行動しながら考える。イバーラ博士の型破りな転身術エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門(8)(2/2 ページ)

» 2008年12月16日 00時00分 公開
[松尾順シャープマインド]
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イバーラ博士の、9つの型破りな戦略

●型破りな戦略1 行動してから考える

 行動することで新しい考え方が生まれ、変化できる。自分を見つめても新しい可能性は見つけられない。

 まず一歩踏み出して違う道を試してみる。行動を起こした後、その結果を振り返り(フィードバック)、自分の本当の考え方や気持ちをはっきりさせる。新しいキャリアへの道を分析したり、計画を立てたりしない方がいい。

●型破りな戦略2 本当の自分を見つけようとするのはやめる

 「将来の自己像」を数多く考え出し、その中で試して学びたいものいくつかに焦点を合わせる。

 じっくり考えることは大切だが、試さないためのいい訳として利用されがち。自分がどんな人間かを考えるより、欲しいと思っているものが本当に欲しいかどうかを検討する方が重要になる。行動すれば、自分の言動から自分を理解する機会が得られるし、学ぶたびに予想を修正できる。

●型破りな戦略3 過渡期を受け入れる

 執着したり手放したり、行動に一貫性がなくてもいいことにする。早まった結論を出すよりは、矛盾を残しておいた方がいい

 キャリアチェンジを実践するまでの何年かは、苦痛や不安、混乱、疑念がどうしても伴う。かなりつらいことだが、目標をすぐには達成できないと分かってもあきらめないこと。急いで結論を出さないように気を付けた方がいい。特に、唐突に転職を打診された場合には注意する。新しいものへ移行するには時間がかかるものと考えておこう。

●型破りな戦略4 「小さな勝利」を積み重ねる

 「小さな勝利」を積み重ねることで、仕事や人生の基本的な判断基準がやがて大きく変わっていく。一気にすべてが変わるような大きな決断をしたくなることもあるが、そうした誘惑には耐えよう。曲がりくねった道を受け入れよう。

 小さな一歩が大きな変化を導く。最初から正しい「答え」を見つけようとして、時間や気力、お金を無駄にしない方がいい。押せば劇的な変化が得られる「レバー」はない。初めに試したことですぐに変化を遂げられる人はほとんどいない。直線的に進もうと考えないこと。

●型破りな戦略5 まずは試してみる

 新しい仕事の内容や手法について、感触をつかむ方法を見つけよう。いまの仕事と並行して実行に移せば、結論を出す前に試すことができる。

 最初からこれだと決め付けるのではなく、副業や一時的に試す方法を考えてみる。本気で追求するが、決断は後にする。必ずいくつかの選択肢を試して、経験を比較してから選ぶ対象を絞るようにする。

●型破りな戦略6 人間関係を変える

 仕事以外にも目を向ける。あんなふうになりたいと思う人や、キャリアチェンジを手助けしてくれそうな人を見つけだす。

 いま持っているネットワーク(人脈)の外にアンテナを突き出すようにする。

目指したいものを気付かせてくれる人、別の働き方やライフスタイルの実例を見せてくれる人など、手本になる人を見つける。

●型破りな戦略7 キャリアチェンジのきっかけを待たない

 キャリアチェンジのきっかけを待っていてはいけない。いま経験している変化の意味を見いだすようにする。

 キャリアを大幅に方向転換するには、3年から5年かかる。大きな転機がある場合、後半に訪れることが多い。この過渡期の間、触発される決定的なきっかけを待つのではなく、すべてのものを何らかのきっかけととらえ、その意味を考える。自分の物語(自己像についての)をつくり、人に何度も話してみる。

●型破りな戦略8 距離をおいて考える。だが、その時間が長すぎてはいけない

 考えに行き詰まって、どうしたらいいか分からなくなったら、変化の動機や過程ばかりを思い詰めている状態から離れてみよう。

 1日郊外に出掛けるといった短い休息でも、考え方の習慣がもたらす一面的な見方を外すことができる。ただし、離れている状態を長く続けない方がいい。自分の可能性を見つけるには、実際の社会に前向きに参加し、現実から影響を受けていくしかない。

●型破りな戦略9 チャンスの扉をつかむ

 変化は急激に始まるもの。大きな変化を受け入れやすいときもあれば、そうでないときもあるから好機を逃さない。

 チャンスの扉は開いたり閉じたりする。例えば、何かの講座を修了した直後や新しい職務を引き受けたとき、節目となる誕生日などは、絶好の機会として一歩を踏み出すために利用する。

参考文献
▼『ハーバード流キャリアチェンジ術』
ハーミニア・イバーラ著、金井壽宏監修・解説、宮田貴子訳

筆者紹介

松尾 順(まつお じゅん)

 1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける一方、キャリア理論や心理カウンセリング、コーチングを学び、主に個人を対象とするキャリアアドバイザーとしての仕事を増やしてきている。顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。



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