自分を取り巻く環境分析キャリアデザインを考える(3)

» 2008年09月24日 00時00分 公開

絶えず納期に追われている忙しいITエンジニアにとって、立ち止まって自分の将来を考える時間や余裕はあまりないかもしれない。だが、将来の見通しが立っていると、目標に向けて努力する手助けや、将来への不安を払拭するお守りにもなる。本連載では、個人が自分のキャリアを構築する方法をお届けする。ITエンジニアが幸せに働き続けるための手引きとなればと思う。


 @IT自分戦略研究所(自分戦略研究室)では、自己実現を図るための支援の1つとして、業界動向のコンテンツを提供している。「自分は何をしているときに幸せか」「何がしたいのか」「自分とは何なのか」というアイデンティティにかかわる問い掛けへの答えは、社会との接点なしでは生まれてこないからだ。

 そこで、今回は、自分を取り巻く環境分析に着眼したい。

自分を取り巻く環境

 自分を取り巻く環境には何があるか。また、それにどう対処すればよいか。

●業界、企業、職場

 自分の所属している業界や企業、職場の環境変化を事前に察知するには、企業の海外進出、吸収合併、新規事業への参入、リストラなど、世の中の動きをチェックしておかなければならない。

 サブプライムローンの破たんが引き金となった現在の世界的金融危機は、米国を主要取引先としているインドのIT産業へ大きな打撃を与えている。今後、インドのIT企業は、新たな市場として日本市場にも多く参入してくることが予想される。

 上記では「インドから日本へ」という可能性について触れたが、同時に「日本企業の海外での事業展開」も増加している。日本企業のグローバル展開を組織・人事コンサルティングを行っている小平達也氏は「会社が海外進出したら? ITエンジニア、5つの備え」で、日本の内需産業の海外進出に伴い、「情報システム部のグローバル対応」が課題となっていることも指摘している。

●技術

 変化の激しいIT業界で働くエンジニアにとって、新しいスキルの習得はもはや義務だといってもいい。「身に付けたいスキル、何ですか?」では、2007年の@IT自分戦略研究所読者調査の結果を元に、ベンダ資格、国家資格、ベンダニュートラル資格の人気度合いを分析した。

 「2007年秋、スキルの最新動向を知ろう」では、人気のあるスキルを教育ベンダ3社に取材した。どちらの記事にも最近の技術トレンドが現れているので、資格取得の参考にしていただきたい。

●人間関係

 開発プロジェクトはチームで行われる。人間関係は見過ごせない環境要因だ。「ITエンジニアのための ビジネスコミュニケーション力診断」では、上司や部下、顧客とのビジネスコミュニケーション術を診断テストを用いて解説している。

 家族や恋人などプライベートにおける人間関係は、キャリアデザインに大きく影響する。以下で引用した記事は、転職活動の最終面接において、妻の仕事の都合で転勤を拒否したため、不合格になった人の事例を紹介したもの。事業内容や職種では希望どおりの企業だったのだが……。担当したキャリアコンサルタントは、彼に問いただす。

 何が幸せかは、本人にしか分からない。

環境分析の手法、SWOT分析

 外部環境がわれわれにもたらす機会や脅威を分析する際、有効な手法の1つにSWOT分析がある。

 「次世代のスキル構築コンセプトとは」で三輪一郎氏は、「SWOT分析などの戦略立案手法を参考にしながら、過去の経験に照らして自己の強み・弱みを客観的に認識できれば、現在位置がより明確になる」と述べている。

 SWOT分析の詳細については、「ITILはまずSWOT分析から始めよう」を参考にしていただければと思う。

なぜ変化する環境へ追随するのか

 ところで、環境の変化に追随する必要はない場合もある。堀内浩二氏は、次のような問題提起をしている。

 堀内氏は、将来は予測できないとし、潮流のもたらすものを漠然と考えていても仕方がないと指摘する。逆に、自分がやりたい挑戦、下すべき決断を先に決め、それに関連する潮流は何かを考えるというアプローチを提案している。

自分は環境を変え得る存在

 自分を取り巻く環境の変化に応じてキャリアプランを変える、自分の生き方に環境の変化を従わせるという方法以外に、もう1つ、「自分で環境を変える」という選択肢を忘れてはいけない。われわれは国や業界、企業など大きな環境を前に、自分1人でそれらを変化させることにしり込みしてしまう。だが、それは自分の可能性を狭めることになるかもしれない。「自分のキャリア・アップのために身近な環境を変えよう、その環境から自由になろうと考え、それを実行に移すという思考、発想と行動力を持ちうるならば、その思考、発想、行動力をほんの少し大きな対象に向けるだけで、自分の生活するもっと大きな環境も変えうることができるのです」(碓井慎一氏、小林剛氏「キャリアデザイン発想法」)。

 どんな環境でも、やりたいことのためには行動あるのみ。究極の自己実現を手に入れよう。

次回“人生設計”

 次回はいよいよ、キャリアデザインにおいて最も重要なプロセス、人生設計に突入する。

参考資料
「キャリアデザイン」(社団法人 日本経営協会)
「キャリアデザイン発想法(生き方ルールブック)」(PROSEEK)


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