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» 2008年03月06日 00時00分 公開

ITアーキテクトが見た、現場のメンタルヘルス(7):社内論文の提出期限は3週間後。どうしよう! (1/2)

常にコンピュータ並みの正確さを要求されるITエンジニアたち。しかし、ITエンジニアを取り巻く環境自体に、「脳を乱す」原因が隠れているという……。ITアーキテクトが贈る、疲れたITエンジニアへの処方せん。

[樋口節夫,樋口研究室]

 皆さんが毎年立てる業務目標には、もしかして「論文や事例報告を提出する」という内容がありませんか。こう書いておくと、業務目標の書類にもハクが付きますね。

 ところが一度もそれを守ったことがない、それで上司に怒られたこともない、だから毎年、呪文のように書く。こういう人も多いと思います。

 でもこのように、大変な作業から逃げてばかりいると、これが皆さんのメンタルヘルスにマイナスのパワーを与える原因になることがあります。今回は、難しい作業への対処方法を考えます。

提出期限は3週間後……

 いつも樋口研究室オフィスに来る若手のSE(システムエンジニア)さんがいます。コンピュータの運用部に所属し、元気に仕事をしているこのSEは、よく「あと少しで主任になれそうです」と話しています。

 でも、仕事への不安も少しあるようです。運用部の役割は、コンピュータを止めずに動かすこと。開発部のようにプログラムを作成する作業はありません。SEは、自分の仕事はクリエイティブではないし、ITエンジニアらしくもないと感じています。

 そんなある日のこと、SEがいいました。「社内論文の提出期限が3週間後なのです。出さないとまずいのです……」

 皆さんも上司から、論文や事例報告を提出するようにいわれた経験があると思います。でも論文の執筆は、仕事が忙しいとできません。業務に比べれば、優先順位も低くなるでしょう。それなのに提出しないと「まずい」とは……。私はちょっと不思議に思いました。

 実はSEには、特別な事情がありました。SEはいいます。「主任への昇格には、3週間後に社内論文を提出することが必須なのです」

 SEの会社では、主任になると給与の昇給率がアップするそうです。早く主任になるほど、早く年収が上がります。だから早く主任になりたい、SEはそう思っていました。

 「提出を決めた時点では、期限まで半年ありました。だから大丈夫、そう考えていました」

 そうこうしているうちに月日がたち、期限が1カ月後に迫りました。しかし3連休が控えていたため、SEはそこで一気に仕上げてしまおうと考えていました。

 でも、予期せぬ事態は起こるものです。連休を前に、ご親族に不幸があったのです。悲しい出来事でしたが、連休があったため仕事に支障はありませんでした。でも論文はまったく書けていません。タイムアウトが近づいています。SEは焦り始めました。

 意を決し、ワープロソフトで文字を入力しようとしたそのときです。SEの手がピタリと止まりました。

 「一体私に、何が書けるんだ? そう思いました」

 SEはそれまで論文を書いた経験がなく、文章を書くこと自体苦手だと思っていました。それに開発部ではないので、論文に書く華やかな題材がないとも感じていました。そんな自分に、論文を書く能力があるのか? SEの脳は、完全にハングアップしました。そして私に相談を持ち掛けたのです。

 もっと早く相談してくれよ! 私も心の中で叫びました。でもSEは、何としてでもこの状況を乗り切らないといけません。

論文の題材を見つける

 私は考えました。SEは「経験や題材が不足している」といいますが、運用部の仕事はコンピュータの操作をするだけではないでしょう。ユーザー部や管理部の担当者と打ち合わせをしているはずで、それに関連するメールや報告書を書いた経験があるはずです。

 そこに論文の題材がないだろうか。私は探してみようと思いました。そこでSEに、ユーザーや管理者に文字や絵で何かを伝えた資料がないかを尋ねてみました。

 「う〜ん、作業の終了報告書とか……」

 なかなかよい題材が出てきません。そこで尋ね方を変えてみました。議論やけんかのもとになったような資料はないかと。するとSEはいいました。

 「それなら、障害報告書があります。毎週障害を集計して対策会議をしていますが、会議はかなり白熱します」

 「障害」という言葉を聞いて、これはいけるかもしれないと私は思いました。コンピュータは、正しく動いてこそ価値ある道具です。障害の先には、必ず対応策や解決策が存在します。それを論文の題材にできるかもしれません。私はSEに、それを記録した資料が残っているかどうか尋ねました。

 「はい、残っています。そういうのが私の仕事なので」

 すぐに私は、過去1年間の障害と対策の履歴を、できるだけ大量に収集するようにいいました。そしてそれを、まずはそのままワープロソフトに張り付けるように依頼しました。

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