ITコンサルタントのイメージをつかむITコンサルタントのイメージをつかむ(2/2 ページ)

» 2007年06月20日 00時00分 公開
[千葉大輔@IT]
前のページへ 1|2       

ITエンジニアとITコンサルタントの違い

 最後に話を聞いたのはスカイライトコンサルティング 取締役 坂本竜也氏と矢野陽一朗氏だ。坂本氏はITコンサルタントの仕事を次のように話す。

 「顧客の元に行き、その悩み、つまり経営課題を聞き、その課題をどのように解決できるかということを提案しています。その提案の中身は、業務改革や新規事業立ち上げ、システムの改修あるいは、新規開発などさまざまですが、顧客の経営課題の解決を最後まで支援することを目的にしています」

スカイライトコンサルティング 取締役 坂本竜也氏 スカイライトコンサルティング 取締役 坂本竜也氏

 このような目的の下、システム開発のフェイズでは主にユーザー側の作業、つまり要件定義の支援を行っている。「『顧客業務をどう変えるのか』『そのためにシステム的にどういう機能が必要か』ということに対して、スケジュールや予算も考慮しながら要件を詰めていく。要件定義は従来、ユーザー側の作業として識別される部分ですが、この部分についてリソース不足できちんと手当てができていないことが多くあります。われわれはそういったユーザー側の業務の支援を行っています」(坂本氏)

 一般的なITエンジニアの場合、普段の業務は決められた要件をいかにスケジュールに遅れないように、いい品質で作るかという部分に注力する。与えられた要件を基にきっちり作り込む。その一方でITコンサルタントの場合、「本当に顧客の役に立つのか」「それはシステムで実現すべきなのか、システムではなく、業務を変えて実現すべきなのか」という判断をし、提案をする。「そういった判断は顧客にはなかなか難しい。日々、われわれが顧客に成り代わって考え提案して、そして判断してもらいます」と坂本氏。

 「やはり、顧客はコンサルタントに頼んでいるという意識でいます。何かしらコンサルタントから考え、提案してくれるものだと思っています。そうでないとそれだけの報酬を払っている意味がありません。われわれとしても顧客に対して、付加価値を提供していくためには、自ら考えて提案するという姿勢が求められます」(矢野氏)

 前職がシステムインテグレータで現在はコンサルタントとして働く人の中には、同じように見える仕事でも、システムインテグレータで働いていたころと現在では大きく違うと感じる人もいるという。「現在、保守フェイズを担当しているコンサルタントですが、システムインテグレータのころは上司や顧客から降りてくるトラブルなどのタスクを処理することに神経を使っていたといいます。しかし、現在では『顧客に対して何を提案していくか』が問われるといいます。つまり、トラブルを未然に防ぎ、業務に付加価値を与えるためのアイデアが求められるのです。そこが一般のITエンジニアとITコンサルタントの違いを表していると思います」(矢野氏)

 同様に「上流工程をやりたいので、ITコンサルタントになりたい」という人がいるが、実際にITコンサルタントになると、中には戸惑う人もいるという。それは、「ITコンサルタント」という仕事や「上流工程」についてなかなかイメージできていないことが原因だという。

 「自分がプログラマをやっているときと比べて、より多くの領域を見る必要があります。視野を広く持って、横断的に課題を解決していかなければいけないのです。そういった部分に戸惑う人が多いですね」

顧客に対する奉仕を喜びとできるか

スカイライトコンサルティング 取締役 矢野陽一朗氏 スカイライトコンサルティング 取締役 矢野陽一朗氏

 では、ITコンサルタントに必要な適性、意識を聞いてみた。適性については、「論理的思考などたくさんありますが、『何が問題でどう改善したいのか』をコストや効果を含めて考えて、顧客が判断するための支援をする。そういった部分が基本となります。社内を見ると問題解決能力が高い人が多いと思いますね」。また、物事を批判的に見て建設的に解決する方法を考え、自ら手を動かそうと思えるかという部分も重要となるという。

 ITコンサルタントに求められる意識とは、「コンサルタントはサービス業。顧客に奉仕することで顧客に喜んでもらうことをうれしいと思える感覚が大切です。ITエンジニアの中には、システムを開発すること自体に喜びを見いだす人がいますが、おそらくそういう人には向いていないでしょう」と矢野氏は話す。坂本氏は「周りを見て『何でこういうシステムが必要なのか』ということを自分なりに考える癖を付けること、つまり問題意識を持つことが重要です。そういう意識でいるとずいぶんと普段の仕事が変わってくると思います」。

 最後にITエンジニアとしての経験が、ITコンサルタントとしてどのように生かせるかを尋ねた。「論理的に考える力や、プロジェクトを進めるうえで仕事の段取りを考えながら、仕事を組み立てる能力が高いと思います。またプレッシャーに強いことも挙げられます。システム開発の現場に逃げ場はありません。そういった現場の泥くさい経験から得られる胆力も生かせるでしょう」(坂本氏)

なぜを問い続けて答えを持つ

 さて、3社のコンサルティングファームに話を聞いた。それぞれの話からITコンサルタントについてのイメージは見いだせただろうか。3社ともITコンサルタントとして必要な素養として、「考え続けること」を挙げた。ITコンサルタントは常に顧客に提案を求められている。常に問題意識を持ち、何かしらそれについて自分なりの答えを持つことが重要になる。

 またITコンサルタントとして、もう1つ重要なポイントはやはり顧客との関係だ。「いかにして顧客のニーズを引き出し」「顧客が本当に必要としているもの」を見つけられるか。今回、「顧客に相談を持ちかけられる存在であり、頼りにされている」ことがやりがいだと話す人が多かった。そこまでの信頼関係を顧客と築き、顧客の喜び=自分の喜びになっている。そういった人こそがITコンサルタントとして活躍できるのだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。