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» 2007年01月20日 00時00分 公開

転職失敗・成功の分かれ道(26):転職に関する勘違いをただす

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[小塚康司,リーベル]

 皆さん、こんにちは。人材紹介会社のリーベルの小塚です。今回は、よくありがちな「転職に関する勘違い」について述べたいと思います。

 日ごろ、IT企業の人事担当者からいろいろなご相談を受ける中で話題に出るのが、この転職に関する勘違いです。毎日、転職希望者と打ち合わせを行うときに、私も感じることがあります。

 では、どんな勘違いでしょうか。代表的な具体例を4つ挙げながら、解説したいと思います。

転職して給与アップ

 よく人事担当者が指摘するのが、この勘違いです。多くの方は、希望給与に現在の年収より100万円前後高い金額を記入するそうです。人事担当者は、いつもそれを見てびっくりするそうです。面接のときに「給与アップの根拠は?」と問いただすと、しどろもどろになってしまう人も多いそうです。「どんなパフォーマンスを出すか分からないのに、大幅なアップは考えられない」が、人事担当者の本音です。

 ここで、本当に「転職で給与アップ」できるパターンを教えましょう。

  • 給与水準の低い下請けIT企業(2次請け/孫請け以下のシステムインテグレータなど)から、給与水準の高い元請けIT企業(コンサルティングファーム、シンクタンク、大手SIer)に転職した場合
  • 特殊な技術に精通しており、その専門性をほかの人も認めるようなITエンジニア
  • 数少ない給与水準の高いベンチャー企業にボードメンバーとして転職した場合
  • 企業から「三顧の礼」で迎えられた場合

資格を取得してキャリアアップ

 これもIT企業の人事担当者がよく指摘する勘違いです。

 資格を取得することは、決して悪いことではありません。むしろ積極的に取得すべきです。ただ、それは手段であるはずなのに、目的になってしまっている方が多いようなのです。

 次は、それを裏付ける、資格に関する印象的な人事担当者のコメントです。

  • 資格は実務経験の裏付けであるべきだ
  • キャリアは資格でなくで、「実務経験」でアップするのである
  • 資格はエンドユーザーを安心させるものであり、キャリアアップの手段ではない

ITエンジニアは技術力重視

 これもよくいわれる勘違いです。企業の採用基準は、「技術力4:人間力6」だそうです。どんなに技術力が優れていても、魅力ある人間・お客さまの前に出しても恥ずかしくない人間でないと採用されにくいものです。これは、皆さんが「採用する立場」になればすぐに気付くことだと思います。

 この勘違いの具体的な例を挙げてみます。

  • 幅広い技術力、経験を積むために、派遣社員として働いてキャリアアップ
  • Javaなどの言語スキルにフォーカスしたキャリアプランを立てている

 実際の採用での評価では、「どれくらいの規模のプロジェクトに、どのような形で参加して苦労してきたか」が重視されます。もちろん、「どのような技術を使ったのか」も大事ですが、それはあくまでも一部です。大手コンサルティングファーム、シンクタンク、SIerへチャレンジするための理想のキャリアは、「100人月を超える基幹システム構築プロジェクトに元請け企業のITエンジニアとして参加、もしくは協力会社の一員としてそれに近い経験」だと思います。

取りあえずITコンサルタント

 これは、コンサルティングファームの人事担当者からよく聞く勘違いです。よくある面接官と転職希望者とのやりとりです。

その1

面接官 「志望動機は何ですか?」

転職希望者 「ITコンサルタントになりたくて、コンサルティングファームである御社を希望しました」

(中略)

面接官 「5年後はどのようになっていたいですか?」

転職希望者 「ITコンサルタントになって、ユーザーによりよいシステムを提案したいです」

面接官 「それでは、ITコンサルタントって何ですか?」

転職希望者 「ユーザーにシステムを提案するエンジニアです」

面接官 「弊社の若手には、提案フェイズを担当しないITエンジニアがたくさんいます。それに、普通のSIerのプロジェクトマネージャクラスなら、皆ユーザーに提案くらいしてますけど……」

転職希望者 「いや、……その……」


 この人事担当者がいいたいのは、転職希望者が「ITコンサルタント」という仕事の中身を誤解しているということです。「コンサルタント」という呼び名にあこがれるのではなく、実際の仕事内容を研究して、やりたいことを具体的にいってほしいのだと思います。

その2

面接官 「ITコンサルタントになりたいんですね。でも、経験がないので難しいのでは」

転職希望者 「はい。でもITコンサルタントを目指して頑張りたいと思います」

面接官 「何を頑張るの?」

転職希望者 「経営に関することを勉強したり、コミュニケーション力が付くように努力したいと思っています」

面接官 「そもそも、技術的な経験も浅いから、技術からやり直す必要があるようですね」

転職希望者 「はい……。ITコンサルタントになれるように頑張ります」

(中略)

面接官 「これで1時間の面接を終わりにしますが、最後に何かいいたいことはありますか?」

転職希望者 「経営やビジネススキルを身に付けてITコンサルタントになりたいです」

面接官 「……(涙)」


 最後の面接官の質問は、「技術、知識、コミュニケーション力すべてが足りない現状を把握し、ITコンサルタントになるために着実にステップアップするべきだ」ということを理解できたかを確認するものだったのです。「経営の知識やビジネススキル」といった上っ面のことではなく、しっかり現場を経験してはい上がってきてほしいのです。面接官の涙も理解できるというものです。

本当に目指すものは

 皆さんも、「取りあえず」で「ITコンサルタント」を目指していませんか。

 以前に書いたことがあるのですが(「『転職』と『中途採用』の違い」)、採用する企業の立場になって転職を考える「視点」が必要です。

 現在は、転職に関する情報がはんらんしています。物事の本質を常に探し、情報を精査してください。そして、人材紹介会社のコンサルタントに相談してください。きっと親身に相談に乗ってくれるはずです。

著者紹介

リーベル 取締役 小塚康司

福岡県出身。大学卒業後、社員研修コンサルティング会社にて、主に大手流通業向けの従業員教育・モチベーションコンサルティング業務を経験。その経験をIT業界で生かしたいと思い、大手ユーザー系システムインテグレータに転職。CRM・SCMを担当。その後、大手人材紹介会社へ転職。人材紹介IT部門責任者を経て、2005年にリーベルへ転職。



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