滋賀限定、残業なし、社内SE。そりゃ苦戦するでしょう転職活動、本当にあったこんなこと(20)(2/2 ページ)

» 2008年08月12日 00時00分 公開
[藤本健アデコ]
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26歳、プログラマ。上流工程で仕事したい!

 もう1つの事例をお話しします。

 吉永さんは大阪府在住の26歳。業務系システム開発企業で働くプログラマで、規模は小さめですがいろいろなシステムの担当をしています。

 この会社は、社員数20人規模のベンチャー企業です。3次請けの位置にあり、ソフトハウスの協力会社としてメーカーに常駐し、会計システムの開発に携わっていました。吉永さんは、一緒に仕事をしている元請け企業の社員の活躍ぶりを見るにつれ、いずれは上流工程にかかわりたいと思うようになり、転職を意識し始めました。

 そんな折、同僚が転職しました。同僚の転職成功話を聞いた吉永さんは、「いますぐ動こう!」と思ったそうです。人材紹介会社を何社か教えてもらい、その中の1社として、私は吉永さんと会うことになりました。

 長期的なキャリアプランを考えていた吉永さんは、「まずはSEを目指し、キャリアを積んでから、さらに上にチャレンジしたい。自分の背丈に合った中堅クラスの企業で働きたい」と、希望を話しました。

 そこで私は、中堅企業の中でもある程度上流にかかわれるところを紹介しました。その中から3社に応募。年齢が若いこと、会計システムに精通していることから、さっそく2社から面接の連絡が来ました。ほかの紹介会社経由でも応募し、吉永さんは計7社の面接試験を受けました。そして、見事4社から内定を獲得。おめでとうございます! となるはずでした。

「こんなに内定が出るとは思わなかった……」

 しかし、吉永さんからは思いもよらないメールが来ました。「考えた結果、内定を全部辞退します」と……。理由はこうでした。

  • こんなに内定が出るとは思わなかった
  • もしかしたら、自分は思っていたより能力があるのではないか
  • もう1つ上のランクの企業にチャレンジできるのではないか

 吉永さんの気持ちは動きませんでした。私は吉永さんの要望をかなえるべく、内定辞退の連絡を入れ、大手システムインテグレータを中心に紹介。少々の不安を感じながらも、再び転職活動のサポートを始めました。

 しかし……。書類選考は通過するものの、競争倍率が高いこと、経験したプロジェクトの規模の小さいことがネックになり、内定どころか1次面接でNGが連発する事態になってしまいました。

 さて、仕切り直しです。もう一度、初心に帰りましょう。吉永さんと話をしました。

藤本 転職活動を始めたときに考えていたキャリアプランは、どのようなものだったでしょうか。

吉永 長期的に成長できるように、まずは背伸びせず、無理なくキャリアが積める企業に入社して頑張ろうと思っていました。少々、欲が出過ぎました。

藤本 自身のキャリアの棚卸しをして、志望する企業のボーダーラインを作っておかないといけませんね。

吉永 確かにそうですね。

藤本 もう一度、内定辞退をした企業も含めて検討してみましょう。必ずぴったりの企業が見つかるはずです。

 吉永さんは最初の思いを取り戻し、再び転職活動を始めました。内定辞退した企業への再挑戦は果たせませんでしたが、無事に大手システムインテグレータの子会社から内定を得て、新しいスタートを切ることができました。

 現在はシステムエンジニアとしてキャリアを積むべく、忙しくも充実した日々を送っているとのことです。

転職活動にも「落としどころ」が必要

 この2つは、まったく内容の違う事例に見えますが、実は共通点があります。それは「落としどころ」です。

 条件面にこだわりすぎると、自らの視野を狭めてしまい、チャンスも少なくなります。また、自らを省みずに無謀な挑戦をしてしまうと、成功は遠のいてしまいます。

 大川さんはこだわりを少し減らし、範囲を広げることによって落としどころを見つけました。吉永さんは自分のキャリアの棚卸しをし、志望企業のボーダーラインを設定することで落としどころを見つけました。結果として2人とも、納得できる転職ができたのです。

著者紹介

アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント

藤本健

兵庫県出身。大学卒業後、物流・流通業界に約8年間在籍。ソリューション営業や、数多くの流通システムの導入などを手掛ける。アデコ入社後、ITエンジニアを中心にキャリアコンサルティングに従事。前職の経験とキャリアコンサルタントの両方の視点から、個人のニーズに適したコンサルティングを心掛けている。



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