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» 2007年06月14日 00時00分 公開

あなたの転職活動、デバッグすべし(6):最終面接のそのひと言が命取り

ITエンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。

[山下洋平,パソナキャリア]

 プロジェクトでは、さまざまなリスクを想定して行動すると思います。転職も同じです。転職をするまでも、さまざまなリスクが顕在化する可能性があります。

 しかし、失敗を気にしすぎて、本来の転職すべきタイミングを逃してしまう人もいらっしゃいます。今回は、転職をやっと決意したものの、転職をあきらめることになったMさんの例をご紹介します。

転職活動の面接について知りたい方は、以下の記事も参考になります
面接は事前準備が肝心
圧迫面接にも理由がある?


ほぼ内定の最終面接が、あるひと言で台無しに

 転職活動は、意外と体力的にも精神的にもパワーを必要とされるものです。

 求人企業の求人を確認することから始まり、職務経歴書・履歴書を作成して企業に提出。場合によっては数週間以上も書類選考の結果を待ち、合否の知らせをもらいます。仕事をしながら転職活動をする場合は、残っている有給休暇や仕事の状況を気にしながら面接の日程を調整することもあるでしょう。せっかく意気込んで休暇を取ったのに、そんなときに限って不合格の連絡が……。気を取り直してほかの企業の面接に臨み、そしてやっと最終面接へ……。

 最終面接は、選考の意味合いがほとんどない企業があります。そうした企業では、通常給与をはじめとする勤務条件の提示を行うのです。しかし、企業は内定を出すつもりだったのに、最終面接の場で転職希望者があるひと言を口にしたために、不合格になった例もあるのです。

 「ほぼ合格のはずだったのに、不合格になってしまったひと言」とは何でしょうか? その言葉を中心にある事例を紹介します。

スキルもリーダー経験も十分だったのに

 最初に紹介するのは、国内大手システムインテグレータ(SIer)で不合格になったMさん(28歳)の例です。Mさんは、国内の中堅SIerで、通信系の企業向けのソリューションの提案・開発を担当していました。

 さらに大規模なプロジェクトを担当したいという気持ちとともに、年収アップも狙って転職活動を始めました。上流工程やリーダー経験もあるMさん。お会いした印象は活発な感じで、スキルも経験も十分ですし、コミュニケーション能力も高く、大手SIerへの転職も十分可能だと判断しました。そして、その転職を実現すべく、書類を数社の大手SIerに提出したのです。

 Mさんの選考は、予想どおり順調に進みました。応募した5社のうち、何社かから内定の提示を受けました。さらに、第1希望であるC社も最終面接に進みました。最終面接の内容は、執行役員との面接でした。ほとんどの方が通過する儀礼的な面接だということは、事前に人事の方から伺っていたので、Mさんにリラックスして臨むよう伝えました。

 緊張しながらも、Mさんは執行役員の質問に答えていくうち、ある程度の手ごたえを感じました。そのときMさんが何気なく尋ねたのが、

 「ところで、年収はどのくらいいただけるのでしょうか?」

という質問だったのです。その回答はありませんでした。その後いくつかのやりとりをして面接は終了しました。

 数日後、C社の人事の方より連絡がありました。「残念ながら、Mさんの採用は見送りとなりました。理由としては、最終的に報酬などにこだわる受け身な姿勢が気にかかったからとのことです。『いくらもらえるか』というような質問もされたそうで……」

 Mさんは年収にこだわっているわけではないことを、コンサルタントより人事に説明してもらいましたが、一度決定された不採用は変わらず、結局MさんはC社をあきらめたのです。

いつものプレゼンどおり、順調に話を進めたが

 Kさん(34歳)は、事業企画関係のキャリアを積んだ方です。ITエンジニアとしての経験をバックボーンに、インターネットサービスのビジネス企画・プロジェクトを推進する経験を積んできました。今回転職するとしたら3回目になります。

 さらなるキャリアアップを目指すKさんが狙うのは、インターネット系の企業P社の事業企画マネージャのポジションです。P社の人事の方によると、将来的には部門のマネジメントなどを担うことが期待されているとのことでした。

 P社の最初の面接は、現場のITエンジニアとの面接でした。Kさんと同年齢ぐらいの方と若手の方が同席し、これからのアイデアを互いに出し合い、面接はかなり盛り上がりました。もちろん、その面接では合格です。面接官をした方からは、「ぜひ合格してください。応援しています」という言葉ももらったそうです。2次面接の人事・役員面接もスムーズに進み、残すは最終面接だけとなりました。

 最終面接は、一度面接した役員を含めた複数の役員との面接です。いままでのキャリアに関する説明やこれからのビジネスに関する提案などを行いました。さまざまな企業への提案に慣れたMさんの話は、周囲を引きつけました。役員とのやりとりの話も盛り上がります。そんなとき、Kさんの口から出てしまった言葉が、

 「御社の問題は、○○ですね」

 何となく、面接の場の雰囲気が変わったのに、Kさんも気付いたそうです。ざっくばらんな雰囲気で企業へ提案していたいつもの癖が出てしまった、と後悔しても始まりません。何とか、その場はフォローしたものの、Kさんはこの面接が失敗だと分かりました。そしてKさんの感触どおり、数日後P社から不採用の通知が届きました。

最終面接はあくまで面接

 MさんもKさんも、ほとんどの方が合格するはずの最終面接で不採用となってしまいました。その理由は、共通です。最終面接は選考であることを忘れてしまっていた、ということです。

 Mさんの場合は、条件の交渉を行うべきタイミングではないのに、焦って年収の話をしてしまったのが失敗のもとでした。本来であれば、最終面接の後に、私たちコンサルタントからほかの企業での内定の提示状況を人事担当にお話するなどして、年収アップの交渉は可能だったのです。

 Kさんの場合は、あまりに面接でフランクになりすぎたため、まだ入社する前に企業の批判を行ってしまったことが原因でした。中途採用で入社するからには、まずはその会社のやり方などを知ってから、改善に関する発言を行う、という意識が抜けていたのかもしれません。

 最終面接は、条件を確認して社長と握手をするだけ、という企業もあります。しかし、たとえいままでの実績では最終面接で不採用になった人がいない企業でも、採用通知書を手にするまでは、不採用になる可能性があるのです。

 最終面接となると、長い転職活動も終わりが見えてきて、気が抜けてしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、最終面接でのひと言によって、いままでの転職活動が水泡に帰してしまうこともあることを忘れずに、転職活動を進めていただければと思います。

筆者紹介

パソナキャリア

山下洋平

大学卒業後、パソナキャレント(現パソナキャリア)に入社。IT業界専門の営業として、大手企業から中小企業まで数多くのクライアントを担当する。その後、現職のキャリアアドバイザーに転身し、営業経験を強みとして多くの方の転職をサポートしている。



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