ネットワークのABC、OSI参照モデルとプロトコルネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座(2)(1/3 ページ)

本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。CCNAは、2007年12月に改訂されたばかりで、2008年1月現在、新試験の情報がまだ少ない状況です。よって本連載は、改訂前の試験(640-801J)で解説をしますが、新試験の解説が可能になり次第、新試験(640-802J)も含めて解説していきます。

» 2008年01月22日 00時00分 公開

 連載第1回「新CCNA試験について知ろう」では、昨年12月に改訂されたCCNA(Cisco Certified Network Associate)試験や、昨年12月に登場したCCENT(Cisco Certified Entry Network Technician)の試験科目、試験範囲などについて説明しました。連載第2回からは、CCNA試験の中身に入ります。今回は、ネットワークの「いろは」に当たる、OSI参照モデルとプロトコルについて解説します。

OSI参照モデル

 ネットワークが誕生した当初、同じベンダのコンピュータ間でしか通信できないという仕様がほとんどでした。これでは、異なるベンダのコンピュータを使用している人同士の通信ができず、ネットワークがコンピュータをつなげるという考え方には程遠い状態になっていました。

 このようなベンダ間の壁を崩そうとして考えられたものが「OSI参照モデル(Open Systems Interconnection)」です(図1)。異なるベンダの機器間でも相互運用が可能になる機器を作るための基準として、ISO(国際標準化機構)によって制定されました。

第7層 アプリケーション層 ユーザーが直接かかわる通信サービスを規定
第6層 プレゼンテーション層 圧縮方式や文字コードなどのデータ表現を規定
第5層 セッション層 コンピュータ間のコネクションや切断などの手順を規定
第4層 トランスポート層 誤り訂正の方法や再送制御などの通信管理を規定
第3層 ネットワーク層 データの通信経路を選択する方法(ルーティング)を規定
第2層 データリンク層 通信機器レベルの送信元とあて先を特定する方法やエラー検出方法などを規定
第1層 物理層 電気信号の変換方法を定めたり、コネクタの形状などを規定する
図1  OSI参照モデルの階層ごとの役割

 OSI参照モデルでは、図1のように通信機能やルールを7つの階層構造(レイヤ)に分割して規定しています。OSI参照モデルは、データがネットワークを通じて流れていくあり方を階層(レイヤ)化して、各階層に分担された役割と階層間のやり方を論理的に規定したものです。この規定を利用することで、次のような利点があります。

  • 複雑なネットワークを階層に分割することで、管理しやすくなる
  • 階層を1つ変更しても、ほかの階層に影響を与えることなく目的を達成することができる
  • 複数のベンダを統合するための標準の定義が得られる

 各階層の仕様をもう少し詳細に見てみましょう。

第1層:物理層

 最下層の物理層では、電気信号の変換方法が定められています。電気信号にはデジタル信号とアナログ信号という2種類があるため、それぞれの変換方式が必要になっているわけです。また、使用する物理接続(電話回線、無線、光ファイバーなど)によって異なるケーブル、コネクタの仕様が定義されています。注意すべき点は、データの中身を扱う層ではなく、電気信号を通す媒体(ケーブル、コネクタなど)について、形状、信号の電圧など取り決めを行う層ということです。

第2層:データリンク層

 第2層のデータリンク層では、第1層の物理層から送られる「0」と「1」の電気信号をデータとして受けて「フレーム」というデータの固まりに分割し、1つ上のネットワーク層に伝えます。

 また、データリンク層では、複数のコンピュータ間でネットワークを介して通信するために使用する、データのフォーマットやデータの送信元とあて先の情報、データのエラー検出方法などが定義されています。

図2 データの送信元と送信先を特定するMACアドレス 図2 データの送信元と送信先を特定するMACアドレス

 通常、データの送信元と送信先を特定できるようにするために「MAC(Media Access Control)アドレス」というNIC(Network Interface Card)などに焼き付けられたアドレスを使用します。

 MACアドレスは、物理アドレス(Physical Address)とも呼ばれ、ネットワーク上の各機器を識別するための固有の、つまり世界で1つしかないアドレスです。

MACアドレスのフォーマットは、48ビットで構成されており、前半24ビットがベンダの識別コード、後半24ビットがベンダ内で割り当てた連番の管理コードです。ベンダの識別コードは、「米国電気電子学会(IEEE)」で管理しています。48ビットは、図2にあるように6つのオクテット(8重=8ビットごとの固まりのこと)で表現され、16進数(0〜9、A〜F)で記述されています。

ただし、データリンク層が通信できるのは同一ネットワーク(同一ホスト)内のみです。ネットワークを越えて異なるノード間で通信をするにはどうすればいいのでしょうか。それを行うのが第3層です。

第3層:ネットワーク層

 ネットワーク層では、通信経路を決定するという役割を定義しています。例えば、後述する「ルータ」と呼ばれる機器を使用することで、別のネットワーク環境との相互接続が可能になります。その際、データリンク層で使用しているMACアドレスでは管理が複雑化してしまいます。ネットワーク層では、「IP(Internet Protocol)アドレス」と呼ばれる論理アドレス(Logical Address)を使用することで、転送先を決定します。

第4層:トランスポート層

 トランスポート層では、ネットワークを使用した通信の信頼性を向上させるための規格が定義されています。

 ネットワークを使用してデータを転送する場合、1度にデータの送受信ができなければ分割して送受信が実行されます。そのとき、受信側の処理能力が追いつかなければ、データが破棄されることもあります。または、ネットワークの遅延のために受信したという情報が戻ってこないこともあり得ます。このようなネットワーク上の問題を考慮し、解決策を定義しているのがトランスポート層ということになります(図3)。

図3 データを正確に送受信するための規格を定義するトランスポート層 図3 データを正確に送受信するための規格を定義するトランスポート層

第5層:セッション層

 セッション層では、送信元からどのように送信すれば送信先が効率的に受信できるか、通信経路はどの時点で確立し、切断すればよいかなどの手順が規定されています。手順だけでなくタイミングも規定されていることから、セッション層では通信セッションのスケジューリングも規定の対象になっています。

第6層:プレゼンテーション層

 プレゼンテーション層は、セッション層とアプリケーション層の間でコンピュータとエンドユーザーがそれぞれ理解できる言語に翻訳する「エンコーディング(符号化)」と「デコーディング(復号)」を行います(図4)。なお、プレゼンテーション層で定義されている変換規格は、文字データだけでなく、画像データや音声なども存在します。

図4 階層間で復号、複合化を行うプレゼンテーション層 図4 階層間で復号、複合化を行うプレゼンテーション層

第7層:アプリケーション層

 アプリケーション層は、エンドユーザーのアプリケーションにネットワークサービスを提供します。FTP(ファイル転送)やSMTP(メール送信)などのネットワークを利用した各種サービスのための規格が定義されています。

 ここまでの確認として確認問題を出題します。正解と解説は次のページにあります。

確認問題1

問題

 OSI参照モデルそのものに関する説明として正しいものを2つ選択しなさい。

a.異なるベンダの機器同士でも相互運用が可能になる

b.別のネットワーク環境に転送できる

c.通信エラーが発生したときのエラー検出が可能になる

d.ネットワーク動作を単純な要素に分解できる

e.信頼性のある通信の実現を可能にする

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