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» 2005年07月29日 00時00分 公開

インフラ系エンジニアの求人状況は?ITエンジニアの求人動向最前線(1)

自分がしている仕事にどれほどの求人があるのか、気になったことはないだろうか。また、その動向に変化はあるのだろうか。そんなITエンジニアの求人動向を紹介する。第1回はインフラ系エンジニアの求人動向を探る。

[下玉利尚明,@IT]

通信キャリアを中心に大規模ネットワークの
エンジニアへの求人は活況が続いている

 企業のITインフラを支える重要な役割を担うインフラ系のエンジニアには、ルータやスイッチなどのネットワーク製品の知識をはじめ、サーバ、セキュリティ、データベースなど幅広いスキルが求められる。必要とされる知識・スキルが多岐にわたり、「○○の技術を極めればキャリアパスが見えてくる」といった明確な指針が示されていない中、インフラ系エンジニアはいかにして自らのキャリアを構築すべきか、市場で求められるインフラ系エンジニアとは。こうした点を、リクルートエイブリックのキャリアアドバイザー 田中宏幸氏に聞いた。

 一般的にインフラ系のエンジニアは、ネットワーク系とサーバ系とに大別される。まずは、ネットワーク系のエンジニアの求人動向について分析してみよう。田中氏によれば、ネットワークエンジニアの求人動向は大きく3分野に分けられるという。1つは、通信事業者でバックボーンを手掛けるなど「大規模なネットワーク構築に携わるエンジニア」に対する求人、もう1つがネットワーク関連製品のベンダで、「製品の評価などを行うエンジニア」、そして、そのほかに社内SEとしてLANやWANなど「ネットワーク環境を維持・管理するエンジニア」であるという。

 もちろん、それぞれの分野で求人動向もエンジニアに求められる知識やスキルも異なってくる。

 大規模なネットワーク構築に携わるエンジニアについては、「通信キャリアを中心に求人は活況」という。「携帯電話キャリアでは従来、ATMで構築していたネットワークをフルIPに変えるといった動きがあります。また、バックボーンを順次、増強していかなくてはならない状況もあって、バックボーン構築に携われるネットワークエンジニアへのニーズは高いです」

 こうした大規模なネットワークを構築できるという仕事に魅力を感じるエンジニアも多く、「人気も高い」ようだ。しかし競争は厳しい。「大規模なネットワークを構築したいというのは、多くのネットワークエンジニアがキャリアパスの方向として目指しているものです。そこで求められるのは大規模なルータやスイッチを扱った経験があるかどうか……。広域EthernetやIP-VPNの構築でも中規模のルータやスイッチの経験は不可欠です」とのことだ。

 しかし、大規模なルータやスイッチに触れる機会のないエンジニアはどうしたらよいのだろうか。そういったエンジニアは多いはずだ。それについて田中氏は有意義なアドバイスをしてくれた。「秋葉原の中古ショップやインターネットオークションなどでは、業務用のルータやスイッチが売りに出されています。それらを購入して自宅でネットワークを構築してみる。大規模ネットワークに触れる機会のないエンジニアほど『少しでも目標に向かっていこう』という努力が必要です。27歳ぐらいまでの若手エンジニアであれば、その努力が採用側に意欲として伝わり、ネットワークの設計・構築ができるポジションへのキャリアアップも可能となるのです」という。

ポストセールスエンジニアでの経験は
ネットワークエンジニアのキャリア構築に有意義

 一方、ネットワーク関連製品ベンダでのエンジニアの求人動向も堅調なようだ。ただし、大手の外資系ネットワーク関連製品ベンダ、国内ベンダなど多くの企業は「優秀な人材であれば採用したい」というスタンスで、それだけに採用のハードルも「少しずつ高くなってきている」という。募集職種では「ポストセールスエンジニア」が多い。これは外資系・国内ベンダともに「いかに手厚いアフターケアを提供するか」に注力しているためだ。ところがネットワークエンジニアを目指す人たちの多くは、「どうせやるなら大規模ネットワークの設計や構築に携わりたい」と考え、ポストセールスなどの「運用・保守」をあまりやりたがらない傾向にあるようだ。

 そんな考え方に対して、田中氏はポストセールスエンジニアの仕事の魅力、そこで経験できることの大きさを次のように指摘する。「マルチベンダ化が進み、ある特定の1社の製品のみでネットワークが構成されることはなくなりましたが、幅広い技術スキルを身に付けていくうえで、ポストセールスエンジニアとして、1つのメーカーあるいは1つの製品に対して技術サポートを行うことで、軸となる技術力を身に付けることが重要でしょう。それを足掛かりに、ネットワークを構成するすべての製品、サーバやデータベース、セキュリティまでの幅広い知識を身に付けることができます。

 ポストセールスエンジニアとしてネットワークの不具合を発見し解決するには、ネットワークを構成するすべての製品をはじめ、時にはサーバやデータベース、セキュリティまでを含めた幅広い知識が要求されます」

 さらに「実際にネットワークの障害が発生している現場にエンジニアとして参画でき、『何が原因なのか』『有効なソリューションは何か』を探り、解決策を提供することは、その後にネットワークの設計・構築のエンジニアや、ITILに基づく運用設計コンサルタントを目指す人にとって貴重な経験になる」ともいう。

 ネットワークエンジニアに限らず、ITエンジニアは自身のキャリアや経験を「中抜き」して、一足飛びに目指すポジションに到達することはできない。ネットワークの設計・構築を目指すエンジニアも、自分自身のキャリアパスの1つとしてポストセールスエンジニアを考えてみるのもいいかもしれない。ニーズがあるにもかかわらず、「やりたい」と手を上げるITエンジニアは意外に少ない。狙い目かもしれない。

 社内SEとしてネットワークの構築や維持・管理に携わるエンジニアへの求人も高まりつつある。これら「社内SEとしてのネットワークエンジニア」には、実に幅広い知識やスキル、そして経験が求められている。社内SEというと比較的「のんびり」と仕事ができるように思う人もいるかもしれないが、要求されるレベルは高い。

 「ゲートウェイの構成を確認したり、社内LANや拠点間を結ぶWANを構築したり業務の内容は多岐にわたります。企業が業務上扱うデータ量が膨大になり、それに応じてサーバとネットワークの増強が不可欠になる。ネットワークだけでなくサーバの知識やスキルも求められます」。さらに「データベースとの連携やストレージの構成などもまとめて任されるケースが多い」という。社内の「ネットワークエンジニア」というよりも、社内の「ミニSIer(システムインテグレータ)」としての幅広い知識、スキル、経験が求められるようだ。

企業のITインフラの根幹を支える
サーバエンジニアへの求人も堅調

 ネットワークエンジニアと同様に、サーバエンジニアに対する求人も堅調だ。「以前は『サーバエンジニアといえばUNIX』でしたが、いまではWindows、UNIX、Linuxのどのエンジニアにもニーズがあります」。田中氏によれば、「信頼性を何より重視する金融系でもWindowsでサーバを構築しようという動きがある」というほどにサーバの基本ソフトは多様化し、それだけサーバエンジニアへのニーズも複雑化しているという。

 「企業が扱う情報量が膨大になり、人気の高いECサイトではページビューが爆発的に伸びている……。サーバへの負荷が増大する中、『万が一、サーバが落ちたら』『ハッキングされて重要な情報が盗まれたら』、企業の信用問題に発展します。企業としてはサーバは絶対に落とせないし、ハッキングされることも許されない。

 エンジニアにはサーバの知識は大前提で、プラスアルファとしてセキュリティなどの知識とスキルが求められているのです」

 そのほかにも、増大するデータの負荷分散、クラスタリングのスキルやOSのカーネルに関連した知識などハイレベルな知識とスキルを持った人材へのニーズもある。

 しかし、一般的にサーバエンジニアは、エンジニアの中では「新しい職種」であるようだ。そのため求人などのニーズは高まりつつある一方で、人材は不足している。業務アプリケーション開発のエンジニアなどからスキルチェンジでサーバエンジニアになることも可能である。「年齢的に27歳くらいまでで、例えば自宅にLinuxサーバを構築し、しかもそのサーバに『自分でハッキングまでしてセキュリティの勉強もしている』といった意欲のあるエンジニアであれば、十分にスキルチェンジは可能」という。

 企業のITインフラの根幹を握る重要なポジションであるサーバエンジニアは、今後、さらに重要性を増し、脚光を浴びるかもしれない。ただし、スキルチェンジを成功させるには、何よりも「本人の意欲」が大切であることを忘れてはならない。

インフラ系エンジニアの求人動向は数カ月で激変!
的確な情報収集こそがキャリアアップを成功させる

 さて、ここまでネットワークエンジニアとサーバエンジニアの求人動向について解説をしてきた。総括するとどちらの職種も「足元の状況としては堅調」であるようだ。時期的にも夏場を迎え、10月以降の年度下期の採用が動きだすタイミングでもある。インフラ系エンジニアとして新たなキャリアパスを歩みだすにはいい時期かもしれない。

 そこで、田中氏にインフラ系エンジニアのキャリアパス構築において、注意すべきポイントについて伺ってみた。

 田中氏によれば「ネットワーク、サーバのどちらのエンジニアも今後は、『技術やスキルの融合が加速する』ことを頭に入れておいてほしい」という。例えば3年後、5年後を想像したとき、ネットワークの帯域はますます拡大し通信速度も速まるだろう。いかに膨大な量の情報を安定的に高速にネットワークを介してやりとりできるようにするか。簡潔にいい切ってしまえば、それこそがインフラ系のエンジニアに求められるスキルとなる。ネットワークやサーバの専門知識はもちろんのこと、データベースもセキュリティの知識も不可欠になる。

 さらに「インフラ系エンジニアは『1つのスキルを極める』タイプではキャリアアップが難しい」とのことだ。例えば特定のルータやスイッチに関する知識とスキルを持っていても、その製品が主流でなくなった瞬間に知識もスキルも市場価値を失ってしまう。サーバエンジニアも同じである。

 例えば「特定のルータ、スイッチでの保守・運用をずっと経験してきたのであれば、次はマルチベンダ環境でのネットワーク構築を目指すというように、次々に新しいスキル、知識を吸収していくことが必要」なのだ。しかし、エンジニアがいくら希望しても、その希望どおりに新しいスキルや知識を吸収できる環境を手に入れることは難しい。そこで「転職」という選択肢が考えられる。

 「インフラ系エンジニアの求人動向は、アプリケーション開発のエンジニアと比べると変動が激しい。数カ月単位で求人の動向、採用側のハードルが変化します。転職にはその情報、動向を正しく把握することが大切」という。例えば「PBXの経験しかない20代後半のエンジニアが、数カ月後にVoIPのエンジニアとして採用されました。採用企業側のニーズもハードルも変わるのです」。キャリアアップには的確な情報の入手が不可欠だが、その意味で人材紹介会社を利用するメリットは大きいようだ。「L3スイッチの経験のあるエンジニアに『次はロードバランサーを経験できる企業はどうですか』など具体的にキャリアやスキルをアップできる環境を提案できます。現在のキャリアプラスアルファになる環境を的確に紹介できます」という。

 インフラ系のエンジニアは、アプリケーション開発エンジニアのように「プログラマからSE、そしてリーダー、プロジェクトマネージャ」といった明確なキャリアパスが示されていないのが実情である。それだけに自分自身でキャリアパスを意識しながら、しっかりと歩みを進めていかなければ「気が付いたときには30代」で「どうキャリアをアップすべきか分からない」状況になってしまう可能性もある。田中氏のアドバイスを踏まえつつ、自分自身のキャリア構築について、いま一度、真剣に悩んでみてはいかがだろうか。


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