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» 2009年02月19日 00時00分 公開

味わい深いシステムを開発するための業界知識(6):詳細データから消費トレンドを読むアパレルのシステム (2/3)

[萩原光洋,アクセンチュア]

アパレル小売業の業務とシステム

 上で見てきたような百貨店とメーカーの取り組み、SPAの強みの中心にあるのは、マーチャンダイジングと呼ばれる活動です。ここではアパレル小売業を中心に、マーチャンダイジング業務とそれをサポートするシステムを見ていきたいと思います。

 マーチャンダイジングの目的は、“5適(five rights)の実現”といわれています。

  1. 適品(Right Merchandise):ターゲットとする顧客に対して、適切な商品を提供することです。そもそもどんなカテゴリの商品をそろえるのかに始まり、ブランド、スタイル、素材、色・柄、サイズなど、膨大な点数の商品の中から適切な品ぞろえを決めていきます。
  2. 適所(Right Place):ターゲットとする顧客のニーズに合わせて、適切な場所で商品を提供することです。店舗なのかインターネットなのかカタログなのか、店舗であればどの店舗なのか、さらに店舗の中のどのフロアでどの棚のどの位置に商品を陳列するのかまで、細かく考えていく必要があります。
  3. 適価(Right Price):顧客にとって適切な価格で商品を提供することです。商品に対する顧客の価値に見合った価格なのか、粗利を十分に確保できる価格設定か、あるいは多少粗利は低くても数を多く売ることを目指すか、競合店の売価と比較して適切かなど、さまざまな要素を考慮して価格を決めます。
  4. 適量(Right Quantity):顧客に対して商品を販売するためには、適切な在庫を店舗・倉庫などに確保しておく必要があります。顧客の需要に合わせて店頭に商品が並ぶように、メーカーへの発注や倉庫からの在庫移動、店舗間での在庫移動などを通じて、在庫量をコントロールします。
  5. 適時(Right Time):顧客のニーズに合わせたタイミングで、商品を提供できるようにします。アパレルは特にシーズン性の高い商品ですから時間軸で考えることは重要です。シーズン初めの立ち上がりからシーズン末のクリアランスまでの商品のライフサイクルや、成人式、卒業、入学、父の日、母の日などのイベントの考慮が必要です。

 これらの計画を立て、実行し、その結果を検証し、また計画につなげるといったPDCAサイクルを回すこと、これがマーチャンダイジング業務のサイクルであり、これをサポートするのが「マーチャンダイジング・システム」(MDシステム)と呼ばれるシステム群です。

商品管理システム

 MDシステムの中心に位置するのが「商品管理システム」と呼ばれるシステムです。狭義には、MDシステムとは、この商品管理システムを指します。

 商品管理システムは、MDサイクルにおける実行を主にサポートします。商品マスタや店舗マスタなどのマスタ管理をはじめ、取引先への発注、原価・売価の登録・変更、拠点間の商品の移動指示など、小売業の本部サイドにおけるあらゆる業務実行を支援します。また、倉庫システムや店舗のPOSシステムなど、各拠点から上がってくる大量のデータを処理し、各種集計処理や、在庫計算・原価計算を行い、後続のデータウェアハウスや会計システムにつなげる役割を担っています。

データウェアハウス

 データウェアハウスも、商品管理システムから受け渡された大量の情報を蓄え、実績の検証・分析を行うための重要なMDシステムの一部です。特に小売業において特徴的なのは、POSシステムから収集されるレシートデータです。レシートデータは、個々の顧客が購買時点においてどのような商品を買ったのか、明細情報を保持しています。ポイントカードなどの顧客情報と組み合わせることで、自社でどの顧客がどのような購買行動を取っているのかを分析することが可能になります。

MD計画システム

 計画段階における計画の立案・合意と、実行段階における計画予実のモニター・計画の見直しをサポートするのが、「MD計画システム」です。

 アパレルの場合、シーズンが始まる半年も前に商品を決め、メーカー・卸と商談を行います。このとき初期のMD計画が作成されますが、半年後実際にシーズンが始まってみると、計画よりも売れないという事態が発生することがあり得ます。アパレル商品は、流行に左右されるため次の年に持ち越すのが困難であり、シーズン中に売れないと大量の不良在庫を抱えることになってしまいます。そこで、シーズン中の実績を週次でモニターし、売価の見直しや、売れている店・売れていない店の間の在庫配分の見直しなど、売り切るためのコントロールを行います。

 従来これらの計画業務は、Excelを使用して実行している企業が多かったのですが、個人のスキルに依存した計画業務から脱却し、全社での計画の連動・整合を実現するために、専用のMD計画システムの導入が増えてきています。さらに膨大なデータから最適な計画値を求める「最適化システム」や、小売りとメーカー・卸間のWebを使った計画コラボレーションのシステムも導入が進んでいます。

小売業システムの特徴

 上記のような(小売業の)システムに共通しているのは、大量のデータを効率的に扱えるということです。数十万から数百万までに及ぶ商品SKU数、数百に及ぶ店舗数に対して、日々刻々と実績データが計上されるので、そのデータボリュームは膨大なものになります。システムの処理性能の考慮だけでなく、大量のデータから問題点を見つけるアラート機能、商品や店舗を同じ特性で束ねて一括で指示を出す機能など、効率よく業務を行うが全般的に要求されます。

 昨今のMDシステムは、大量データの扱いや変化への迅速な対応など、システムに求められる機能がますます高度化してきているため、従来のようにカスタムメイドで一から設計するのは難しくなってきています。そこで、パッケージソフトウェアの導入という選択肢があるわけですが、ERPの導入と同様に、大胆に業務を見直す覚悟と経営トップのコミットメントが必須です。

 そのうえで、本当に実際の業務運用に堪え得るものなのか、現場の業務を検証することが必要になります(小売りの場合、ただでさえ商品・店舗の数が多いため、あまりにも作業効率が悪いと、業務が回らなくなるというリスクがあります。場合によっては、無理にパッケージですべてをカバーしようとしないという割り切りも必要だと思います)。

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