Mashup Awards授賞式レポート マッシュアップ+ひとひねり=MA4の受賞作D89クリップ(1)(3/3 ページ)

» 2008年10月23日 00時00分 公開
[仲里淳@IT]
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ブログ大国の日本で可能性を感じさせる「emo」

優秀賞
サービス名:emo[エモ] - ブログを書いたら自分がわかった!
作者:クロスワープ
URL:http://blog-emotion.com/emo/

emoで岸部シローのブログ「岸辺四郎の四郎マンション」を分析した結果。ちょっと微妙な結果か? emoで岸部シローのブログ「岸辺四郎の四郎マンション」を分析した結果。ちょっと微妙な結果か?

 emoは、ブログの投稿内容を基にブロガーの性格分析を行うサービス。ブログパーツとしてブログに設置して利用し、ブログごとに独自の表情を持った「顔(キャラクター)」を生成することで楽しさや面白さを演出している。

 ブロガー本人も意識していなかった傾向や新しい一面が見えてくるという「気付き」をもたらすためのサービスとして制作されたという。性格を16パターンに分類したり、頻出キーワードを「口ぐせランキング」として表示したりできる。

 マッシュアップとしては、kizasi.jpが提供するAPIから流行語を取得してブログ投稿のキーワードと照らし合わせることで、ブロガーの流行感度分析などを実現している。クロスワープはバイラルプロモーションとその分析を本業としており、形態素解析をはじめ高度な技術が盛り込まれているという。

デモを行うクロスワープの鈴木氏。「しょこたんブログ」の分析結果を例に機能を解説 デモを行うクロスワープの鈴木氏。「しょこたんブログ」の分析結果を例に機能を解説

 「分析に利用する辞書のメンテナンス作業が大変だったが、ユーザーに喜んでもらえるサービスを提供するために努力してきた。リリース当初はボロボロだったが、多くのユーザーからのご意見や励ましによってブラッシュアップすることができた」(クロスワープ 鈴木“J”修一)

 デモでは、「しょこたん」こと中川翔子さんのブログ分析結果を紹介。性格は「自己の思いで行動するベイビータイプ」で、口ぐせランキングには「ギザ」や「カワユス」といったキーワードが並んだ。

 emoのサイトでは、有名タレントやスポーツ選手の分析結果を見ることができる。データ量が少ないせいか意味不明なレポートも多いが、話のネタにしやすい楽しみながら使えるサービスといえる。

バランスWiiボードとiPhoneをUIにした「AIR SANPO」

Any Device賞
サービス名:AIR SANPO
制作者:uranodai
URL:http://www.vimeo.com/1742059

AIR SANPOのサイト。クライアントアプリがダウンロードできるほか、使っている様子のムービーが見られる AIR SANPOのサイト。クライアントアプリがダウンロードできるほか、使っている様子のムービーが見られる

 最後にもう1つ、最優秀賞にノミネートされなかったものの、デバイスを組み合わせたサービスとしてAny Device賞を受賞した「AIR SANPO」を紹介したい。Webの画面だけにとどまらない、UIの広がりと可能性を示したという意味で、デザインハック的にも注目の作品だ。

 AIR SANPOは、任天堂のWii Fit用コントローラーとして知られるバランスWiiボードやiPhoneを入力デバイスとして、Googleマップのストリートビュー上を仮想散歩するというもの。

 クライアントはAdobe AIRで実装しており、iPhoneのタッチインターフェイスでストリートビューの視点を操作し、ボード上で歩いた動作をBluetooth経由で受け取ってWebに送信することで「散歩」が実現する。まさにデバイス同士もマッシュアップされており、Any Device賞にふさわしい作品になっている。

デモを行うuranodai氏。iPhoneを操作するとストリートビューの画面がグリグリと動く様子は圧巻 デモを行うuranodai氏。iPhoneを操作するとストリートビューの画面がグリグリと動く様子は圧巻

 会場では特別デモとして、uranodai氏自身によるAIR SANPOが披露された。対応デバイスがないと利用できないが、デモ動画を見ればそのユニークさは感じられるだろう。

 ちなみにAIR SANPOという名前は、散歩している“ふり”の“エアー”(エアーギターなどの“エアー”)と、クライアントアプリをAdobe AIRで実装していることに由来するとのこと。

応募作品の量、質ともに高まり腕試しの場として定着

 式の最後には、サン・マイクロシステムズの藤井彰人氏が審査講評を述べた。今回の傾向として、単にAPIを寄せ集めだけの作品は減ってきたことや、個人だけでなく企業として参加し、実際に提供中のものに新たにマッシュアップで機能を付加した作品が増えてきたことが挙げられた。最優秀賞の審査では意見が分かれ、審査時間ギリギリまで議論が続いたという。

Mashup Awardsではおなじみサン・マイクロシステムズの藤井彰人氏 Mashup Awardsではおなじみサン・マイクロシステムズの藤井彰人氏

 「日本発のプラットフォーム的なサービスというのは、なかなか世界では注目されにくい。そんな中で、Chamapは面白い可能性を持っている。UIがまるでゲームのようだが、これはまさに日本が得意とする分野で、そういった点が選定の決め手となった」(藤井氏)


 「Web 2.0」ブームとともに広まった「マッシュアップ」という言葉と手法。回を重ねるごとに量、質ともに高まってくるMashup Awardsを見ていると、それがもはや流行語や中身のないサービスもどきではなく、新しい価値を持ったWebサービスをつくり出す手法として確立したことを実感する。また、エンジニアやクリエータがアイデアや実力をアピールする腕試しの場としても、このコンテストが定着してきたように思える。

 審査員を務めたチームラボの猪子寿之氏は、授賞式後に行われた懇親会のあいさつで「会社とか組織に所属していなくても、エンジニアとクリエータだけでサービスは作れるし、世界を変えられる」とエールを送った。

 ChamapのKentaro氏やNewsgraphyの浜本氏などのように「1人でWebサービス開発」という人は少なくないし、1人でも素晴らしいサービスは作ることができる。それを支えるものがマッシュアップという手法であり、自由に使えるAPIの存在である。今後も、優れたWebサービス誕生のために多くのエンジニアやクリエータ、そしてAPI提供者が増えることを期待したい。

 最後に、今回紹介したもの以外にも数多くの素晴らしい作品が応募された。それらの作品を自分で実際に触って試してみてほしい。

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