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» 2007年03月01日 00時00分 公開

転職活動、本当にあったこんなこと(7):社内SEならラクそうだから (1/2)

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。

[福間啓文,アデコ]

 昨年に引き続き、今年(2007年)も企業の採用意欲は活発です。特にITエンジニアの中途採用のニーズは高く、即戦力のある人材のみに目を向けていては採用計画人数を達成できない状況であることが認識されてきたと思います。求人企業もいろいろ工夫をし、経験不足でもポテンシャルがある人材であれば採用し、育てていく方針になってきています。

 求職者から見れば、いわゆる「売り手市場」。しかし、すべての人がスムーズに転職できているとは限りません。

 今回は、転職活動に失敗した3人の事例を紹介します。それぞれ状況も考え方も違う3人ですが、転職活動がうまくいかなかったことだけが一致しています。

 なぜなのでしょうか。まずは事例を確認してみましょう。

「非常に期待をしていましたが……」

【事例1】梅本さん(仮名・25歳)の場合

  • 大学卒業後、大手独立系システムインテグレータ(SIer)に入社
  • 生保系業務アプリケーションの開発プロジェクトに参加し、基本設計以降を担当するが1年半で退職
  • その後、1年間海外に留学。帰国後、求職活動をするも内定は得られず

 25歳という若さと大手SIerに勤めていたことから、梅本さんはレジュメ上、高いポテンシャルを感じさせるITエンジニアだったようです。そのため、応募したすべての企業で書類選考を通過し、1次面接に進んでいました。

 しかし1次面接後、企業からは採用見送りの連絡が次々と入りました。その際の各社のコメントが、皆同じようなものだったのです。「会う前は非常に期待をしていましたが……」

 不採用の理由を確認すると、「実務経験があるといっても、よくよくヒアリングしてみると新卒1年目と変わらない知識レベルだった」「留学期間のブランクがあるため、自社の同年代のITエンジニアと比較してキャリア、スキルの不足感は否めない」ということでした。

 しかし、実はこれが一番の原因ではありませんでした。梅本さんがどの企業からも不採用になった最大の原因は、「そもそも自分が今後、何をしたいのかが明確になっていない」ことだったのです。

 「将来に対して明確な目標を持っているかどうか」は、採用側が若手の採用において一番知りたいと思うポイントの1つです。面接でも「今後どのようなITエンジニアになりたいか」は必ず聞かれます。

 ここが不明確だと「意欲がないのでは」「採用後伸びないのでは」「すぐに辞めてしまうのでは」とネガティブな印象を与えかねません。

 梅本さんの場合は「なぜ短期間で辞めたのか」「海外留学の目的は」「なぜ当社を応募したのか」「今後はどのようなITエンジニアになりたいのか」の4つのポイントが不明確なために結果に結び付かなかったのでした。

いまならもっと大手に入社できるかも?

【事例2】柴原さん(仮名・35歳)の場合

  • 中堅SIerでインフラ系開発プロジェクトに従事。リーダーとしてメンバー5人のマネジメント経験あり
  • 大規模なプロジェクト、より業務寄りフェイズにかかわることを目指し転職活動中
  • 大手メーカー系SIerで希望がかなうポジションで内定を得るも辞退。その後、転職活動が難航

 柴原さんは過去に一度転職を経験しています。新卒で入社したのは、社員30人規模の常駐派遣型のソフトハウス。ネットワーク監視・運用や構築など多数のプロジェクトを経験し、堅実にキャリアを積んでいました。

 30歳を機に今後のキャリアプランを見直し、初めての転職活動を行いました。しかし、当時はIT不況の最中で買い手市場の時代。相当の苦労をしましたが、中堅SIerに転職が決まり、現在はリーダーとして活躍しています。

 そして今回、また転職を考えだした柴原さん。以前の経験から、かなり厳しいものになるだろうと覚悟して活動を始めてみましたが、予想と異なりスムーズに進むことができたのです。結果、大手メーカー系SIerなど複数社から内定を得ることができました。どれも「大規模プロジェクト」「業務寄りの工程」にかかわれる環境です。

 この時点では柴原さんは、転職活動に満足していたようです。同時に以前とは正反対の状況、いわゆる売り手市場であることを実感していました。

 しかしそんなとき、「以前なら雲の上の世界だった某大手SIerで、数十人規模でITエンジニアを採用している」という情報を耳にしたのです。以前に苦労した経験の反動も手伝ったのでしょうか、柴原さんは「売り手市場のいまなら、もっと大手でより待遇がいいところに行けるのでは」と欲を出し、内定企業をすべて辞退してしまいました。

 その後IT業界でも最上位に位置付けされる有力企業を複数ピックアップし、意気揚々と期待いっぱいにチャレンジしましたが、そううまくはいきませんでした。今度は書類選考さえ通過しない、通過しても1次面接で残念な結果に終わるということが続きました。

 企業側から見た理由としては、年齢に見合った上流工程のキャリアが不足している、大規模プロジェクトの経験がなく即戦力にはならないということになります。つまり柴原さんの敗因は、「適切な情報収集をせず、自分の実力と市場のレベル感を見誤った」ことと思われます。

 いくら売り手市場とはいっても、システム企画・要件定義・コンサルティングを強みとしている企業群は、レベルを落として採用をすることはありません。それは企業の信頼にかかわる「技術レベルの低下」「品質の低下」に直結するからです。

 しかし、いい人材がなかなか採用できない時代です。採用側も少しばかりのスキル不足であれば、それを補う何か「キラリと光る」強みがあるかを面接で見ていますし、PRを求めています。

 柴原さんに1次面接をした企業は、まさにその強み(具体的にいうと「顧客との折衝能力」「問題解決能力(ソリューションスキル)」「クリエイティブ性」「マネジメントスキル」)を期待したのですが、柴原さんは的確なPRができず、結果に結び付かなかったのでした。

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