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» 2006年03月08日 00時00分 公開

転職失敗・成功の分かれ道(15):年齢とスキルのギャップは恐ろしい

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[山本直治,キャリアコンサルタント]

手も足も出せない不採用理由

 人材紹介会社経由で求人企業に応募して書類選考や面接で不採用となったときは、人材紹介会社が求人企業からその理由を聞き取り、応募者に伝えるというのが一般的です。その際は、次につなげるための改善点・アドバイスも併せてお伝えすることは当然です。ただ、同じ不採用理由でも、前向きに伝えられるものと、そうでないものがあります。中でも以下の理由は、次に向けた立て直しがしにくく、お伝えする際にいつもチクリと胸に棘(とげ)が刺さるものです。

 「○歳でXXしか経験がないのは厳しい。せめてあと○歳若ければ……」

 企業への応募に当たっては、人材紹介会社が事前に求人要件を確認したうえで本人に決めていただいているので、(求人要件との関係で)少々無理をして応募した場合には、自分でも難しさは薄々感じていらっしゃるとは思うのです。が、時計の針を戻すことはできません。それ故に、上記のような理由を伝えるのはつらいものです。

 通常、こうした理由で不採用になってしまうケースは、書類選考を通過しない場合がほとんどです。ですが面接後に、その理由を求人企業から伺うこともあります。

 そういう場合は、そもそも面接に進めるだけありがたい話、つまり先方(求人企業)としては、もともと採用は厳しいと思うけれど、人物面も含めて総合評価しようと会ってくれたところ、「やっぱり厳しいので、ゴメンナサイ」ということなのでしょう。

 ただし応募者としては、「それなら最初から書類で落としてくれればいいのに」という気持ちを持つかもしれません。いずれにせよ、こういった理由が示されたとき、私はいつも同じことを考えます。これはいったい誰が悪いのだろうか、と。

歳を取ってしまうとは

 結局のところ、こういった不採用理由を額面どおり受け取ると、年齢とスキル(やキャリア)がマッチしていない、ということです。1人ひとりのレベルで見れば「転職する気があったのなら、もっと早く動いておけばよかったのに」ということになるのでしょう。しかし、別のシビアな見方をすれば、「ここ○年間は、年齢相応のスキルを積めなかった(積ませてもらえなかった)」ともいえるかもしれません。

 求人企業が提示する求人要件の中で、ITSS(ITスキル標準)を軸とした記載を見ることはまだあまりありませんが、人材紹介会社に属して日々、何百何千もの求人情報に身を浸していると、以下のような「中途採用において求められるスキル(キャリア)標準」的なものが存在することは見えてきます。

例1:○歳までには(サブ)リーダー経験を積んでいてほしい
例2:○歳までにはプログラマ(コーディング担当)からSE(設計担当)になっていてほしい
例3:○歳までには、XXぐらいの規模のシステム構築の経験を積んでいてほしい

 一方で、IT業界に身を置くエンジニア1人ひとりの状況(職務経歴)はさまざまです。身を置く会社、案件(インダストリー、ソリューション、○次請け、規模)、フェイズ(上流・下流)、役職(マネージャ、リーダー)、立場(正社員、契約、派遣、請負)などによっても異なるでしょう。転職を希望する全員が、中途採用を行っている企業が求めるスキル(キャリア)を必ずしも持っているわけではないのです。

ギャップへの気付き

 皆さん1人ひとり、将来に向けての夢(目標)や、それにつながるキャリアパスをイメージされているかと思います。オブジェクト指向のシステム設計、さらには業務コンサルタントをしたい、システム監査をやりたい、金融系のPMをやりたい、基盤構築エンジニアになりたい、などなど。

 ゴールは、人によってさまざまです。当然キャリアパスも人それぞれです。問題は、その方の現在(これまで)の仕事が、その目標に向けて必要・十分なキャリアパスになっているかどうかです。

 コーディング→詳細設計→基本設計→要件定義→業務コンサルタントというゴールを目指す人が、何年たってもコーディングだけしかやらせてもらえない環境に身を置き続ける。あるいは、本当はWeb系アプリケーション開発をやりたい人が、基盤系のサポート、クライアントPCのヘルプデスクなど、連続性のない業務を転々としている……。

 キャリアをマラソンに例えれば、競技場を一斉にスタートしたのに、正規のコースから外れて道に迷ってしまったり、1時間たっても競技場をぐるぐる何周もして、一向に外に出られないというようなものです。

 こういった状況に置かれている方は、「木を見て森を見ず」の状況にあるのでしょうか。そういう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私がお会いしたITエンジニアの方々の多くは、そうではありませんでした。皆さん、ご自分の現在の仕事がゴールに近づいていないことは分かっていたのです。でも、自分では動きだせなかったのです。それはなぜでしょうか。

 いまの仕事に満足していたから。そうでもありません。分かってはいたけど忙しさにかまけて、考える余裕がなかった。何となく踏み切れなかった。具体的にどう動けばいいか分からないまま時間がたってしまった。そんなことをおっしゃる方が多いのです。

 そんな彼らに欠けていたのは、まさに「きっかけ」でした。

偶然の「きっかけ」がもたらした転職活動成功例

 私は現在、スカウト型の人材紹介会社に在籍しています。このタイプの人材紹介会社は、転職するかどうか分からない方にこちらから声を掛けて、お話しするうちに転職する気を持つに至った方をサポートしていきます。

 こうした点が、自らの意思で登録するスタイルの人材紹介会社とは本質的に違うところです。このようなスカウトをしていて強く感じるのが、自分のキャリアプランと現状の不一致に気付いていたのに、動けなかった方(潜在的転職希望者層)が意外に多いということです。

 もちろん、われわれコンサルタントが偶然スカウトして、転職できた方はラッキーです。

  • 派遣社員として組み込み系ソフトの開発(下流工程)、リーダー経験なし(31歳)→上流工程、リーダーへのキャリアアップが望める東証一部上場企業の組み込みエンジニアに内定
  • 派遣社員として社内サーバサポート、クライアントのヘルプデスクの経験のみ(30歳)→もともとやりたかったWeb系アプリケーション開発職に内定

 上記の方々は、人材紹介会社への登録の経験もなかったのですが、とある接点から私が偶然1本の電話をかけたことがきっかけで転職活動に入りました。冒頭に記した手厳しい不採用通知を受けたこともありますが、何とか踏みとどまり、内定を得るに至ったのです。ただ、彼らも私が電話していなければ、現状を追認し、転職を考えることもなかったかもしれません。

手遅れになる前に

 IT業界には、こうしたきっかけをつかめない方が比較的多数いらっしゃるのではないかと私は考えています。しかし、さまざまな転職サイトなどへの登録など、何かのサインを出していただかなければ、声の掛けようもありません。

 転職を考えてはいたけれど、きっかけがつかめなかった人に対して、背中をポンと叩くのが、(特にスカウト型の)人材コンサルタントの役割だと考えています。それで転職するかしないは自由です。スキルと年齢のギャップに気付いていようといまいと、皆さんぜひ自分のキャリアを考える時間は持っていただきたいと思います。忙しすぎてその時間すらないという方は、そのこと自体に問題意識を持ってもよいのではないでしょうか。

 登録したり、コンサルタントと会うと転職を前提とするのではという考えは、「お店で店員に商品の質問すると買わなきゃいけないみたいで嫌」というのと似ています。そんな発想は捨てていただいて結構です。手遅れになる前に(手遅れでないことを確認するために)、一度、人材コンサルタントとお話ししてみることをお勧めします。

著者紹介

山本直治

中央官庁の国家公務員として国家規模の技術開発案件を経験後、2005年に人材紹介会社のキャリアコンサルタントに転身。国家公務員から人材紹介会社への転職を決断したリスクテイカーとしての経験を軸に、マクロ視点(経済/業界)とミクロ視点(企業/個人)を使い分けながら、転職支援コンサルティングを行っている。



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