連載
» 2006年04月12日 00時00分 公開

退職活動やってはいけないこんなこと(6):辞めるならお金返してね (1/2)

転職を志し、選考過程を経て内定を獲得した後は、現在勤めている会社を円満に退職しなければならない。それが「退職活動」だ。本連載では、毎回退職活動にまつわる危険な事例を取り上げて解説する。連載内容を活用してトラブルを回避し、円満退社を目指してほしい。転職に対する不安を少しでも減らすことができればと思う。

[福間啓文,アデコ]

 転職活動の仕上げともいえる「退職活動」。この退職活動にまつわる事例を紹介してきた本連載も最終回を迎えました。今回は、こんな目には遭いたくない、とても信じられない事例についてお話しします。

高嶋さんの希望

 高嶋さん(仮名・32歳)は、大手システムインテグレータ(SIer)の下請けであるシステム開発会社(約30人規模)のプロジェクトに参加していました。彼は大手ERPパッケージベンダの認定資格を社内で唯一保持しているという強みを持ち、ERPパッケージ導入コンサルタントとして高く評価されている人材でした。

 高嶋さんは長年この会社で頑張っていましたが、現状に対する不満があり、自分のキャリアプランについても考えた結果、私の所属する人材紹介会社を訪ねたのです。

 彼が私に話した今後の希望は、次の3つのようなものでした。

  • より大規模な導入プロジェクトに参加したい
  • より上流の工程からプロジェクトに参加できる、1次請けのSIerに転職してキャリアアップを図りたい
  • 待遇面の改善、年収アップを実現したい

 これらの希望と高嶋さんのこれまでのキャリアを考え、私は大手ERPパッケージベンダのパートナーであるSIerを提案し、実際に複数の企業を紹介しました。

 高いスキルを持ち、人柄も申し分のない高嶋さんは、面接の結果どの企業からも評価されました。最終的にはERPパッケージの導入実績が豊富で、業界でも評価の高いSIerの内定を獲得しました。

 ここまでの転職活動は非常に順調に進み、高嶋さんもとても喜んでいました。しかし、ここからが問題だったのです。高嶋さんも私も「え……?!」と絶句してしまうような、想定外の事態が起こってしまいました。

「辞めるのならば……」

 高嶋さんは参加しているプロジェクトの状況を見て、引き継ぎを入れても1カ月後には問題なく退職できるものと判断しました。そこで内定先の企業には、1カ月後に入社できると連絡しました。同時に現在の直属の上司である課長に退職の意思を伝えました。

 課長は非常にびっくりしたようでした。「なぜ辞めるんだ?」「どこに転職するんだ?」と執拗(しつよう)に尋ねられ、高嶋さんはつい内定先の社名をいってしまいました。

 課長からは、自分では判断できないので持ち帰りにしたいという話があり、後日人事役員との話し合いの場が設けられました。

 そこでは役員が激怒し、信じられないようなことをいい出したのです。

「会社は君のベンダ認定資格取得に多額の金を掛けた。辞めるのならば全額返せ」

「全額返せないなら退職は認めない」

「いうことを聞かなければ内定先企業に乗り込み、内定取り消しを要求する」

 高嶋さんは想像もできないような要求をされたことに驚き、役員の剣幕にたじろいでしまいました。そのまま深夜まで脅迫のように圧力をかけられ、揚げ句の果てには返金を認める内容の念書を押し付けられ、持ち帰ったとのことです。

 次の日、高嶋さんは困り果てた様子で私に連絡をしてきました。「こんなわけで、内定先に約束した入社日には間に合いそうにありません。延期はできるでしょうか……」

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