青色、白色、どっちがお得? 確定申告の選択肢フリーエンジニアの「知れば得する」確定申告講座(2)(1/2 ページ)

確定申告直前にお送りする「知れば得する」確定申告講座。フリーとして活躍するITエンジニア向けに、確定申告で賢く節税するコツをまとめた。

» 2009年02月10日 00時00分 公開
[森嶋卓也@IT]

 前回、「税務署に疑われない『必要経費』の区分」に引き続き、フリーエンジニアのための確定申告による節税のポイントを紹介する。

 フリーエンジニア(個人事業主)が確定申告を行う場合、いくつかの選択肢がある。これらの選択肢ではどちらを選ぶべきなのか。前回に引き続き、公認会計士の深作智行氏に聞いた。

青色申告のメリット

 「青色申告」という言葉をよく聞くが、これにはいったいどんなメリットがあるのだろうか。

 青色申告とは、「一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取り扱いが受けられる個人事業主」(深作氏)になることだという。きちんと記帳し、税務調査などのときには提出できるようにしておく必要があるが、その分、有利な扱いを受けることができるわけだ。

 ただしいま、今回の2008年分の申告から「青色にしたい」と思ってもそれはできない。青色申告者になるには、その申告年の3月15日までに青色申告の承認申請書を出す必要があるからだ。だから2008年分に関しては、2008年3月15日までに税務署に書類を出す必要があったのである(新規開業の場合は開業から2カ月以内)。

 現在、白色申告のフリーエンジニアは、今回の申告で青色申告の方が得かどうかを計算し、もし得だと判断できれば、確定申告のついでに青色申告の承認申請を行えばよいだろう。

 深作氏によれば、青色申告にはいろいろなメリットがあるが、とりわけ効果があるのは次の3点だという。

(1)事業に専従している家族に給料を払うことができ、これを必要経費にできる(青色事業専従者給与)

(2)所得から最大65万円を差し引くことができる(青色申告特別控除)

(3)損失が発生しても翌年に繰り越すことができる

 (1)は妻・夫や子などを従業員扱いにし、その給与を必要経費にできる仕組みだ。所得税の税率は累進課税(5%〜40%)なので、所得が大きければ大きいほど高い税率が適用され、税額も大きくなる。例えば3000万円の収入があったとき、妻に800万円、息子に500万円の給与を支払ったことにすれば、1300万円は必要経費になる計算だ。本人の所得はこの段階で1700万円になる。

 この場合、妻や子どもはそれぞれ所得税を支払う必要がある。しかし3000万円にかかる所得税の税率と800万円、500万円の各所得に対する所得税の税率は異なるから、事業主1人の場合の税額よりも、家族全体に分散した税額の合計額の方が安くなる場合が多く、その分お得というわけだ。もっとも、各家庭には各家庭の事情があり、経済的合理性のみでうんぬんできないこともあるだろう。

 青色事業専従者の条件は、「青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること」「その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること」「その年を通じて6カ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること」だ。

 この場合「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署長に提出しなければならない。届出書には、青色事業専従者の氏名、職務の内容、給与の金額、支給期などを記載することになっている。青色事業専従者給与は、届出書に記載されている方法により、記載されている金額の範囲内で支払われなければならないという制限がある。

配偶者か従業員か

 ただし、家族を従業員にして一定以上の給与を支払うと、扶養者控除の対象外になってしまう。そこが考えどころだ。

 現在、配偶者には配偶者控除(38万円)と配偶者特別控除(最大38万円)がある。配偶者控除を取るためには、青色専従者給与を年間103万円以下にしなければならない。この場合、配偶者の所得税はゼロであり、事業主の必要経費は103万円である。事業主の節税効果は、所得の多寡による税率の違いもあるが、103万円に税率を乗じた額となる。

 配偶者に青色専従者給与を払えば払うほど、配偶者には所得税が課せられるが、事業主の必要経費になる額が増え、事業主の所得税が減少する。どちらの効果が大きいのか、シミュレーションが必要だろう。

 なお、青色申告ではない場合、配偶者に青色専従者給与を使うことはできないが、事業専従者控除というものがある。配偶者は86万円、配偶者以外は50万円の控除が受けられる。これは配偶者控除よりも大きい額である。

 一般的に、一定以上の収入があれば、配偶者などを青色専従者や事業専従者にした方がよい場合が多い。ただ、青色専従者や事業専従者にした場合には、事業に専従していることを立証できるようにしておきたい。なお、業務の内容につり合わないほど高額な給与にすると、不当に事業主の税額を減少させたとして税務署とのトラブルが生じることがあるので、注意する必要がある。

 (2)は文句なく、青色申告者が享受できるメリットである。記帳が義務付けられることの手間代と考えればいい。65万円は相当な所得控除で、毎年定額給付金をもらうようなものである。

 (3)はちょっと分かりにくいが、ある年、売り上げより経費が多かった(要するに赤字だった)場合、その損失を翌年(最大3年)に繰り越すことができるという制度だ。例えば2007年分の確定申告で300万円の赤字であれば、2008年分(今回)の確定申告をする際、2008年分の所得から2007年分の損失300万円を差し引くことができる。

 事業の開始初年度などは、事務所の賃貸契約や設備投資などで赤字になる場合も少なくないだろう。白色申告者はその赤字を翌年に繰り越せないが、青色申告者であればそれができるのだ。

 このほか、少額取得資産(30万円以下)の合計300万円分までは減価償却ではなく全額経費として一括償却できることや、青色申告事業主で前年所得税を納めていて、今年純損失が生じた場合は前年の納税額と相殺して税金の還付ができることなどもある。もともと中小事業主向けに作られた制度なので、継続的にフリーエンジニアとして働く場合、青色申告のメリットは少なくない。

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