Windows Azure/Azure Services Platformとは何か?特集 Windows Azure概説(3/3 ページ)

» 2008年11月19日 00時00分 公開
[一色政彦,デジタルアドバンテージ]
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■3. Azure Services Platformの概要

マイクロソフトが提供するクラウド環境「Azure Services Platform」

 前述したように、Azure Services Platformは、Windows Azureに加え、(従来型コンピューティングにおける.NET Frameworkの役割に相当する)ビルディング・ブロック・サービスを含む、マイクロソフトのクラウド・コンピューティング環境を示す。

 ビルディング・ブロック・サービスでは、主に、エンタープライズ向けの機能、業務アプリケーションに必要な機能群(例えばID管理やワークフローなど)が、以下のようなオープンなWeb標準技術をベースに提供されており、それらの機能を個別もしくは複数を組み合わせて利用できる。

  • HTTP/HTTPS
  • REST(REpresentational State Transfer)
  • SOAP(Simple Object Access Protocol)
  • RSS(Really Simple Syndication)
  • AtomPub(Atom Publishing Protocol)

 特に、既存のオンプレミス・アプリケーションをクラウドに拡張する場合には、ビルディング・ブロック・サービスを利用することで(業務アプリケーションに必要な開発を一部省けるので)開発コストを抑えられるだろう。

 このビルディング・ブロック・サービスとしては、現在のところ、

  • .NET Services
  • SQL Services
  • Live Services
  • SharePoint Services
  • Dynamics CRM Services

という5つのサービスが公表されている。以下では、それぞれの内容を簡単に紹介していく。

.NET Services

 Microsoft .NET Servicesは特にエンタープライズ系のクラウド・サービスで必要となる機能を提供するサービス群で、具体的には次の3つのサービスで構成される(現在、すでに開発者向けの.NET Services SDKが提供されている)。

  • Access Control
  • Service Bus
  • Workflow Service

 これらのサービスを活用することで、オンプレミス環境とクラウド環境の連携が容易になり、先に述べたソフトウェア+サービスを実現しやすくなる。

 以下で、各項目についてもう少し説明しておこう。

Access Control

 Microsoft .NET Access Control Service(以降、アクセス・コントロール・サービス)は、Active Directoryなどのエンタープライズ・ディレクトリ・サービスや、Windows Live IDのようなWebで標準的なIDプロバイダと統合しながら、クラウド・サービスでのアカウント認証を制御するための簡単な方法を提供する。

Service Bus

 Microsoft .NET Service Bus(以降、サービス・バス)は、いわゆる「サービス・バス」のインターネット版で、インターネットを経由してアプリケーション同士を容易に連携できるようにするためのサービスだ。クラウド・サービスをサービス・バスに登録することで、ネットワーク・プロトコルの違いやセキュリティ、組織境界を乗り越えて、さまざまなサービスにつなげられる。

Workflow Service

 Microsoft .NET Workflow Service(以降、ワークフロー・サービス)は、クラウド・サービス群のワークフロー(いわゆるオーケストレーション)を実行するためのサービス。ワークフロー設計自体はVisual Studio 2008のワークフロー・デザイナを使って簡単に設計でき、ツールやAPIによりワークフロー・インスタンスの実行を展開、管理、追跡できる。ワークフローのスケールも可能だ。

SQL Services

 SQL Servicesは、クラウド向けのデータ・プラットフォームである。その第一弾として、Webベースの分散データベース・サービスである「Microsoft SQL Data Services」(以降、SDS)がCTP版で提供されている(現在、SQL Data Services SDKがすでに提供されており、SDSの開発を試せる)。

SQL Data Services

 SDSはWeb標準のREST/SOAPインターフェイスを採用しており、オンデマンドでデータにアクセスでき、クラウド環境による高いスケーラビリティを持つ。SDSは、SQL ServerデータベースとWindows Serverテクノロジの上に構築されており、高い可用性とセキュリティを持つことから、エンタープライズ業務アプリケーションに最適なリレーショナル・データベース・サービスといえる。

 なお、非リレーショナルなデータ・サービスとしては前述のWindows Azure Storage Servicesがある。

Live Services

 Live Servicesは、Windows Liveなどが管理しているユーザーのデータやアプリケーション・リソース(写真や地図データなど)を扱うためのサービスである。マイクロソフトによると、Live Servicesにより4億のWindows Live IDユーザーにリーチ可能である。さらにデバイス間でデータの同期が行えるMeshサービスも利用できる。Live ServicesにアクセスするためのフレームワークとしてLive Frameworkが提供されている。

SharePoint Services

 Microsoft SharePoint Servicesは現時点では提供準備中だが、クラウド・サービスからSharePointのコラボレーションとドキュメント共有の機能にアクセスできるようになる。

Dynamics CRM Services

 Microsoft Dynamics CRM Services も現在、提供準備中であるが、クラウド・サービスからMicrosoft Dynamics CRMの強力な顧客関係構築の機能にアクセスできるようになる。


 以上がWindows AzureおよびAzure Services Platformの概要だ。より詳しい情報については、本稿が掲載されている「.NET未来展望台」コーナーの今後の記事展開にご期待いただきたい。また、また冒頭でも紹介したように、日本向けのPDCともいえる「Tech・Days Japan 2009」が1月27日〜28日に開催予定であり、こちらに参加すれば、より効率的に情報を収集できるだろう。


 現在、金融危機と相まって、クラウド・コンピューティングのコスト削減部分ばかりが大きくクローズアップされがちで、それによって、多くのITエンジニアは現在のビジネスにマイナスな影響ばかりに感じられているかもしれない。しかしそれだけではなく、クラウド・コンピューティングという技術革新がもたらす新しい世界では、これまでにない新しい価値が生まれてくのではないか。筆者はそんなIT(情報技術)世界の未来の可能性を信じている。

 クラウド・コンピューティングは、インターネットをハブとして、さまざまなものがつながる世界でもある。情報システム(の各種プログラム)がサービスとしてつながり、PCや携帯電話などの各種端末がデバイス・メッシュとしてつながり、人々がソーシャル・メッシュとしてつながる。そして、このような世界だからこそ生きる、まったく新しいテクノロジが誕生してくる可能性も高いのではないだろうか。

 中小企業やコンシューマの市場から始まったクラウド化の波は、(Windows Azureにより)ついにエンタープライズ環境にまで押し寄せてきており、この流れはますます加速する一方だ。もうわれわれの多くはこの波に乗らざるを得ない状況になりつつあるように感じる。

 いま、マイクロソフトはわれわれが自由に飛び立てる空として“Azure”という環境を用意してくれようとしている。次はわれわれが未来の可能性に夢を見つけ、この広い空に向かって思い思いに羽ばたいていく番だ。この飛翔に備えよう。

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