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» 2006年05月09日 00時00分 公開

転職失敗・成功の分かれ道(17):現在のスキルアップが将来を決める

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[半藤剛,クライス・アンド・カンパニー]

気になる転職理由

 転職を考えるとき、皆さんいろいろな思いをお持ちだと思います。将来に向けた希望や決意、期待など。一方で、現状に対する不満を持った方も多いと思います。仕事の内容や待遇面、人間関係など。

 これまで多くの転職希望者とお会いしました。その中で、転職を考えた際に後ろ向きな理由がまったくなかったという方はあまりいらっしゃいません。私も当然だと思います。

 ただ、若手の転職希望者の転職理由で少し気になるものがあります。それは、「いまの環境で学ぶべきものがない」「この会社ではやりたいことができない」「いまの仕事はやりたいことではない」などの理由です。入社早々に、現職の会社や仕事に見切りをつけるケースが多いようです。

 もちろん、今後のキャリアを考える際に、いまの環境ではできないこともあると思います。例えば、コンサルタントとして、上流工程からかかわっていきたいが、会社が2次請けではなかなか上流工程を経験する機会がないなどです。

 自分の実力では、どうにか変えることができるという次元ではないケースもあるでしょう。そんなときは転職して環境を変えるのも1つの大きな選択肢ですが、その前に検討すべきは今後の目標に向けてしっかりと考え、いまの環境でやるべきことをやったのかどうかではないでしょうか。

現在の経験は必ず生きる

 現状に対する不満や将来の目標だけでなく、どのような問題意識を持って現在の業務に取り組み、どのようなスキルを身に付けてきたのか。

 企業は面接で、このような点を重視しています。だからこそ、現在の環境や業務を否定するのではなく、自分の状況を客観的に見たうえで業務に取り組み、しっかりとした武器(スキル・経験)を身に付けることが大切だと思います。

 プログラマ、システムエンジニア(SE)からコンサルタントを目指す方のケースを例に話してみたいと思います。

 コンサルタントを目指すSEの方は多いと思いますが、その場合、現在の経験が必ず生きてきます。スキル、お客さま・社内をはじめとした人間関係など、どの場面でも経験してきたことは役立ちます。

 例えばスキルという点では、SEの間にしっかり身に付けておくべきスキルは、大きく3つあると思います。

身に付けておくべき3つのスキル

 1つは論理力。プログラミングを1つ間違えれば、システムが動かないことがあります。正確なプログラミングを行うことは、論理的思考力がなくてはできません。設計も同様です。お客さまの要望をいかにシステムに落とし込むか。ロジカルな考え方が要求されます。

 次に段取り力。お客さまや協力会社との折衝などによって、プロジェクトを進めていくうえで必要なさまざまな調整から、物事を効率的に進めていく力が身に付きます。また、ルーティンな業務も工夫1つで改善できることがあります。常に考えながら仕事をしていくことで、プロジェクトや業務をスムーズに進めていく仕切りができるようになります。

 そして胆力。システム構築に携わる以上、必ずいろいろなトラブルに直面することがあります。それを乗り越えることによって物事に動じずに取り組めるようになります。コンサルティングの仕事はいろいろな意味でかなりストレスのかかる仕事です。そのため、タフでなくてはなりません。精神的な強さはとても重要な資質であり、経験することによって強化されるのです。

 上述のように、開発業務を主としていても、その先のキャリアを目指すうえでベースとなる大事なスキルを身に付けることができます。ぜひこのようなスキルを身に付けてから、次のステージを目指していただきたいと思います。そうでなければ本当にもったいない。同じ仕事をしていても、取り組む意識で価値が変わるのです。

考えながら仕事をする

 業務全体を理解し、自分の役割を把握して取り組むという視点も大切でしょう。城壁を造っている人に「あなたは何をしているのですか?」と問いかけたときの返答で、「壁を造っているのです」「お城を造っているのです」という2通りの答えがあるでしょう。

 よくいわれる話ですが、いわれたとおりに仕事をするのではなく、全体像を理解したうえで自分の役割・業務を把握して最善を尽くす。そこから、こうするのがより良いのではないか、自分ならこうしたい、といった具体的なイメージや考え方を持って業務に取り組むことができると思います。

 指示とおりの業務をこなし、与えられた業務に不満を感じて転職するのと、自分自身の考えをしっかり持ったうえで行動し、さらに上のステージを目指して転職するのでは、身に付けている武器やそもそものスタートライン、そして今後の可能性も大きく違ってくるのではないでしょうか。こうした意識を持って業務に取り組み、多くの武器を身に付け自分自身の価値を高めてから、さらに上のキャリアプランにチャレンジしていただくのがよろしいのではないかと思います。

裏付けのある自信をつくる

 現在の業務に、高い意識を持って取り組むことの重要性を述べてきました。次に、自分自身が納得して次のステージに進む段階かどうかを見極めるのには、実績が1つの目安になるのではないかと思います。

 もちろん、企業もどのような実績を残してきたかには注目します。ある分野で一定の実力を身に付けている方は、ほかの分野でも一定の実力を身に付けることができる人だと企業は考えます。

 少なくともどこか1つの分野で、自分の経験としてスキルを身に付けてきたとしっかり伝えることができるかどうかがポイントとなります。また、これまでの経験を通じてどれだけのスキルを本当に身に付けてきたかどうかは、客観的な評価を伴う実績が証明することが多いと思います。自信を持って次の一歩を踏み出すためにも、実績の伴った、裏付けのあるしっかりした自信を持つことが大切です。

 思うままにいろいろと述べてきましたが、お考えのキャリアプランを実現するために、転職というのは大きく有効な選択肢であることは変わりありません。また、実現のために転職という選択肢を取り、アクションを起こすにはタイミングも重要です。

 キャリアチェンジの際はポテンシャルも重視されますし、業界や職種などお考えのキャリアプランによっては年齢的な面も大きな要素になってきます。

 皆さんがお考えのキャリアプランに向けて、スキルやタイミングなど現在自分がどのような状況にあるかを知ることはとても重要です。

 転職するにしても現在の環境に残るにしても、上のステージを目指すためには自己をしっかりと認識することが大切だと思います。皆さんの「思い」をはじめ、今後のキャリアプランに向けた共通の認識を持ち、一緒に考えていきながら一番良い選択をしていただければと考えております。皆さんも「思い」がございましたら、ぜひキャリアカウンセラーに気軽にお声を掛けてください。

著者紹介

クライス・アンド・カンパニー 半藤剛

大手教育会社で営業、マネジメントを経験後、クライス・アンド・カンパニーに入社。情報収集や新規開拓などの行動力が最大の武器。クライス・アンド・カンパニー入社当初からIT・コンサルティング業界を中心に担当。若手からシニア、エグゼクティブまで、幅広い層で実績を持つ。



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