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» 2004年10月05日 00時00分 公開

スイッチング・ハブ導入の勘どころ(前編):まずは、スイッチング・ハブの基本機能を知ろう (1/2)

 スイッチング・ハブは、企業LANを構成する要素として欠かせないものである。10年前は高価な製品として高根の花だったネットワーク機器は、現在では価格の下落により家庭内LANでも当たり前のように使われるようになった。だが、企業のバックエンドに配置されるスイッチング・ハブと、企業のワークグループ、家庭向けの製品ではその機能などに大きな違いがある。本記事では、企業システムへの導入に当たって必要となる基礎知識やスペックの読み方、導入のコツを解説していく。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),@IT]

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スイッチング・ハブの基礎知識

 従来では、ハブといえばシェアード・ハブ(別名「ダム・ハブ」)が一般的だったため、スイッチング・ハブとの区別が大きな意味を持っていたが、スイッチング・ハブが一般的になり、むしろシェアード・ハブを探す方が難しくなった現状では、この区分けも意味を失いつつある。だが、スイッチング・ハブの動作メカニズムを理解するという意味では、ぜひその違いを押さえておいてほしい。

シェアード・ハブとスイッチング・ハブ

 イーサネットの仕様では、あるネットワーク回線上に複数の端末がぶら下がり、通信に当たっては複数の端末間で回線をシェア(共有化)することでデータ送受信を実現するようになっている。だが同じ回線を共有する以上、通信の衝突が発生してしまうのは避けられない。この現象を「コリジョン」と呼び、コリジョンのもととなった信号を発信した端末がコリジョンを検出すると、適当な時間を置いてから再度通信を試みようとする(時間は乱数で決まるため、同じ端末間で再度衝突する可能性は少ない)。このような回線共有型のイーサネット・ネットワークを構築するのが「シェアード・ハブ」である。

 だが、こうしたエラー&リトライ型の処理はオーバーヘッドが大きく、ネットワークにぶら下がる端末の数が増えるとコリジョンの確率も飛躍的に上昇してしまう。そこで、少ないネットワーク帯域を効率的に利用するために、通信を行っている端末がつながっているポート同士を直接接続して、関係のないポートに信号が流れるのを抑制し、コリジョンの発生を防止する装置が登場した。それが「スイッチング・ハブ」だ。スイッチング・ハブでは、各ポートに接続されている端末のMACアドレスを記憶し、以後は当該の通信とは関係のないポートへと信号が流れるのを防止する。これにより、ネットワークの利用効率がアップし、パフォーマンスの改善が見込める。

 ただ「ブロードキャスト」と呼ばれるネットワーク上のすべての端末に対する一斉通信では、シェアード・ハブと同じようにすべてのポートに対して信号が流れることになる。ブロードキャストが発生するケースは、例えば通信を開始する前に、あるIPアドレスを持つ端末を特定するなど、ネットワーク上で調査する必要があるときだ。

図1 シェアード・ハブとスイッチング・ハブ 図1 シェアード・ハブとスイッチング・ハブ

スパニング・ツリー

 基本的なイーサネットの仕組みでは、ネットワークの通信経路が複数あることは許されていない。つまり、ネットワークのどこかでリング状に機器がつながっていたり、ハブ同士を複数のポートで接続しようとすると、うまくネットワークが動作しない。そこでスイッチング・ハブでは、動作開始前に「スパニング・ツリー」というプロトコルを使い、ネットワークが1本の経路で接続されているかをチェックし、もしそうでない個所を発見した場合には、一時的に接続を遮断して通信が行えないように設定しておく。

 スパニング・ツリーのメリットは、ネットワークに複数の通信経路を作っていたとして、もしネットワーク上のどこかのスイッチング・ハブやネットワーク・ケーブルで障害が発生した場合、スパニング・ツリーが再度経路設定を行うことで、ネットワークを迂回経路で自動的に復旧させられる点にある。ただ、ネットワーク構造が複雑だったりすると、スパニング・ツリーの収束に数分レベルの時間がかかったりするため、対障害用として過度な期待は持たない方がいいだろう。最近では、ダウンタイムを1秒未満に抑えた高速スパニング・ツリーが標準化されつつある。メーカーによっては、独自実装でトランキングや高速スパニング・ツリーを自社製品に組み込んでいるケースもあるようだ。

レイヤ3スイッチ

 スイッチング・ハブでは、あくまでイーサネットのレベルで処理、つまりOSI参照モデルにおける第2層のデータリンク層の部分での処理しか行わない。ネットワーク的に、社内LANをすべてスイッチング・ハブで構成することも可能だが、これではブロードキャストが社内のすべての端末に流れてしまううえ、WindowsなどのPCからは社内のすべての端末が見える状態になってしまう。そこで通常は、「ルータ」を用いてワークグループ単位にネットワークを区切り、必要な通信以外は別のワークグループへと流さないようにする。ルータはOSI参照モデルにおける第3層のネットワーク層を処理する装置で、いわゆるIPルーティングの処理をつかさどる。ルータによって区切られるネットワークのことを「セグメント」と呼び、各セグメント内の端末が出すブロードキャストは、当該セグメント内の端末にしか影響を及ぼさない。

 ルータは通常、スイッチング・ハブとは別の装置として用意されていることが多いが、コスト的、スペース的に考えて別装置として用意するのは効率が悪いケースもある。そこで、スイッチング・ハブにIPルーティングの機能を盛り込んでしまうことで、スイッチング・ハブとして動作すると同時に、ルータとしての動作も行えるようにする装置が登場した。それが「レイヤ3スイッチ」だ。もともとは、ソフトウェア処理が中心でパフォーマンスがあまり高くなかったルータを高速化するのを目的としていたが、最近ではルータ側のパフォーマンスもアップしており、この比較は必ずしも成り立たなくなっている。

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