連載
» 2009年02月19日 00時00分 公開

味わい深いシステムを開発するための業界知識(6):詳細データから消費トレンドを読むアパレルのシステム (1/3)

ITエンジニアの日々の業務は、一見業界によって特異性がないようだ。だが、実際は顧客先の業界のITデマンドや動向などが、システム開発のヒントとなることもある。本連載では、各業界で活躍するITコンサルタントが、毎回リレー形式で「システム開発をするうえで知っておいて損はない業務知識」を解説する。ITエンジニアは、ITをとおして各業界を盛り上げている一員だ。これから新たな顧客先の業界で業務を遂行するITエンジニアの皆さんに、システム開発と業界知識との関連について理解していただきたい。

[萩原光洋,アクセンチュア]

 さまざまな業界を担当しているアクセンチュアのITコンサルタントが、ITエンジニアのための業界知識として、リレー連載をお届けしています。第6回はアパレル業界がテーマです。はじめに業界全体の構造を眺めたうえで、特に消費者との接点となるアパレル小売業の業務とITのかかわり方、システムの特徴について触れたいと思います。

アパレル業界の構造

 アパレル業界を生産・流通の流れに沿って見ていくと、川上には繊維素材・糸のメーカー、また繊維素材・糸を原材料とする生地・織物のテキスタイルメーカーが位置しています。これらのメーカーから購入した原材料を衣料品に仕上げ、流通させるのが川中のアパレルメーカーや縫製メーカー、ニットウェアメーカーです。川下には百貨店、量販店、衣料品専門店などの小売業が位置します。

 アパレル業界の中核を担ってきたのは、ワールド、オンワード樫山、レナウン、山陽商会など川中に位置する大手アパレルメーカーです。強力なナショナル・ブランドを持つ総合アパレルメーカーは、特に1980年代後半までは、百貨店を主販路として売り上げを伸ばしてきました。

 その背景にあったのが返品制や派遣販売員などの制度で、百貨店側はリスクを負わずに商売ができ、メーカー側は自社のブランドを拡大・浸透させることができるというメリットがありました。しかし、こうした取引形態は、百貨店側が顧客と対話し、自主的に商品を仕入・販売する力を弱めることにつながりました。その結果、1990年代以降の景気の低迷、消費の多様化に直面した際に、消費者ニーズに応えることが難しくなってしまったのです。こうした流れを受け、百貨店とアパレルメーカーは従来の取引慣行を見直し、両者が自主的に販売計画や生産供給計画を作る「コラボレーション取引」や、百貨店側が売れ残った商品を返品できない「完全買い取り商品の拡大」に取り組むようになりました。

 その一方で売り上げを伸ばしてきたのが、先ごろも業績好調が報じられたユニクロに代表されるSPAと呼ばれる業態です。SPAは、Specialty store retailer of Private label Apparelの略で、製造型小売業とも呼ばれています。小売業でありながらアパレルメーカーの機能を持ち、自社が企画・デザインしたプライベート・ブランドのみを販売するというビジネスモデルです。小売業側は、商品在庫に関するリスクを製造段階から負うことになりますが、一方で店頭での消費動向を商品企画や商品供給に反映できますし、流通経路が短縮されることで安い価格で商品を提供することができるというメリットがあります。

 SPAのビジネスモデルは小売り発ですが、逆にアパレルメーカー側が自社ブランドの店舗を展開するメーカー型・卸型SPAもあり、川中、川下の明確な区別は薄れてきているといえるでしょう。

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