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» 2007年10月02日 00時00分 公開

転職失敗・成功の分かれ道(33):30代後半の転職、その現実とは?

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

[服部泰三,テクノブレーン]

 最初に触れておきたいのは、雇用対策法が改正され、2007年10月1日から施行されました。本記事の内容は改正前の事例を基にしており、もしかしたら内容の一部は当てはまらない点があるかもしれません。その点はご容赦ください。

転職のベストタイミングはいつか?

 「転職のベストタイミングはいつですか?」と聞かれることが、この仕事ではよくあります。

 36歳で社員数15名ほどのソフトハウスから大手メーカー系のシステムインテグレータ(SIer)に常駐しているWeb系システムエンジニアの葉山さん(36歳・仮名)も、そんな疑問を持った1人です。

 葉山さんの現場環境は人間関係も良好で、元請けのベンダが気遣ってくれる分、残業も少なくとても仕事のしやすい環境です。それでも葉山さんは転職を考えるようになり、行動に移したのです。

転職サイトで自身のスキルや経歴を登録

 転職サイトには、転職希望者が記入した経歴を見て、提携している人材紹介会社がスカウトメールを送るシステムがあります。葉山さんが利用したのも、そうした転職サイトでした。以前彼は自身のスキルや職務経歴などを大まかに登録したそうです。とはいえ、市場価値を知る目的で気軽に登録したためか、登録した内容から転職に本気ではないのが人材紹介会社に伝わったのか、スカウトをしてくる人材紹介会社はそんなにありませんでした。

 しかし同年代の同僚が転職したのをきっかけに、転職サイトに登録してあったキャリアやスキルの情報をより詳しく記入して更新しました。するとその途端、多くの人材紹介会社からスカウトされたそうです。

 それもそのはずです。葉山さんはここ7年ほど、Javaを用いた設計・開発に従事し、開発がメインではありますが、J2EEを用いたWebアプリケーション開発やオラクルのDB設計の経験もあり、人材紹介会社から見ればまさしくキャリアアップ転職のベストタイミングだったからです。

 ただ、唯一の懸念は、リーダー経験が少なかったことでした。

本当に転職するにはギリギリの年齢か

 葉山さんとお会いしたのは、そんな不安で悩んでいたころでした。

 「早速ですが、本日お会いいただけた背景から伺ってもいいですか?」

と聞くと、少し迷いながら次のようにおっしゃいました。

 「35歳の同僚がつい最近転職したのですが、人材紹介会社の人材コンサルタントに『いまが転職にはギリギリの年齢だ』といわれたそうなのです。自分と同じ現場で4年間やってきたし、技術力も経験も年齢も大体同じです。本当にギリギリの年齢なのでしょうか? そうであれば転職を急ぎたいのですが……」

 シンプルですが、非常に難しい質問です。

 確かに一般的には、システムエンジニアやプログラマには28、30、35歳と転職するときの年齢の節目があって、年齢の向上とともにマネジメントスキルや要件定義、基本設計といった上流工程の経験が求められる傾向にあります(編集部注:法律の改正により、今後は年齢制限を設けたような求人は原則として禁止になります。ただし、法律上年齢制限があるような職業を除きます)。

 さらに35歳を超えると、中・大規模のプロジェクトマネジメントの経験に加えて、ラインマネジメントの経験や突出した業務知識・ノウハウが求められるようになります。とはいえ、このような経験や知識、ノウハウは、環境を変えなければなかなか身に付けることはできません。

 特に2002〜2004年初旬までは、アメリカでのITバブル崩壊や同時多発テロの影響から、日本でも企業がIT投資を控える姿勢が強まりました。それが転職市場にも影響したのです。SIerなどが、縮小したパイを少しでも自社に取り込むため、即戦力としてのプロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャを求める傾向が強くなりました。

 この時期は、求人企業からの年齢に対しての要求が、非常に厳しい時代だったと記憶しています。実力を生かせず悶々(もんもん)とした日々を過ごしてモチベーションを下げてしまい、新たな活躍の場を求めるために転職したものの、新たなプロジェクトの進め方になじめず、早期退職してしまったような方も少なからず見受けました。

年齢制限が厳しかった背景は

 当時、企業が求人で35歳以下の年齢にこだわった理由は、

  1. 即戦力として早期に売り上げへの貢献が期待できる
  2. 年齢構成上欠けている年齢層の補てん
  3. 万が一採用がミスマッチでもジョブローテーションが可能

と大きく3つの目的によるものでした(編集部注:前述しましたが、今後は年齢制限を設けたような求人は原則として禁止になります)。

シフトし変化する労働力

 しかし、過去の年齢に対する制限は、法律以外でも、それを後押しする動きがあるのです。その最も大きな理由は、労働力人口のシフトです。

 不景気と新規学卒者の減少から情報サービス業では1996年前後、2001年前後の新規学卒者の採用を控える傾向がありました。学卒者であれば、「現在の」28歳前後、および33〜34歳は全体的に年齢層として欠けている層なのです。つまり、この年代はおそらく将来的にも転職しやすい層になります。

 一方、厚生労働省の資料から労働力全体を見ると(厚生労働省の労働力調査の2007年8月時の速報の第12表を参照してください)、「現在の」労働力の中心年齢層は34歳前後となるそうです。これが2015年には労働力の中心が42歳前後となります。従って、これから35歳以上の労働力人口の比率が飛躍的に増えていきます。

 しかしながら、企業によって年齢構成は違いますし、年齢が高くなれば管理経験を求められることは事実です。

葉山さんの転職の結果は?

 さて、冒頭の葉山さんの話に戻りましょう。

 より上流工程でクライアントに近い立場でものづくりに携わるために、中堅SIer3社と大手SIer2社にチャレンジしました。

 大手SIerでは業務スキルとマネジメント経験の不足から面接にて見送りとなってしまいましたが、中堅SIerのプロジェクトリーダー候補として、無事に内定を勝ち取ることができました。

 もちろん入念な面接対策と企業分析、アピールポイントの絞り込みと面接練習のたまものでした。

 市場価値を測るうえでは、年齢とスキルのバランスは便利な指標です。

 昨今の転職市場は年齢制限を切り口に転職を煽る(あおる)傾向にありましたが、法律の改正、労働市場全体の視点から自らを見つめ直すことで、そうした煽りに影響されない長期的なキャリアプランが見えてくるかもしれません。

だからこそ必要な強み

 確かにIT業界は流れも早く、新しい技術やキーワードが次から次に出てきます。それは外から見ている僕らも驚くほどです。

 だからこそ、「焦らずにまずはしっかり自分の強みを見極めてほしい」と思います。

 皆さんも人材コンサルタントから情報提供を受けるときには、ぜひとも鋭い質問で情報の本質を探ってみましょう。そんな質問から、自分自身の強みが見えてくるかもしれません。

著者紹介

服部泰三(テクノブレーン 人財事業部 ITセクション キャリアコンサルタント

早稲田大学教育学部卒業後、新卒でテクノブレーンに入社。 IT/エレクトロニクス業界を中心に1000人名を超える方との面談を経験。「転職」をゴールとしない長期的なキャリアプランの提案に定評がある。「すべての人に『気付き』のある面談」をモットーに日々勉強にいそしんでいる。大手SIer、IT系コンサルティング会社への紹介実績が豊富。(社)日本人材紹介事業協会 人材紹介コンサルタント資格取得。



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