連載
» 2005年08月11日 00時00分 公開

転職失敗・成功の分かれ道(9):退職活動の成否は第一声で決まる

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[藤田孝弘,アデコ]

最初の言葉が重要

 希望どおりの転職が決まり、ほっと一息。そうなると気になるのは「退職活動」ですよね。お世話になった先輩や苦楽を共にした同僚、面倒を見ていた後輩などとの別れがやってきます。「円満に退社したい」というのは共通の願いだと思いますが、退職活動は、最初の一声を間違ってしまうと泥沼にはまってしまうケースがあります。「退職活動は第一声で決まる」。この言葉をぜひ頭の片隅にでも入れておいてください。

 「自分の胸の中に『決意』が固まるまでは誰にもいってはいけません」

 転職活動をするということは、多かれ少なかれ、いまの会社から心が離れてしまっている場合が多いですね。仲が良ければ良いほど、頑張っている同僚と一緒に仕事をするのもつらくなってきます。そうなると、一刻も早く「辞める意思」を伝えたくなるのが人情です。「王様の耳はロバの耳」という話を知っていますか。誰にも秘密を話さないことは結構つらいことです。ですが、ここはじっとこらえてください。「どんなに同僚に引き留められても、どんなに上司に説得されても、自分の夢を実現するためには、この会社を退職して次の会社に転職するんだ」という決意が固まらない段階で話をしてしまうと、それは「相談」になってしまいます。

 あなたが逆の立場だったらどうしますか。どんなことをしても引き留めたいと思いませんか。将来へ賭けるあなたの固い決意さえあれば、きっと周囲も納得してくれるはずですし、応援もしてくれるはずですが、悩んでいると思われると、思いとどまるように説得したくなるのが人情です。この状態を最初の段階でつくってしまうと、「説得」がいつまでも続いてしまうことになります。そしてもう1つ、誰にもいわない方が良い理由があるのです。

「相談=退職願」ではなく「報告=退職届」との意思表示

 決意が固まれば、いよいよ退職の意思表示です。ほとんどの方は会社組織に属しているわけですから、その組織に合わせた順番で意思表示をする必要があります。直接会ったうえで、直属の上司に口頭で伝えることが円満退社の秘けつです。このタイミングではっきりと、退職の意思が本気であり、すでに悩んだうえでの決定事項であることを伝えなければなりません。相談ではなくて報告としてです。そのときには必ず退職する日時を具体的に伝えてください。このタイミングではっきりと伝えないと、引き延ばしてほしいという依頼をされるケースが増えます。

 こうした口頭での説明の後に退職届を正式に出すのが礼儀です。退職届にも退職日は明記してください。いきなり退職願を突きつけるのは、上司の態度を頑なにするだけですので、絶対に避けてください。

 書類でも「相談」ではなく「報告」であることを表すために、「退職願」ではなく「退職届」とした方がよいですね。退職活動が円満に進むかどうかは、直属の上司の協力が得られるかどうかでかなり違ってきます。

 同僚やさらに上の上司などから漏れ聞こえてしまったら、上司の面目が丸つぶれになってしまいますし、管理能力が問われてしまいます。絶対に避けなければならない状況ですので、前述したように、正式な意思表示を直属の上司にするまでは、誰にも話をしない方がよいのです。信頼していた同僚や先輩が上司に報告してしまったために、退職時にもめることになったケースは数多くあります。「王様の耳はロバの耳」なんです。

転職先の会社名はいわないのが賢明

 広いようで狭いこの業界。転職先を聞かれてもいわない方が賢明でしょう。例えば恋人から別れを告げられたとき、「ほかに好きな人ができたの」といわれた場合と、「あなたも知っているA君のことが好きになったの」といわれた場合のショックは、どちらが大きいでしょうか。前者ではまだ平静を保てるかもしれません。後者のようにいわれた場合、平静を保つことができますか。

 異業界への転職であれば別ですが、同業界への転職になると、転職先の会社を上司が知っているケースは圧倒的に多いでしょう。転職する会社名を上司が聞いた場合、こういうはずです。「あんな会社に行かない方がいい。なぜなら……」と。それは「あんな奴と付き合わない方がいい。なぜなら……」といいたくなる心境と同じです。具体的に知らない方が、感情を刺激することなく話はスムーズに進みます。

 上司が「退職届」を受理してくれない時には法律的にも、口頭で辞意を伝えただけで効力を発揮しますので安心してください。

受け取ってくれない場合の対処法

 どうしても受け取ってくれない場合は、最終手段として、上司に対して「このままであれば、人事部に直接退職届を出さざるを得ないのですが、よろしいでしょうか」と告げてください。直接退職届が人事に届いてしまうと、管理能力などを問われてしまいますので、受け取らざるを得ません。

 それでも受け取ってくれなかった場合は、仕方がありません。人事部に届けてください。それでも駄目な場合は、労働基準監督署に相談するか、内容証明付き郵便で送る方法があります。そのようにもめた場合、口頭で辞意を伝えた日と、実際に退職届を出す日の間が空いてしまい、退職予定日に迫ってしまうケースが発生してしまいます。その際は「一身上〜」という文の前に、「××年○月△日に口頭でもお伝えしておりますが」といったような内容を入れれば、退職予定日と提出日が接近していても問題になることはありません。口頭でも効力があるということは、こういう場面でも使えますので、受け取ってもらえないことで焦る必要はありません

 上記の進め方さえ守っていただければ、転職活動で苦労することはないと思いますが、時には想像もつかないような問題が発生する可能性はあります。そんなときに頼りになるのが、いままでお付き合いしてきた人材紹介会社のコンサルタントです。幾多の修羅場をくぐってきたプロですので、相談してみてください。きっとお役に立つと思います。

著者紹介

アデコ 藤田 孝弘

人事系コンサルティング会社にて人事採用と教育・人事制度関連のコンサルティングに従事。その後、IT専門の人材サーチ会社にてITコンサルタントやSEを中心とした人材のキャリアコンサルタントを経験、現職に至る。これまで、IT業界を中心に2000名以上の転職支援を行った実績あり。現在、@ITジョブエージェントのパートナーとしても活躍中。



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