理解し、衝突やエラー・フレームは中継しないので、コリジョン・ドメインを分割するために利用できる。また、それまでに中継したフレームの送信元から各ステーションがどのポートの先に接続しているかを学習しているため、関係のないポートへのフレームの中継を抑えることができる。衝突や不要なフレームを関係ないセグメントに流さないため、ネットワーク全体のトラフィック量が低減する。さらに複数のポート間の中継を同時に行うことができるため、ネットワークの利用効率を上げることができる。

■全二重(full duplex)通信イーサネット 10BASE5や10BASE2では、1つのケーブルを複数のステーションで共有しているが、このようなシステムでは、1つのステーションが送信をしている間は、そのステーションがケーブルを占有し、他のステーションからデータを送信することはできない。たとえ1対1の通信でも、一方が送信をしているときは、他方は受信しかできず、データを送信することができないのである。このように、送信と受信を同時に行えない通信方式を「半二重(half-duplex)通信方式」という。

 これに対して送信と受信が同時に行える通信方式を「全二重(full-duplex)通信方式」という。例えば、電話は全二重の通信方式で、2人が同時に話すことができる。

 DIXイーサネットをベースにしたIEEE 802.3は、半二重の通信方式のCSMA/CDの規格であるが、ツイストペア・ケーブルや光ファイバといった全二重の通信が行えるネットワーク媒体を規格として追加したため、後にCSMA/CDを使用しない全二重の通信方式を規格に取り入れた。

 全二重の通信を利用できるのは、2つのステーションをクロス・ケーブルで直接接続した場合や、全二重に対応したスイッチング・ハブとステーションを接続している場合である。リピータ・ハブなど半二重にしか対応していないデバイスとの接続では利用することはできない。あるステーションが全二重を行うためには、そのインターフェイスが全二重に対応している必要もあるが、送受信時に送信用と受信用の2つの独立した伝送路を確保できる必要がある。もともと電話で利用されていたツイストペア ・ケーブルは、2つの伝送路を持つため全二重が可能であり、2つのステーションをクロス・ケーブルで接続したセグメントでは全二重の通信が行える。しかし、リピータ・ハブを介した通信では全二重の通信を行うことはできない。リピータ・ハブは、届いた信号をそのまま他のすべてのポートに中継するデバイスなので、内部には1つの伝送路しか持たないためである。

 一方スイッチング・ハブは、全二重の通信を行うことができる。スイッチング・ハブは、複数の中継を同時に行うことができるうえ、中継先のポートにトラフィックがある場合は、フレームを内部に蓄えておいて後で中継することができる。これは内部にフレームを蓄えるメモリを持っているためで、中継するときは物理的な結線を変更しているわけではなく、メモリから目的のポートに出力しているわけである。メモリの許すかぎり仮想的な伝送路をいくつでも持つことができる。例えば、8ポートのスイッチング・ハブでは、任意の2つのポート間での全二重通信を同時に最大4組並行して行うことが可能である。

 全二重の通信ではフレームの送信中に相手のフレームを受信できるため、半二重の通信に比べて2倍の帯域幅を持つことになる。しかし、これは単純に転送速度が2倍になるということではないため、FTPなどでファイルを転送する時間が半分になるということではない。独立したデータを相互に交換する場合、つまり2つのステーションが同時に相手にデータを転送する場合などに意味があるもので、特にバックボーンなどで利用すると効果がある。

 全二重の通信は衝突が起こらないためCSMA/CDを使用しない。そのため衝突検出によるネットワーク長の制約はなくなり、ネットワーク媒体の信号伝送特性の許す限りネットワークを広げることができる。信号伝送特性に優れる光ファイバではその効果は大きく、何kmにもわたるネットワークを構築できるが、ツイストペア・ケーブルの場合はケーブルの信号伝送特性によって半二重でも全二重でも100mに制限される。

全二重の通信
半二重の通信に比べて倍の帯域幅が利用でき、CSMA/CDによるネットワーク長の制限がない全二重の通信は、バックボーンでの利用で効果がある。全二重の通信が行えるのは、全二重通信に対応したスイッチング・ハブやステーション間同士での接続だけであり、リピータ・ハブなど半二重にしか対応していないデバイスとの接続では行うことはできない。

 

今回のまとめ

  • 「コリジョン・ドメイン(collision domain)」はイーサネットのネットワーク上で衝突信号が伝わる範囲を、「ブロードキャスト・ドメイン(broadcast domain)」はブロードキャストが届く範囲をそれぞれ表す。
  • リピータはOSI参照モデルでいうと、物理層のレベルでデータの中継を行う装置を指す。フレームの衝突の情報も中継する。リピータを使って複数のセグメントを結合し、コリジョン・ドメインを拡大することができる。
  • ブリッジはOSI参照モデルでいうと、データリンク層のうち、下位副層であるMAC副層レベルでフレームの中継を行う装置を指す。衝突を起こした不完全なフレームは中継しない。ブリッジを使うと、コリジョン・ドメインを分割してトラフィックを局所化する(あるセグメント上のステーションだけで閉じているような通信を他のセグメントへ伝達させない)ことができる。
  • ラーニング・ブリッジやスイッチング・ハブは、フレームの送信元MACアドレスを学習して、宛先ステーションが存在するセグメントへのみフレームを中継する。これによりネットワーク全体のトラフィック負荷を減少させることができる。
  • データを送信しながら、同時に受信も行う通信形態を全二重通信という。ツイストペア・ケーブル(もしくは1組の光ファイバ)を用いたイーサネットでは、全二重通信も可能である。全二重通信を行うためには、2つのステーションとその間の通信路が全二重通信に対応している必要がある。


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