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» 2008年03月06日 00時00分 公開

あなたの転職活動、デバッグすべし(14):COBOLエンジニアの苦悩、将来はない?

ITエンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。

[杉目雅之,パソナキャリア]

 「この前、OracleのRACを利用したんだけど……」

 「Rubyでの開発だとノウハウが……」

 「今度、Linuxの研修に行くんだけど……」

 これは、あるシステムエンジニアの会話の一部です。システムエンジニア同士の会話に多いのが、「最新の技術」や「流行の技術」の話題ではないでしょうか。雑誌で目に付いた技術であったり、参画しているプロジェクトで用いている技術の話かもしれません。そんな話を聞いて、焦った経験はありませんか? 特に自分がそういった技術を身に付けていない場合、将来に何となく不安を感じたりすることがありますよね。

 システムエンジニアとは、切っても切れない関係にあるのが「技術」です。しかし、どこまで技術を身に付ければいいのかは、どこにも書いていません。実際、私もシステムエンジニアの方からよくこの種の質問を受けるのですが、答えはありません。あなたがどういったキャリアプランを描いているのかによって、身に付けるべき技術も異なるのでしょう。

 今回は技術力に不安を抱え、技術力アップを考えられた近藤さん(仮名、31歳)の例をご紹介します。

メインフレームの経験だけでは不安

 近藤さんは私立大学を卒業後、金融系システムに強みを持つシステムインテグレータ(SIer)のD社に入社しました。大学では文系の専攻で、情報分野の学問と縁がなかったため、入社後に初めてコンピュータ言語を学ぶことになりました。近藤さんが学んだのはC言語でした。しかし新人研修後、配属されたのは金融系システムを開発する事業部のシステムエンジニアとしてで、その部署で使用していたのはCOBOLでした。

 配属後、4年間は証券会社向けシステムに関する保守プロジェクトに複数に従事され、ビジネススキルやシステム全般に関する基礎技術を身に付けられました。その後、地銀向けシステムの開発や中堅証券会社のシステム再構築に要件定義から参加するなど、順調にスキルアップ、キャリアアップをされていたようです。

 近藤さんは一貫して金融系のシステム開発に従事され、リーダー業務も経験されていましたが、悩みはメインフレーム環境の経験しかなく、使用言語がCOBOLとJCL(ジョブ制御言語)しかないことでした。

オープン系の技術を身に付けなければ不安

 もともと文系だったこともあり、近藤さんはあまり技術自体に興味がありませんでした。そのためこれまでは、業務で必要なればそれに応じて技術を身に付ければいい、という考え方で乗り切ってきました。

 しかし、プロジェクトの同僚や後輩との話題が技術の話になると、みんながメインフレームの経験しかないことへの不安を口にしています。IT系専門誌でもWebでも、オープン系の技術の解説ばかりです。こうなって初めて、近藤さんもこのままで今後もシステムエンジニアとしてのキャリアを積んでいけるのか不安になってきたそうです。そこで当社に相談に来られたのです。

 私自身は、近藤さんの経験は金融系システムエンジニアとしては順当で、このままスキルアップ、キャリアアップしていけばよいのではないかと感じました。COBOLエンジニアは、この10年ほどで若手を中心に随分と減りました。そこに2000年問題や2007年問題だので、その時々で需要があり、エンジニア数が減っているのと相まって、一定のスキル以上のCOBOLエンジニアであれば、オープン系エンジニアどころではない売り手市場になっているのです。

 転職市場においては、一貫して一定のスキル以上のCOBOLエンジニアであれば、要件定義前の段階でのクライアントとの折衝スキル(コミュニケーションスキル)や、大規模なプロジェクトでのマネジメント経験が重要視されます。しかも、この傾向は今後も変化はないでしょう。この考えを近藤さんに伝えました。また、それらのコミュニケーションスキルやプロジェクトマネジメントスキルがあれば、どんな案件があるかもご紹介しました。それでも、近藤さんの不安を払うことはできませんでした。

 結局近藤さんは、心のどこかでオープン系のシステム開発との接点があり、その技術を身に付けたい、そういう可能性を模索したい、という要求が強かったのです。確かにいまのままでもいいのかもしれない。しかし近藤さんは、新しい世界にリスクはあっても飛び込みたいようです。

システムエンジニアの価値とは

 そこで私も方針を変更し、近藤さんの要望に沿って、オープン系に触れることのできる求人案件を中心に紹介しました。

 その中で近藤さんが興味を持たれたのは、メインフレームからオープン系システムへのリプレースに携われる求人でした。これまでの経験を生かしつつ、オープン系システムに携われることから、この求人のほか、似たような求人にいくつか応募することになりました。

 選考の結果は、複数社からのオファー提示。そこで職務内容と待遇面のすり合わせのため、近藤さんとともに各社を訪問しました。

 企業による近藤さんへの評価は、金融系システムに携わった経験やプロジェクトリーダー経験の部分であり、技術的な部分に重きを置いたものではありませんでした。内定を出したある企業は、近藤さんをアサインしようとしているプロジェクトを示してくれました。それはネット証券会社のトレードシステムの案件(パッケージの導入)でした。その企業の方によると、これまでのプロジェクト経験から、まったく異なる分野のパッケージ導入であっても、プロジェクトマネジメントを十分できると判断されたとのことでした。

 ここに至り、近藤さんも技術力だけがシステムエンジニアの評価ではないことに気づかれたようです。その結果、金融系の業務知識を強化できる金融系のパッケージベンダに転職することに決めました。

危機感だけが先走り

 近藤さんのように、転職活動中に企業からの評価に転職希望者が驚かれることが多々あります。

 どうやら皆さん、自分が身に付けてきたスキルを自分自身で正当に評価できないようですね。よっぽど求人企業の方が冷静に、しかもきちんと評価されているように思います。

 なぜこういったことが起きるのでしょうか。それは、自分が目指すキャリアパスがイメージできておらず、またそこに必要なスキルを把握できないためではないでしょうか。

 先ほどの近藤さんの例を思い出しましょう。あるとき、皆がメインフレームの経験しかなく、雑誌やWebにはオープンソース系の記事しかないことに危機感を持ったことが、転職のきっかけとなりました。実はこの焦りが、自分自身を見る目を鈍らせてしまったのです。

スキルはキャリアプラン次第

 これからのシステムエンジニアがうまくスキルアップ、キャリアアップするポイントは、早い段階(できれば20代後半まで)に自分のキャリアプランを明確にし、それに対して不足しているスキルを身に付けられる環境に身を投じることです。それが所属する企業で身に付けることができないようであれば、転職も1つの選択肢となるのではないでしょうか。

 このように、スキルアップ、キャリアアップのポイントは、その方のキャリアプラン次第です。ただ気が焦る、その気持ちは分かりますが、慌てず、いま一度、自分自身と向き合いましょう。落ち着いて自分を分析すれば、その向こうに何かが見えると思いませんか。焦るのは、それからでもいいのではないでしょうか。

 今回でこの連載は終わります。これまで、ご愛読ありがとうございました。

筆者紹介

パソナキャリア

杉目雅之

東京都出身。大学卒業後、銀行の情報システム子会社にて金融系のシステムエンジニアを経験した後、パソナキャレント(現パソナキャリア)に入社。以来、キャリアアドバイザーとして、一貫してIT業界の方の転職サポートを行っている。


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