「ホワイトボックスに勝てる」大規模データセンターサーバ、IBMスペースと電力も大幅に節約

» 2008年08月05日 00時00分 公開
[三木泉,@IT]

 日本IBMは8月5日、大規模データセンター用途向けに特化したサーバ・ソリューション「iDataPlex」を国内発表した。専用のラックと専用のサーバ筐体(きょうたい)を使用し、サーバ機と周辺機器を高密度に構成できる。

米IBM IBMシステムズ&テクノロジー・グループ モジュラー・システム・プラットフォーム ブランド・マネジメント担当バイス・プレジデントのジム・ガーガン氏

 iDataPlexで日本IBMが狙うのは、数百〜数千台のサーバを必要とするWeb 2.0系サービス、クラウド・コンピューティング・サービス、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)、金融シミュレーションなどのニーズ。大量のリクエストに応えるため、あるいは大規模な演算処理のために、とにかく多数のコンピュータを並列的に動かさなければならないユーザーが対象だ。

 こうしたユーザーは、ホワイトボックスのコンピュータを多数導入し、そのうちの一部が壊れていても全体として大量の処理が行えればいいという前提で運用していることが多い。1つ1つのハードウェアの信頼性よりも、低コストで利用できることが最優先課題だ。だが、iDataPlexはホワイトボックスと十分競争できる、と米IBMのIBMシステムズ&テクノロジー・グループ モジュラー・システム・プラットフォーム ブランド・マネジメント担当バイス・プレジデントのジム・ガーガン(Jim Gargan)氏はいい切る。

 「iDataPlexは非常に低いコストを念頭に設計されている。ファンや電源装置など、ハードウェアにおける冗長構成をしないことで、コストを大きく下げた。iDataPlexではサプライチェーン全体の最適化も行っている。iDataPlexのすべての製品は中国の1拠点で大量生産されている。製造拠点の集中化で驚くほどコストが下がった。従ってわれわれは、ホワイトボックスと価格で競争できると信じている。IBMの品質や革新、ノウハウをホワイトボックスと基本的に同じ価格で買えるなら、だれがホワイトボックスを買うだろうか」

 iDataPlexでは、同社の安価なタワー型サーバと同一のマザーボードを採用し、これをカートリッジ化して、ハードディスクとともに2Uあるいは3Uサイズのシャーシに収め、専用ラックに搭載する。最も量産効果の高いマザーボードを用いることにより、価格を抑えるとともに、新たなCPUが登場した場合にも早期に対応できるようにしている。

 2Uのシャーシには2枚のマザーボード・カートリッジを組み込める。電源装置やファンはマザーボード単位でなく、シャーシ単位で装備するため、これらの利用効率を上げて電力消費量を減らすことができる。

 iDataPlexにおけるラックは一般的なラックと同サイズだが、これを横開きにして、2列に分けて用いている。つまりラックに搭載するシャーシの奥行きは、通常のラックの幅とほぼ同じだ。また、支柱部分にはイーサネットスイッチなどを埋め込めるようになっている。これにより、標準19インチラックサイズでありながら100U、シャーシは最大84個組み込める計算だ。

1ラック当たり最大672コアまで搭載可能

 iDataPlexでは、ラックの奥行きを浅くすることで、ファンによる冷却効果も高めている。これに加え、ラックの背面には水冷式の冷却扉「IBM Rear Door Heat eXchanger」を備え付けられる。この冷却扉は100%以上の冷却効果があり(つまり冷却扉を通過後の排気よりも室温のほうが高い)、データセンター全体の空調も、コールドアイル/ホットアイルの設計も不要になるという。これにより、通路を狭くして、データセンターにより多くのラックを詰め込めるようになる。

 日本IBMでは、iDataPlexにおける電力節約のためのさまざまな工夫で、ラックあたりの光熱費を年間37万円節約できるとしている。

 日本IBMはiDataPlexを直販で提供していく。各顧客のニーズに合わせた構成でラックを組んで、スイッチを入れればすぐに稼働する状態で納入するという。大規模なISP/ASPをはじめ、NTTやソフトバンクIDCのような通信/データセンター事業者などに採用を働きかけていきたいと、日本IBM 理事 システム製品事業 モジュラー・システム事業部長の諸富健二氏は話した。「海外の金融機関のアジアにおけるデータセンターで採用され、これが国内の金融機関に広がっていくことも期待できる」という。

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