連載
» 2005年12月28日 00時00分 公開

一歩上いく英文履歴書の書き方、使い方(11):英文履歴書の選考をパスしたら

英文履歴書をより魅力的に、ほかの人と差別化して書くにはどうしたらいいのか。そんな英文履歴書の書き方、使い方を解説しよう。

[福島由美,@IT]

書類選考をパスしたら

 わたしの連載は今回で最終回です。そこで、めでたく書類選考をパスして面接に進んだ場合の注意を少し書いておこうと思います。

 実は、英文履歴書の提出を要求されても、面接では最後まで英語をしゃべる機会がないまま採用になることも結構あります。

 応募者の英語力をそれほど重要視していない日本人の面接官が、プレッシャーを与えるためだけに、突然英語でのプレゼンテーションを要求してくることもあります。英語力自慢の日本人面接官が、提出した書類の英語の不備を長々と指摘してくることもまれにあります。このような不測の事態に直面した場合には、頭をフルに「日本人の常識」モードにして対処するしかありません。

 さてここからは、面接の相手が外国人の場合の注意点です。英語の面接では、「相手の目を見て、自信に満ちた態度で、積極的に自分をアピールせよ」とよくいわれます。このことは大体においては正しいといえます。控え目な態度を「自信のなさ」と見られて、面接で落ちた人は多いからです。

 しかし、「これが国際ビジネスのマナー」と信じているものをやりすぎたり、中途半端にマネをしたりして、逆効果になってしまっている人もいます。これは何も採用面接のときばかりではなく、外国人とのコミュニケーション一般において、しばしば見られることです。

汝握手を侮るなかれ

 日本に出張してきた欧米人ビジネスマンが、「日本ではお辞儀が礼儀だ」とばかりに、日本人に向かってぴょこんと頭を下げることがあります。日本人でもきれいなお辞儀は難しいのですから、見よう見まねでやっている彼らのお辞儀は、かなりぎこちなく危なっかしいものです。しかし大抵はほほ笑ましいものです。

 同じようなことが日本人の握手についてもいえます。しかしぎこちない握手はぎこちないお辞儀とは異なり、あまりほほ笑ましくはならないところが問題です。

 ビジネスにおいて握手が与えるインパクトは、欧米ではかなり重要視されています。例えばヘッドハンターは、最初の握手を相手の人格を見極める材料に使います。彼らが考えるよい握手とは、乾いた手で力強く(ただし強すぎてもだめです)、比較的短い時間、相手の目をしっかり見ながら手を握ることです。

 ところがほとんどの日本人の握手は握力が弱く、時間が長すぎるのです。これは欧米人のお辞儀がそうであるように、日本人が握手の動作の表面だけをまねて、単なる「手を握る行為」をしてしまっているからです。

 一般的に、手の握り方が弱いと「何かを隠している」という印象を持たれます。また長々と手を握っていると、旧友に再会した場合でもない限り、何かを必死にお願いしているかのような印象を与えてしまいます。

 もう1つの問題点は、日本人の多くが握手をしながらお辞儀をすることです。これを「日本流の握手」として、「外国人のお辞儀」のように好意的に解釈してくれる人もいますが、少なくない外国人にとって卑屈な動作に見えるようです。特に握手をしながらお辞儀によって視線が床に移動してしまうと、「視線を避けた」と解釈され、誤解を受ける確率は高くなります。

汝相手を見つめすぎるなかれ

 握手同様に、アイコンタクトにも熟練が必要です。

 「日本人には相手の目を見て話す習慣がない。これでは相手から信頼してもらえない。英語では、相手の目を見て話すんだぞ」。これはアイコンタクトについてよくいわれることです。実際、目を見て話さなかったための失敗事例は、さまざまな状況で聞かれます。

 しかし一方で、この習慣のない人がアイコンタクトを取ろうと努力すると、往々にして相手をじっと見つめすぎ、かえって不快な思いをさせてしまうという事実が欧米人からしばしば指摘されています。アイコンタクトは相手の目を見る(look)ことですが、日本人が必死にアイコンタクトを取ろうとすると、凝視する(stare)ことになってしまいがちです。

 参考までに、アイコンタクトの習慣のない文化圏の人向けの、アイコンタクトのエクササイズをご紹介しましょう。英語が母国語ではない人向けの英語のスピーチ・コミュニケーションの本に書いてあったものです。

 2人1組でとりとめのないことを話し合いながら、視線を4秒ごとに、相手の左目→右目→顔全体→鼻→あご→額→(元に戻って)左目→右目……とずらしていきます。

 こうすれば、相手に対して「凝視する」という印象は与えずに「目を背けない」印象を与えることができます。練習相手がいなければ、1人で鏡を見ながらやってもよいでしょう。

ファーストネーム? ラストネーム?

 「英語では、相手を必ずファーストネームで呼ぶもの」と漠然と考えている日本人が結構いるようです。しかし、そうではありません。

 米国のビジネスシーンでは、初対面の比較的早い時期に「Please call me John.」などと、自分をファーストネームやニックネームで呼ぶようにいわれます。しかし、申し出がある前に勝手に相手をファーストネームで呼ぶことは、マナー違反だと考えられています。

 米国以外の国ではもっと慎重です。数回会った後で、初めて相手からファーストネームで呼ぶようにいわれることもあります。ですから、採用面接などのわずかな時間の中では、最初から最後までお互いを敬称で呼び続けることも多いのです。

 英語のコミュニケーションでは、相手から「○○と呼んでほしい」と要請されたら、以降は必ずそう呼ぶべきだとされています。しかし日本人のメンタリティとして、例えば20代の転職希望者が50代のエグゼクティブを面接中にファーストネームで呼ぶのは、なかなか難しいようです。そのため「Johnと呼んでほしい」といわれても、つい「Mr. Smith」とラストネームで呼んでしまいがちです。

 「ジョンと呼んでほしいといわれたのに、ミスター・スミスと呼んでしまった。しかし丁寧な呼び方をしたのだから失礼にはならないだろう」と思うと、さにあらず。「ファーストネームで呼んでほしいといったのにあえてラストネームで呼び続けるとは、何らかの意図があるに違いない」との誤解を相手に与える可能性があります。

日本とは異なる敬称の用法

 また、英語の自己紹介では「I'm Dr. Alex Cross.」「I'm Mrs. Robinson.」のように、自分の名前に「Dr(.)」「Miss」「Mrs(.)」「Ms(.)」「Mr(.)」の敬称を付けて名乗ることが可能です。これは英語の敬称と日本語の敬称の用法の違いです。

 女性が自分の名前に敬称を付けて自己紹介をしたときは、どの敬称を使ったかに注意してください。自己紹介で「I'm Mrs. Robinson.」と名乗られたら、以後その女性への敬称は「Mrs.」で通しましょう。

 英語での女性の一般的な敬称には、古くからある「Miss」(未婚女性)「Mrs(.)」(既婚女性)のほか、「未婚・既婚にかかわらず使用できるように」と後からつくった「Ms(.)」の3種類があります。「Ms(.)」は米国のビジネスシーンで広く受け入れられていますし、国連でも正式に採用されています。

 しかし、女性の敬称として「Ms(.)」を使えばどのような場合でも大丈夫というわけではありません。「Ms(.)」で呼ばれるのを嫌う女性は、世界中にかなりいます。理由の1つとして、「I'm Ms(.) Robinson.」と自己紹介すると、「バリバリの男女同権主義者である」と受け取られ、マイナスの印象を与えてしまうということがあるようです。相手が「I'm Mrs. Robinson.」と自己紹介してきた場合は、「(わたしを「Ms(.)」で呼ばず)「Mrs.」を使って呼んでください」ともいっているわけです。

 上記の注意点以外にも、日本人が外国人とのコミュニケーションにおいて尊大になりすぎたり、直接的にものをいいすぎたりして不興を買うことがあるとしばしば指摘されています。これは初心者ばかりではなく、国際ビジネスの経験が豊富な年配の人にも見られます。謙虚すぎた場合の失敗は本人も自覚できる場合が多いのですが、やりすぎた場合には「堂々と自分の主張をいった」と成功を信じて疑わないことがあるため、よけいにやっかいです。

 最終的には、洋の東西を問わず「どんな態度を取られたら他人は不快に思うか」という人としての常識を働かせることが必要になります。

英文履歴書ワンポイント解説

■サンキューレター

 最終回に当たる今回は面接について書きましたが、外国人と英語での面接が終わった後にはやらなければならないことがあります。フォローアップのために、サンキューレター(Thank-you letter)を書いて出すことです。これは面接に対するお礼状であり、通常は面接後24時間以内に書いて出すべきものとされています。

 日本企業へ就職・転職の活動をする際のお礼状の評価は、いまだ定まっていません。面接の後にお礼状を書く人はいますし、お礼状の送付を勧めるキャリアコンサルタントもいます。しかし「出す必要はない」と考えたり、その効果を疑問視したりする人もかなりいます。「お礼状をもらって気分を害する人はいない」との考え方や「お礼状が決め手になって採用された」という例がある一方、「後から点数稼ぎをしようとして、お礼状で自分をアピールするという姑息な手段をとった」と受け取られてしまった人もいると聞いています。

 一方、英語圏、特に米国においては、面接とサンキューレターはセットになっていると考えられています。実際には面接を受けた応募者全員が書いているわけではないのですが、「サンキューレターは面接を美しく締めくくるためのもの」と感じている人が多いようです。

 サンキューレターの文例を見るために、前回(連載第10回「『添え状』と侮るなかれ、カバーレター」)と同様に、Microsoft Wordのテンプレートを使ってみましょう。「Interview Letters and Tools」の中にサンキューレターのテンプレートがいくつかあります。

Microsoft Office Online Templates: Interview Letters and Tools

 サンキューレターに盛り込む情報は、通常は以下の3つです。

1.最初のパラグラフで、インタビューの時間を割いてくれた相手に対し感謝の言葉を述べる

 ここに自分が何の職種に応募したかも書いておきましょう。24時間以内に書けずに遅れて出す場合には、何日に面接を受けたかも書いておきましょう。

2.中間部で、入社についての自分の意欲を述べる

 働きたいという意思を述べます。漠然と「ぜひ入社したい」と書くだけではなく、面接中に出た話題などに絡めて意欲を述べると、より本気度をアピールできます。

 この部分では、自分の知識・スキル・経験などをあらためて強調したり、面接でうまくアピールしきれなかった部分を追加することもできます。とはいえやりすぎはいけません。長々と書かず、サンキューレター全体を用紙1枚以内に収めてください。

3.最後のパラグラフで、もう一度感謝の言葉を述べるとともに、連絡を待っていることを伝えて相手のアクションを促す

 サンキューレターの送付方法は、手紙と電子メールのどちらでもよいとされています。ただし選考の段階で電子メールが使われていない場合には、手紙で出した方がよいでしょう。

 文体は、手紙であっても電子メールであっても、一貫してプロフェッショナルな姿勢を崩さないようにします。「すでに面接で会っているのだから、カバーレターよりもややくだけた文体になってもよい」という考え方もありますが、少なくとも電子メールの顔文字(英語では「smiley」や「emoticon」)を使ってはいけません。

 ところでサンキューレターは、どの程度効果があるものなのでしょうか。

 履歴書に添付するカバーレターと同様、サンキューレターも単体ではほとんど威力を発揮しません。しかし、次のステップへの候補者の中にあなたが入っていて、ほかにも甲乙つけがたい候補者が複数おり、誰を選ぼうか決めかねている場合には、サンキューレターが最後の一押しになってくれる可能性があります。

 以上の説明は、面接後に応募者がまだ入社に対する意欲を持っている場合についてです。しかし、面接の場は企業が応募者を選んでいると同時に、応募者が本当にこの企業で働きたいのかどうかを見極める場でもあります。当然ながら、面接後に応募者側から「この会社は断わろう」と決めることもあります。

 このような場合にも、面接に時間を割いてくれたことを感謝し、面接が有意義であったことを述べつつ、お断りする意味でのサンキューレターを書いておきましょう。

 先に述べたWordのテンプレート欄のページでは、

Thank you for interview with withdrawal of applicationWithdrawal from consideration for open position

の2つが、このお断りのサンキューレターに当たります。


筆者プロフィール

福島由美

外資系メーカー、会議通訳、再就職支援会社勤務などを経て、現在は某大学で非常勤講師としてビジネスコミュニケーション科目群を担当。異文化ビジネスコンサルタントとしても活動中。著書に『異端パワー?「個の市場価値」を活かす組織革新「新しい経営」シリーズ』(共著、日本経済新聞社)がある。


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