連載
» 2005年07月13日 00時00分 公開

転職失敗・成功の分かれ道(8):転職希望者と求人企業のすれ違い

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[岩佐猛,ワークポート]

転職希望者と求人企業の認識のズレ

 転職希望者と面談させていただく中で感じるのは、「転職希望者と企業の認識の違い」です。企業にとって中途採用とは即戦力募集が前提となります。企業による中途採用は欠員の補充、または業績好調により発生するものなので、短期間で企業業績に寄与できる人材の確保を目的としています。しかし、転職希望者には即戦力であるという認識が薄いようです。

 しかも転職希望者は、転職で根拠のない給与アップやキャリアチェンジを模索しようとすることがあります。そこに企業との認識のズレが生まれるのです。今回はいくつかの事例を紹介しましょう。

受動的・ネガティブな印象で内定が得られない

 これは、自分でキャリアアップのための努力をせずに、企業の教育体制に期待している方に多く見られるようです。

 Windowsの経験しかなかった20代半ばのネットワークエンジニアが、Linuxの環境のある企業への転職を希望しました。しかし、その方は転職活動をするに当たって、独学でLinux関連のことを学ぼうとしませんでした。Linuxの環境は自分で作ろうと思えば簡単に作れるものにもかかわらずです。

 その方は業務が忙しいという理由で何もしなかったのです。本当にやりたいのであれば、忙しくても何とか時間はやり繰りするものです。仕事が忙しくてやれなかったというのであれば、仮に企業に教育制度があったとしても、教育制度を活用することはできないと企業は判断します。この方にはやる気があまりなく、受け身で前向きでない、会社のせいにして、できることに挑戦していない、などの理由で内定に至りませんでした。

キャリアチェンジの場合に給与にこだわり過ぎる

 転職をする場合、できれば給与も上げたいと思うのは当たり前のことです。しかしながら、その転職がキャリアチェンジになる場合、給料アップはなかなか難しいのが現実です。

 30歳でシステム営業をされていた方が、開発に携わりたいと相談にいらっしゃいました。彼の年収はインセンティブ込みで約550万円で、転職に当たっての希望は、年収500万円というものでした。

 企業は、この金額をどう判断するでしょうか。年功序列というような人事制度が崩壊しつつあるIT業界で、未経験のプログラマ希望者に年収500万円を支払おうという企業はあるでしょうか。未経験者であれば、企業は入社後にどんどん成長して伸びると期待できそうな若いやる気のある方を採用するのが一般的です。

 転職活動は自分で企業を選ぶという側面のある一方で、企業に選ばれなくては就業に至りません。そうはいっても、この方の場合、内定は出たのです。企業側は期待を込めてその方に異例の金額(かなり高い金額)を提示したのですが、本人は評価が低いといって断固拒否をされ、内定を断ったのです。

希望年収の理由に根拠がなく内定が得られない

 実際の転職では、給与アップが前提という方がほとんどです。確かにキャリアを持っている方であればアップを図ることができるでしょう。しかし、その要求に根拠がなければ、企業側にマイナスのイメージしか与えません。

 あるJavaエンジニアの方が転職を希望され、相談にいらっしゃいました。その方は28歳で年収520万円。転職する場合の希望年収は700万円。そこで、どのような根拠でアップを望まれているのかを聞いたところ、「自分の知人がそれぐらいをもらっているから」とのこと。

 確かに業種や職種によって多少の給与トレンドはありますが、給与はその方の評価によって決まるものです。「他人がいくらだから」というのは理由になりません。相手にその金額が妥当と思わせるだけの技術やアピールをして勝ち取るものなのです。事実、28歳で520万円なら標準より多い金額です。

 結局、面接でも希望年収を落とさなかった彼はすべての企業で希望年収とスキルが見合わないという理由で断わられたのでした。

 キャリアチェンジや給与アップなどを、転職希望者が実現したいというのは、重々存じ上げていますし、われわれも本気でお手伝いをしたいと考えています。しかし企業側にとって中途採用は基本的に即戦力採用を考えています。キャリアチェンジは即戦力としてすぐに企業業績に貢献できないことから、さまざまな面で転職希望者に不利な条件が提示されることが多いのです。

 給与アップもそれだけの価値を相手に感じさせなければ実現できないことが多いのです。キャリアチェンジ、給与アップは実現不可能ではありませんが、個人の主観的な判断だけではなく、われわれのようなエージェントなどの客観的な意見を踏まえて判断・決断をしていくことが重要だと思います。

著者紹介

ワークポート

岩佐猛氏

大学卒業後、テニスのインストラクターから外食産業の店舗マネージャ、IT系経営コンサルタントとして活躍。その後現職。異色の経歴を持ち、多角的な視点を基にしたキャリアコンサルティングを行っているという。



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