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» 2004年08月18日 00時00分 公開

プロジェクトマネジメントスキル 実践養成講座(4):コストマネジメントは「時は金なり」でうまくいく (1/2)

[耵岡充宏,スカイライトコンサルティング]

 前回(「第3回 タイムマネジメントは急がば回れ」)は、プロジェクトの推進に欠かせないタイムマネジメントについて解説した。タイムマネジメントをきちんとしようと思うと、マネジメント側にもある程度の負荷が発生する。しかしながら、やるべきことをやるべきタイミングでやらなかったため、後で取り返しのつかない事態に発展した悲しい事例も多いのではないだろうか。やるべきことを地道に日々行うこと。一見遠回りなようであるがこれがタイムマネジメントの極意ともいえるであろう。

 今回は前回同様プロジェクトの推進には欠かせないコストマネジメントの勘所を解説する。それではまず、PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)におけるコストマネジメントの定義を確認しておこう。

コストマネジメントとは

 コストマネジメントとは、承認された予算内でプロジェクトを完了させることを目的とし、前回までのマネジメント領域と同様、「Plan-Do-See-Action」のサイクルになっている。つまり、プロジェクト期間中、コスト見積もりは常に見直され、最新の状態に保たれていなければならない。PMBOKでは、コストマネジメントは以下の4つのプロセスから構成されている。

コストマネジメント
のプロセス
主要成果物 説明
資源計画 必要資源量 機器など物理的にどのくらいの資源が必要かを決定する。
コスト積算(見積もり) コスト見積もりなど プロジェクトの完成費に必要な資源の予想コストの合計。
予算設定(時系列配分) コストベースライン(時系列予算配分) コスト実績を管理するために時系列に予算を配分したもの。
コスト管理 改定コスト見積もり 進ちょく度を測定し、コスト見積もりの変更管理を行う
表1 PMBOKにおけるコストマネジメント

 コストマネジメントとは、考え方自体はそれほど難しいものではない。成果物とタスクから必要な人員や機器などの資源を洗い出し、そこから必要な金額を計画する。そしてその計画どおりにプロジェクトを完了させるよう働き掛けていくことである。しかし多くの方が経験しているのではないかと思うが、スケジュール同様、当初計画どおりの予算で終了させることは難しい。特にプロジェクトの規模が大きくなればなるほど困難になるのである。

 これは当然のことであろう。そもそも計画を立てる時点では、何をどのように作るかも固まっておらず、全体が見通せない場合も多い。このような見えない状態で正確にいくら必要になるかを導き出すことは困難である。しかし、見えないからといって精度の低い見積りではプロジェクトが予算超過に陥る恐れがある。即ち、計画時点の精度はプロジェクトの成功に大きく影響するのである。

 いい換えれば、全体を見通すことができれば、精度の高い見積もりが可能になり、プロジェクトを成功に導く可能性が高くなるということである。

 それではどうすれば全体を見通せるようになるのか。実践的な勘所についてケーススタディを通じて紹介することにしよう。

経験を活用する

 あなたの部署にはほぼ時を同じくして始まった2つのプロジェクトがある。

 2つのプロジェクトはともに、WBS(Work Breakdown Structure)を定義し、プロジェクトスケジュールを作成しながらコスト見積もりを行っている。2人のマネージャは、ともにこれまで経験したことのない技術環境を用いるとのことでコストの見積りに頭を悩まされているようだ。2人の様子をのぞいてみることにしよう。

矢見雲マネージャの発言

「困ったなあ。開発とテスト要員はどれくらい必要なのだろうか。必要なハードウェアもよく分からんなあ」

「うーん、俺の経験からするとこんなものかなあ。やっぱこういうときは“エイヤっ”しかないよな」

「まあ、この規模だとこんなものだろう。よし、できた!」


出来杉マネージャの発言

「困ったなあ。開発とテスト要員はどれくらい必要なのだろうか。必要なハードウェアもよく分からんなあ」

「社内に似たようなプロジェクトを経験した者はいないだろうか。よし先輩と同僚に聞いてみることにしよう」

「おっ、早速同期からメールで返信があった。ちょうど同じようなプロジェクトをやったことがあるらしい。私が作った見積りを見てもらうようお願いしよう」


 コストを見積もるときに、よりどころとなるのは「経験」であろう。幸運にも以前に類したプロジェクトを経験していれば、プロジェクト期間中に必要なタスク、成果物、発生するイベントなども予想できるので容易に見積もりが可能である。しかし、システム開発でいえば、クライアントごとに要件・仕様の大きく異なることが多く、未経験のプロジェクトにアサインされるという経験をした方も多いことであろう。そんな場合どうすればよいのか。

 上でいう「経験」とは個人の経験だけでなく組織の経験を活用することも含んでいることに留意してほしい。あなたには経験がなくても上司や同僚、または他部署では経験しているかもしれない。場合によっては、外部ベンダから情報を収集することも有効である。このような経験者・有識者の知見を活用する・しないによって、大きく結果は変わってくる。

 上の例で出来杉マネージャは、「先輩・同僚に聞いてみよう」としているが、組織として過去のプロジェクト情報を共有・活用できる仕組みがあることが望ましい。もし貴方の企業・部署が個人の経験にのみ頼って他人の経験を活用できる仕組み・風土がないようであればぜひ「組織としての経験」を活用できるようにすることをお勧めする。

参考までに弊社で行っている主な取り組みを以下に紹介しておく。

  • 各コンサルタントがどのような経験・スキルを有しているかを把握する「スキルDB(データベース)」の活用
  • 全プロジェクトの計画成果物や実行成果物を共有する「ナレッジマネジメントシステム」の活用
  • 文書だけでは見えない実際のノウハウを補うための「プロジェクト勉強会」の実施

 重要なことは、見えないままでの見積もりを避けることであり、自分の知らないことは知っている人に聞いて見えるようにすることである。また、このことは、多くの経験を積み自己のスキルに自信があるベテランほどおろそかになりがちなので注意が必要であることを付記しておく。

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