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» 2009年03月04日 00時00分 公開

[Analysis]:コスト削減策としてのサーバ仮想化の成否の境目

[三木泉,@IT]

 インターネットが流行し始めた当時、ある人が店舗で「インターネットください」と言ったというジョークがあった。いまの企業では、サーバ仮想化がコスト削減に直結すると聞いた偉い人々が、「サーバ仮想化やれ」といい始めているかもしれない。しかし、サーバ仮想化をやればコスト削減になるという簡単なものでもない。ここでは、コスト削減時代においてサーバ仮想化の成否を左右する要因を考えてみたい。

 サーバ仮想化は、短期的にはコストが上昇する可能性が高い。実装形態により、ハードウェアおよびソフトウェアのコストは大きく異なるが、メンテナンス性や可用性の向上などのサーバ仮想化のメリットを生かした形で大規模に展開する場合は、堅牢性とパフォーマンスに優れたネットワークストレージが前提となり、これがコストを大きく引き上げる。

 サーバ機の内蔵ハードディスクドライブを活用し、無償のサーバ仮想化ソフトウェアを用いる手ももちろんある。直接的なコスト削減という点ではこれが最も分かりやすい効果を生む。ただし運用面で人がカバーしなければならないことは大幅に増える。最大の問題は、実際の運用を通じて各アプリケーション(仮想マシン)の負荷をモニタし、これに基づいて物理サーバと仮想マシンの組み合わせを最適化するという作業ができなくなることだ。仮想マシンの稼働をいったん停止し、仮想マシンを別のサーバ機にコピーすることはできる。しかしアプリケーションの一時的な停止が必要になるし、その後の運用でさらに組み合わせを変えたくなった場合には、また停止してコピーしなければならなくなる。

 これに対し、共有ストレージを活用し、さらに例えばVMware Infrastructure 3で提供されている「Distributed Resource Scheduler」(DRS)という機能を利用すれば、実際のアプリケーション負荷に応じて、仮想マシンが適切なサーバ機に自動的に再配置され、サーバ機の利用効率を常時最適な状態に保つことができる。これがサーバ機の大幅な利用効率化につながる。

 つまり、コスト削減を契機としたサーバ仮想化の成否を左右する重要な要因の1つは、コスト削減を、直接的なハードウェアやソフトウェアのコストだけで考えず、長期的視野に立ってより包括的に考えることだ。

 一方で、仮想サーバすべてに同じサービスレベルを設定する必要はない。重要度に応じて利用技術にメリハリをつけることも十分検討に値する。

 積極的なコスト削減の余地は、統合による機器調達での規模の利益や無駄の排除、そしてここでは「しがらみコスト」と呼ぶ各種の無駄なサービス関連コストの排除にある。

 サーバ仮想化は小さく導入することもできるが、より大規模に展開したほうがいい理由はここにある。業務部門も含めて、大部分のサーバの調達をIT部門にまかせるようなやり方をすれば、規模の経済を生かせる。業務部門はサーバリソースをIT部門から仮想サーバとして調達する形態だ。仮想サーバなら物理的なサーバと違って必要な際にすぐにサーバリソースを利用できるため、業務部門にとってもメリットは大きい。社内におけるサーバの調達窓口を一本化すれば、取得コストの減少を目指すことが可能だ。ソフトウェアのライセンスについても同様のことがいえる。

 さらに大きなコスト削減の可能性は、これまで半自動的に行われてきたサーバ機の買い換えに伴うアプリケーションのバージョンアップや載せ替え費用、業者によるメンテナンスに掛かる費用だ。アプリケーション運用は従来通りまかせるとしても、ITインフラ部分は自社で面倒を見る方向に持っていくことができる。仮想化上でのアプリケーションサポートを嫌がるような業者は、近い将来時代遅れの存在になり下がるだろう。

 サーバ仮想化によるコスト削減は、それほどストレートにはできない。さまざまな変数を考慮して最適解を見つけるしかない。最大のポイントは、サーバ仮想化をやりさえすればいいというのではなく、ツールとして使ってIT運用にかかわるそのほかの部分の効率化をどのように図っていくかということにある。コスト削減のためのサーバ仮想化の成否は、サーバ仮想化自体よりも、サーバ仮想化を使ってそのほかの無駄にどれだけ切り込めるかにかかっている。

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