連載
» 2004年03月27日 10時00分 公開

安藤幸央のランダウン(24):技術者の祭典JTC BOFとJava Night

「Java FAQ(What's New)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします。(編集局)

[安藤幸央(yukio-andoh@exa-corp.co.jp),@IT]

JTC 2004開催

 2月18日から19日の2日間、赤坂のホテルニューオータニにてJTC(Java Technology Conference)2004が開催されました。JTCは、昨年まではいわゆるJavaOneとして知られていたJava開発者向けのカンファレンスです。

 プレゼンターとして、J2EE担当のマーク・ハプナー氏、J2ME担当のティム・リンドホルム氏という顔触れからもJavaの単なるお祭り騒ぎ的イベントではなく、よりエンタープライズ寄り、ビジネス寄りのイベントになったという印象が得られました。老舗のホテルで行われたことも荘厳な雰囲気を醸し出した大きな要因ですが、技術的・実務的要素が満載のセッションが充実したカンファレンスでした。参加者の面々も、ラフな格好のプログラマ風の人から、スーツ姿の集団まで、Javaが単なる興味の対象から、確実にビジネスフェイズに乗っていることが感じられました。

JTCにおけるBOFの充実度

 今回のJTCでは、何と総数23にも及ぶBOFが開催されました。魅力的な内容のBOFが同じ時間に同時進行し、どれに出席したらよいか、迷った方も多かったのではないかと思います。

 BOF(Birds Of a Feather)のもともとの意味は「同じ羽の鳥は群がる」といったことから「類は友を呼ぶ」という雰囲気を表します。つまりJTCにおけるBOFは堅苦しい発表とはまた違い、同じような技術的事柄に興味を持つ人々が集い、技術交換をしたり、意見交換をしたりする場なのです。

 数多くの人気BOFが並行して開催される中で、筆者はアプレッソ代表取締役社長の小野和俊氏、稚内北星学園大学の植田龍男教授とともに「転期を迎えるJava開発:エンジニアはどこに向かえばいいのか?」というタイトルのBOFを担当させていただきました。

アプレッソの小野氏 スピーカーによるプレゼンテーションが行われる
(写真はアプレッソの小野氏)

 前半では、スピーカーの皆さんにプレゼンテーションをしていただくとともに、会場の参加者からの活発な質問が飛び交いました。その後、会場の参加者を交え、リッチクライアントをテーマにJava GUI、Java開発環境などについての議論で盛り上がりました。いくつか上がったテーマの中から、かいつまんで紹介しましょう。

●Javaの方が得意か? Java以外の言語の方が得意か?

 会場の参加者のほとんどがJavaともう1つそれ以外の言語も習得・利用されている方が多かったのが印象的です。数人、習得しているプログラミング言語はJavaだけの人。初めて学んだプログラミング言語がJavaという方もいらっしゃいました。

 小野氏からは、Javaでプログラミングを学ぶと、オブジェクト指向的できれいなコードの書き方が身に付く。無理にほかの言語を学ぼうとせず、I/Oなど細かい部分も含めJavaを掘り下げていってほしいというコメントが出ました。

●最初に学ぶプログラミング言語としてのJavaの優位性は?

 Javaは自分で学ぶための情報、プログラミングのための情報が探しやすく、情報も豊富である。独学がしやすく、開発者のコミュニティの力も大きいという話になりました。また、教え方やプログラミングのノウハウの蓄積と共有が容易であるという意見に同意が多く、会場の皆さんもしきりにうなずいている風景が見受けられました。

●開発ツールとしてのEclipseの評価は?

 無料で使え、高品位・高速で動作する統合開発ツールとしてEclipseの人気は高かったようです。だたし、プラグインが豊富にそろっている半面、ユーザーが試しながら適切なものを選択していかなければならない点が面倒という意見もありました。

 中にはWindows用のEmacsエディタ環境であるMeadowを使いすべての作業を行っているというつわものもいました。しかし、そのような人でもデバッグ作業にはEclipseを併用していて、要は、うまく使い分けることが大切だという意見にまとまりました。

●サン、Javaにもの申す

 最後に、サン、そしてJavaに期待することを自由に出していただきました。整理すると、次のような意見にまとまります。

  • Java VM (JRE)のインストールをもっと簡単にしてほしい
  • JDK 1.4.2でSwingの見栄えがとても良くなったが、まだまだ十分ではない
  • HTMLのレンダリングが遅く、機能的に不十分である。何とかしてほしい
  • 言語仕様の策定だけでなく、簡単に使える開発ツールを充実させてほしい(これはサンだけでなく、ベンダ全体に対する提言でもある)

 BOFの主題であるリッチクライアントとしてのJavaは? Flashや.NETの比較は? という話題でも各種の意見が錯綜しました。結論としては、次々に新しい技術が登場してくる中で、何でもかんでもJavaでなければ駄目ということはなく、適材適所で考えることが重要である。という意見が主流だったようです。

定員120名の会場は満席に。19時から22時近くまで活発な意見交換が行われた 定員120名の会場は満席に。19時から22時近くまで活発な意見交換が行われた

 エンジニアとしてはいろんな技術を知っておいて、適材適所を見分ける目を養い、選択眼としての知識を身に付けるのが最重要であると、おおかた会場全体の意見がまとまりました。

 BOFの最後には、小野氏がVisual Basicをしのぐ、使いやすくてすごいJavaツールを個人的に開発し、来年のBOFでお披露目する(?)という話で来年への期待感が膨らみました。

JTCにおけるNight for Java Technologyの楽しさ

 毎年、特異な趣向を凝らした演出で、参加者の度肝を抜いているうわさのイベントがNight for Java Technology(通称、Java Night)です。昨年のJavaOne Japan 2003では、洋上の船を借り切っての大イベントでした。

 今年のNight for Javaは「料理の鉄人」を模した「Javaの鉄人」をテーマとして開催されました。「鉄人」が取り上げられた理由は何だったのでしょうか? それは前回のNight for Javaに参加したジェームズ・ゴスリング氏が「こんな楽しいイベントは、TV番組『料理の鉄人』みたいに毎週行われてほしいな」とコメントしたのが発端です(「料理の鉄人」は、米国でもIron Chefとして人気のTV番組です)。「料理」のテーマの下、キッチンシンクの上で10組の発表者が料理のフルコースになぞらえたデモ対決を行いました。

 10組の対決は次のような内容でした。

●前菜対決
作品名 作者
JFractal 林田茂夫
Morse Code Music Composer 芝尾幸一郎 Winner!
キッチンシンク上でのデモ発表風景(林田氏) キッチンシンク上でのデモ発表風景(林田氏)
●スープ対決
作品名 作者
Supreme Streaming System 西本圭祐
WhiteDog System and WhiteDog Studio 中口孝雄 Winner!

●魚対決
作品名 作者
コンポーネント指向電子メーラCOMET 青木宣明 Winner!
DataSpider Mapper 久納孝治

●肉対決
作品名 作者
Silouet ― シルエット 園田修司
ガンダムバトルシューティング 佐藤類 Winner!

●デザート対決
作品名 作者
BAGROM 神田浩之 Winner!
Scatter Search 福田善文

●サプライズ
作品名 作者
Looking Glass 川原英哉(サン・マイクロシステムズ)
Duke Cake ニューオータニのパティシエ 道場氏Winner!
ニューオータニのパティシエ 道場氏の作品「Dukeケーキ」 ニューオータニのパティシエ 道場氏の作品「Dukeケーキ」

 イベントの最後に一番会場が盛り上がったのはDukeケーキを制作したニューオータニのパティシエ 道場氏によるプレゼンテーションでした。イカスミで色付けしたDukeケーキの苦労話など会場の観客にとって、サンのすごい技術プレゼンテーションLooking Glassも色あせてしまうほどの人気でした。

Night for Java終了後のある上司と部下の会話

上司 「こんな楽しいイベントないだろ。オレは毎年これのために参加しているんだぞ」

部下 「JTC(JavaOne)にこんなイベントあるなんて全然知りませんでしたよ」

上司 「これだからおまえはまだまだ半人前なんだよ……」

 JTC主催者側からすると、キーノートなどメインのセッションや、充実したBOFそこのけで、Night for Javaが評価され、うれしいやら悲しいやら微妙な気分かもしれません。

 Night for Javaの人気は、Javaそれ自身がJavaならではの開発者コミュニティに支えられているということ、ビジネスロジックで動くものだけではないことを指し示しています。Night for Javaは楽しみながらすごいソフトウェアやサービスを開発できるJavaの底力を、まじまじと見せ付けられたイベントでした。

 毎回充実したBOF、趣向を凝らしたNight for Javaを楽しむとともに、次回のJTCにおけるBOF、Night for Javaもどんなものかと期待が膨らみます。企画にかかわった関係者の間では、今年の反省点も含め、次回のアイデアがぼんやりとしながら膨らみつつあります。また今度出合うことのできるJavaの技術的進化と、イベントの充実度に期待していてください。

参考URL

次回は4月下旬の公開予定です。


プロフィール

安藤幸央(あんどう ゆきお)

安藤幸央

1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。

ホームページ:
http://www.gimlay.org/~andoh/java/

所属団体:
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)

主な著書

「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)


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