連載
» 2005年07月28日 00時00分 公開

プロジェクトマネジメントスキル 実践養成講座(9):丸投げは失敗の始まり――調達マネジメント(1) (1/2)

[耵岡充宏,スカイライトコンサルティング]

  前回(「第8回 できるPMの決め手は「リスクマネジメント」)は、リスクマネジメントの勘所を解説した。

 リスクマネジメントとは、問題が発生してから対処する「事後処置型」のプロジェクト運営ではなく、問題を未然に防ぐ「事前予防型」のプロジェクト運営といえる。問題が発生してから対処することは、プロジェクトに混乱を招く、あるいは、その解決に多大な労力とコストを必要とし、メンバーの疲弊もより大きいものとなる。事前予防型のプロジェクト運営はプロジェクトマネージャ1人によってもたらされるのではない。個人の経験、あるいは、気配りや機転に依存しているようでは、従来型の属人的マネジメントからの脱却は難しい。プロジェクト全体でリスクの発見とその対応策の策定に努め、可視化できる形でコントロールしていく。このことが「できるプロジェクトマネージャ」への第一歩といえよう。

 当連載では、今回から2回にわたって「調達マネジメント」を解説する。調達マネジメントは、何らかの理由により資源を外部組織から調達することであり、一般的にその資源は「ヒト」と「モノ」の2つに大別される。ここでは、読者の関心がより高いと考えられる「ヒト」の調達、つまり、「ベンダマネジメント(協力会社管理)」に焦点を当てて解説する。

高まる調達マネジメントの必要性

 開発協力会社との相次ぐトラブルの回避を主目的として、調達マネジメント改革の取り組みを進めている企業も多いことであろう。多くの企業が協力会社の選定に頭を悩ませている。どこかいい会社はないか、安心して任せられるところはないか、という声をよく聞く。発注者にとって「ベンダの見極めが困難なこと」を表しているといえよう。

 IT業界の場合、建設業界などと異なり、業界を直接規制する法律は存在しない。例えば、システム構築サービスを提供するに当たって、免許や資格は必要とされない。あるいは、構築するシステムや提供する成果物の内容、その品質を定める基準も存在しない。つまり、アウトプットの質は、協力会社または実際の参画メンバーに大きく依存することになる。

 ここが問題で、その協力会社や実際の参画メンバーが「ちゃんとやってくれる」ことを発注者が協力会社の選定段階で見極めることができれば問題ない。しかし、最終成果物の品質が見えない、あるいは、発注者のIT領域における専門知識不足などの理由から、信頼できる協力会社を見極めることは困難な場合もある。そして「付き合いが長い」「価格が安い」「何となく大丈夫そう」などの理由で選定してしまい、期待レベルの不一致や企業文化の違いなどが露見し、トラブルに見舞われてしまう。このようなプロジェクトは後を絶たない。

 ではどうすればよいのか。その勘所をいくつか紹介していくが、共通してその根底にあることは「発注者としてなすべきことを理解し実践する」ことである。いい換えれば、「丸投げ型」調達マネジメントから脱却し、発注者も積極的に関与する「パートナーシップ型」調達マネジメントの実現を目指すことが基本的な方向性である。この点をまずご理解いただきたい。

調達マネジメントとは

 PMBOKの定義を確認しておく。そこには「プロジェクト調達マネジメントとは、プロジェクト・スコープを達成する目的で、母体組織の外部から物品やサービスを取得するために必要な一連のプロセスで構成される」とある。その一連のプロセスを下表に整理する。

調達計画 調達マネジメント計画書
作業範囲記述書(SOW)
「調達マネジメント計画書」は、調達プロセスをどのようにマネジメントしていくかを決めること。例えば、契約形態をどうするか(委任/請負など)、評価基準をいつ誰が作成するか、調達スケジュールをどうするかなどである。また、「作業範囲記述書」(SOW :Statement of Work)は、外資系企業では一般的に用いられており、納入者(受注者)が実施する作業、納品する成果物などの契約範囲を記述するもの。
引き合い計画 調達文書
評価基準
ほか
「調達文書」は、さまざまな呼び名があるが、一般的にいう「RFP」(Request for Proposal:提案依頼書)のこと。
「評価基準」は、どういう基準で協力会社を選定するかを定義したもの。総合的評価で選ぶのがよいとされることが多く、代表的な評価項目の例として、ニーズの理解度/コスト(構築+運用)/技術力/マネジメント力/組織力などがある。
引き合い 提案書(の受領) 協力会社から提案書(見積書)を受領する。
発注先選定 契約 提案書を比較検討し、候補企業と内容の確認や条件交渉を行い合意に達したら、お互いの責任と義務を明文化し契約を取り交わす。
契約管理 コレスポンデンス 「コレスポンデンス」とは、あまり耳慣れないかもしれないが、要は協力会社との対応履歴のこと。例えば、パフォーマンスの改善要求や契約内容の変更など両者で発生するやりとりの記録。
契約完了 契約ファイル
ほか
「契約ファイル」は、一連の成果物、書類をひとまとめにしたもの。納品・検収が終了し、承認印(サイン)も終えた状態のプロジェクト契約書類、成果物一式のこと。
表1 PMBOK(2000 Edition)における調達マネジメント

 表1のようにPMBOKでの調達マネジメントは、6つのプロセスにより構成されている。ご覧のとおり非常に広範囲であるが、われわれが多く頭を悩ます点は主に次のポイントではないか。

  • 選定前の「RFP作成」
  • 実際の「選定」
  • 選定後の「進ちょく/品質管理」

 これらはいずれも発注者視点での課題である。読者の中には、主に受注者として日ごろ、プロジェクトに関与されている方も多いことであろう。そのような読者にお伝えしたいことは、「発注者の方でちゃんとやってください。そうでないとわれわれはできません」ということでは決してない。もし発注側の事情や経験などの理由により、支援が必要と考えられる場合は、「受注側も積極的に発注者を支援する」ということである。

 発注者を支援するとはどういうことか、そうした観点で以下のケースを考えていただければと考えている。上記の3点で失敗しないためにはどうすればよいか。それぞれの勘所を解説しよう。

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